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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
続・青い星の拠点

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第78話 希望と絶望




宇宙歴4262年8月16日、辺りはすっかり夜の暗闇に支配されていた。

僕たちは奴隷オークションが終わってすぐに、港町を出たためこんな夜遅くの移動となってしまったわけだ。


馬車は何ごともなく進んでいる。

こんなにすぐに町を出て、夜中の移動をするとは思ってもみなかったんだろうな。

襲撃者もなく、平和そのものだ。


馬車の中も、疲れたものは座ったまま眠りについていた。

が、僕の目の前の勇者さんはジッと僕をまだ見ていた。


「えっと、僕に何か?」

「……いろいろ質問したいんだけど、いいかしら?ご主人様」

「は、はい、どうぞ……」


ものすごく威圧してくるんだな、この勇者様は。

……しかし、この両肩に何か重りが乗った感じが威圧っていうスキルなのかな?



「まず、私たちをどこへ連れて行くつもり?」

「えっと、皆さんはこれから浜辺へ向かいます。

そこから船で、僕が町を作っている島へ行き、その島で暮らしてもらいます」


「……その後は?」

「その島で奴隷解放しますので、後はご自由に」

「!それじゃ、他の場所へ逃げるじゃない」


「ええ、他の場所へ行きたいなら行っても構いませんよ」


あんな高いお金で購入した奴隷を解放するなんて、信じられないって顔してる。

でも、あそこは島だから船か飛ばないと逃げようがないんだよね……。


「……まあいいわ、次の質問よ。

船で島に行くって言ったけど、どうしてさっきの町の港を利用しなかったの?」

「それは簡単です、僕の船が大きすぎるからです」


「大きすぎる?」

「はい、もともと奴隷は大量に購入する予定でしたから用意したは船は大型の物なんです。

だから、港に入らなかったのでこれから浜辺へ向かうわけです」


「……そこで船に乗ると?」

「はい、他にご質問はありませんか?」

「……今のところないわ」


勇者さんはどこか納得できない顔をしているけど、僕の船を見れば納得するだろうな~。



「……私も、質問いいかしら?」


今度は、旧帝国のお姉さんからの質問か。


「はい、かまいませんよ」

「それなら、妹の、シャロットの傷を癒すことはできないかしら。

もし癒せるなら、私は奴隷のままで君に生涯尽くすことを誓うわ」


僕は、ジャスミンさんの隣で寄りかかるように寝ているシャロットさんを見る。

シャロットさんを治すか……コロニー『楽園』にある医療施設で再生医療を受ければ大丈夫だと思うけど、一応ソフィアにも聞いておこう。



「ソフィア、シャロットの怪我とか治療することができる?」


ソフィアはセレニティーとの話を中断して、僕を見るとシャロットを見る。


「う~ん、難しいじゃろうな。治癒魔法は傷などを治してくれるが、火傷などは治せんからのう」

「そうそう、火傷などの治療は腕がなくなった時に元通りに生やせって言っているようなものだからね~」


なるほどね、治癒魔法もそこまで便利にできていないってことか……。


「その火傷を治すのなら、薬に頼るのが早かろう。エリクサーならすぐに元通りじゃて」

「エリクサーって……」


勇者さんもジャスミンさんも驚いているな。

どうやら、エリクサーはそう簡単に手に入る代物じゃないのか……。



「ん~、それなら衛星軌道上のコロニー『楽園』にある医療施設を使うか。

あれなら再生医療もできるから、元通りにできると思うけど……」

「そんなものがあるのか、レオンよ」


「まあ、身体強化している僕やアンドロイドのロージーたちは再生医療なんて必要ないですからね、星の管理人になった時のことを考えて用意しておいたんですよ」



「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


僕とソフィアの会話を、勇者様が遮ってきた。

どうやら、気づいたようだね?


「衛星軌道上とかコロニーとか、再生医療にアンドロイドですって?!

レオン、だったわよね名前、あなたはいったい何者なのよ……」


セレニティーやジャスミン、そしてグレイスさんもこちらに注目している。

みんな僕が何者なのか、知りたいみたいだ。



「僕の名前は、レオン・オーバス。この星の外からやってきた宇宙人だよ」

「はあ?!」

「それと、前世の日本人の記憶も持っている転生者だ」


「何ですって!!」


この星の外からやってきたってところで、ジャスミンとセレニティーが驚いて、日本人の転生者ってところで勇者さんが驚いてくれた。


グレイスは、驚いているというより分かってないなあの顔は。


『あなた、本当に日本人だったの?!』

『そうですよ、僕は日本人でした』

「!」


勇者さんが、日本語で話して来たので日本語で返したら納得したようだ。

周りはいきなり知らない言語で話したから、少し驚いていたみたいだけど。


「と、とにかく、妹は、シャロットは治るということですよね?」

「必ずと約束できませんが、治ると思いますよ」

「お、お願いします。シャロットを、治してあげてください……」


シャロットを抱き寄せ、ジャスミンさんは涙を流した。

……大切にされているな、シャロットさん。



「ねえ、聞きたいんだけど、今が何年か分かる?」

「それは西暦で?」

「うん……」


……ここは、はっきりと言った方がいいよね。

現実を突きつけることになるけど……。


「今は、宇宙歴4262年、西暦からすでに4000年以上たった世界だよ」

「………そ、そう」


勇者さんがすごい落ち込みようだ……。


「……分かってた、分かってたわ。この世界に召喚された時、日本に帰れないって言われたし。魔王を倒した時だって、魔王にこの世界に留まってどうなるって……。

感謝されたかと思ったら裏切られて奴隷落ち……。


私の人生って一体……」


何やら、すごい事情があるようだな……。

今はそっとしておこう。








第78話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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