第76話 オークション最終日 終了
『金貨4100枚!4100枚!4100枚!
皆様今回の奴隷には随分と粘られます!さあ、金貨4200枚!4200枚!4200枚!
……大台の金貨5000枚!5000枚ないか?5000枚他にありませんか?ありません!
エントリーナンバー36、ナオミ・サカミヤ、17歳は『222』の番号札の方が金貨5000枚で落札です!』
「せ、競り勝った……」
「ご主人様!やりました!すごいです!」
「……それにしても、いやに粘られたね~」
そのために大台の金貨5000枚!前世の通貨で5億円!
オークションって怖いわ。
『さあ、会場の紳士淑女の皆様、今回の奴隷オークション最後の出品です!
エントリーナンバー37、グレイス、20歳。
皆様は浮遊島というのをご存知でしょうか?
ブリーナオ大陸の中央にあるローセン大渓谷。ここに浮遊島がいくつも浮いているそうです。しかも、その浮遊島は大渓谷から離れても浮かんだままで彷徨うとか。
そんな偶然にも、彷徨っていた浮遊島にある種族が住んでいました。
それが、このグレイスをはじめとした『天使族』と呼ばれた種族です!
特徴は、人族と変わらない容姿で、背中に小さな白い翼をもつのが特徴です。
これぞまさに教会に伝えられた天使そのもの。
天使は、幸運を運ぶといわれます。
この奴隷オークションの最後に、幸運をつかみとってみてはどうでしょうか?
金貨1000枚からのスタートです!』
「な、なんと!あ奴らは……」
「ソフィア?あの奴隷がどうかしたの?」
「レオン殿、あの奴隷、他の者たちに渡してはならんぞ!」
ここまで焦るソフィアは見たことないな、これは何かあるんだろう。
最後だというし、残りのお金をかけて競り落としてみるか……。
『さあ、金額はどんどん競りあがっています!
金貨4700枚!4700枚!4700枚!金貨4800枚!4800枚!4800枚!
これは、終わりが見えるのか!金貨4900枚!4900枚!4900枚!
金貨5000枚!5000枚!『金貨6000枚だ!!』金貨6000枚が出ました!
金貨6000枚!いませんか?いませんね?
いました!『222』の番号札の方が金貨6000枚に札を上げました!』
危なかった、札を上げ損なうところだった。
いきなり6000枚を出してくるんだもんな~
「ふざけるな!二階席の貧乏人のくせに!貴族の私より金を持っているわけがなかろうがっ!」
……一階席から、怒鳴り声が聞こえてきた。
ここは無視して、オークションを続ける。
『えっと会場から怒号が飛び交っておりますが、オークションは続けます!
金貨6100枚!……いませんか?……いませんね?
エントリーナンバー37、グレイス、20歳は『222』の番号札の方が金貨6100枚で落札です!』
オークションの終了とともに、会場中に怒号と拍手が入り混じっていた。
今回のオークションは、僕の一人勝ちのようなものだからな。
面白くない人たちが大半だろう……。
特に、一階席の連中は。
『では皆様、今回の奴隷オークションはこれにて終了です!
次の奴隷オークションで、また生きてお会いいたしましょう!』
ステージ上の司会者は、そう言ってオークションを締めくくると急いで奥に隠れていった。
一階の騒がしさから、逃げたんだろう。
「お客様、商品の受け渡しはいつごろおこないましょうか?」
最後に競り落とした奴隷の引き換え札を渡しに来た職員が、奴隷の引き渡し時期を聞いてきた。
今は一階席が混乱しているから、ここで少し待たせてもらおうか。
「この席で、少し待たせてもらっていいですかね?
一階の混乱が収まったら、引換をお願いします」
「畏まりました、それではまた後でお迎えに参ります……」
こうして、僕たちは今座っている席で少し待たせてもらった。
「それでソフィア、言うとおりに競り落としたけどあれでいいんだよね?」
「うむ、レオン殿には散財させてしもうたが、競り落としてくれて助かった」
「それで、訳を話してもらえるかな?」
「……実はの」
少し困った顔で、ソフィアは話してくれた。
『天使族』という種族の正体と、浮遊島の正体について。
まず、この世界に『天使族』という種族は存在しないそうだ。
天使族は教会が協議を広めるうえで、神の使いとして誕生させた架空の種族。
ならあのグレイスは何者なのかというと、彼女はこの星のもう一つの姿。
つまり、この星が人化した姿だそうだ。
……星に意思がある事にびっくりだが、魔力がある空間ではさほど珍しくないのだそうだ。
何故それを知っているのか?
それは、この魔力の満ちた空間では、神が実在するから。
そして、エンシェントドラゴンは神と会ったことがあるから。だそうだ。
この宇宙を、宇宙船を使って移動したり他の星へ旅する僕たち化学側の世界の人間からすれば、神なんてと鼻で笑われそうだが、実際魔法のある世界が、星が目の前にあって、神を信じないとはいえないよね……。
グレイスは、この星のもう一つの姿として何をしていたのか?
それには、浮遊島と呼ばれる島が関係してくる。
実は、浮遊島とはこの星の魔力が硬質化したものだ。
つまり、世界に循環するはずの魔力が、一か所に集まって石のように固まってしまったもの。
それが、浮遊島の正体なのだ。
島のように土や植物が付着したのは、グレイスが魔法で硬質化した表面だけを変えたため。
あの中は、魔力が固まったままなのだとか。
大渓谷から魔力が噴き出し、何らかの影響で一部の魔力が硬質化。
それが集まってさらに固まり、島ぐらいの大きさになった時、偽装を施している。
実をいえば、グレイスの仕事はその魔力が石のように硬質化したものを砕いて、世界に循環させているのだ。
だが、それでも間に合わずに島ぐらいの大きさまでなってしまうことがある。
そんな時に偽造をして、浮遊島にしているのだ。
もちろん、その浮遊島もグレイスがだんだんと砕いていたのだが、運が悪かったのか砕いている最中の浮遊島が人族の町まで流れてしまった。
後は、その容姿の珍しさなどから奴隷にされてしまったのだろう。
「曲りなりにも、この星を奴隷にするとは………業が深すぎる気がするのう……」
「僕はある意味、感心したよ……」
第76話を読んでくれてありがとうございます。
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