第73話 オークション2日目 終了、そして…
『エントリーナンバー42、マデリーン・アンバー、17歳は、金貨2700枚で『222』の番号札の方が落札です!』
結局、僕が落札ということになってしまった。
大きな出費となったし、明日のオークションのお金が足りなくなった。
『では、皆様!これにてオークション2日目は終了です。
明日は、男奴隷と女奴隷だけの紹介となります!
奴隷商人たちが、このオークションに出品するためだけに仕入れた奴隷もいるでしょう!
ぜひ、参加していただき競り勝ってもらいたい!
それでは、また明日、お会いいたしましょう!』
これで、オークション2日目が終わった。
現時刻、夜の8時。
お店が開いているかは分からないが、とりあえず尋ねてみることにした。
「アル、商業ギルドの向かいにあるお店に寄って行こう」
『そうじゃの、資金も足らんようになったみたいじゃしの』
「奴隷の借金まで支払うことになったからね……」
僕たちは、席から腰を上げ出口へ向かう。
そして、会場を後にすると真っすぐ商業ギルドを目指していた。
そして、何ごともなくあると雑談をしながら商業ギルドに到着する。
商業ギルドは、この時間でも開いていて中で商談をしている人がいるのか声が聞こえた。
でも、僕たちの目的地はこの向かいにある商店『エスピール』だ。
「アル、エスピールはまだ明かりが点いているね」
『開いてるんじゃろうかのう……』
店に近づき、ドアを引くと開いた。
そして、店の中から店員の声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ~」
「良かった、アル、開いていたよ」
『ほれ、早く中に入って換金せねば』
「うん」
僕たちが中に入ると、あの男の店員と女性店員のお姉さんがいる。
そして、僕たちを確認すると笑顔で改めて挨拶してくれた。
「再びの来店、ありがとうございます」
「いらっしゃいませ~」
僕はすぐに、男性店員のいるカウンターに行き布の袋を取り出し買取をお願いする。
「あの、これの買取をお願いします」
「はい、では時間がかかると思いますので椅子に座ってお待ちください」
「はい」
どうやら、この時間でも買取は大丈夫のようだ。
僕とアルは、前来た時と同じように椅子に座り待機する。
そこへ、女性店員のお姉さんがお茶を出してくれた。
▽ ▽
「はあ、まいったな……」
「グレイソン隊長、部屋の前で何を……?」
「……中でアーブ様が暴れられているのだ」
「今日のオークションのことで、ですか……」
今日の奴隷オークション2日目も散々だったようだ。
初日、私の主であるアーブ様の狙っていたローズという女奴隷を手に入れることが出来ずあれだけ悔しがられておられたからな……。
『222』の番号札のものが、ほとんどの奴隷を購入しているようだ。
いったい何者なのか、見当もつかん。
それに、席の問題もあるからのう。
私たちが座っていた席は、一階の貴族や王族が座る席。
ここは、他の一般席と違い横幅がかなりゆったりと余裕をもたせてある。
だが、その『222』の者がいるのは二階席らしい。
一階席の私たちからは見えないようになっているのだ。
これは、一般の平民が貴族や王族と揉めないため。
オークション会場は、身分の違いは関係なしとルールでそうなっているが、オークション会場以外はそうではない。
「アーブ様、かなり荒れているんですか?」
「ああ、今回持参した資金が少なすぎたことと競り負けたこととかな……」
扉からまだアーブ様の怒鳴り声が聞こえてくる。
よほど、腹に据えかねていたのだろう。
だが、条件は全員同じなのだ。
ただ、用意した資金が少なかっただけのこと。
今回のオークション用に用意した資金は、金貨1万枚。
だが、オークションが三日間行われることや狙った奴隷にいくらつぎ込めるかを考え、アーブ様は競り負けていた。
「だが、明日は『222』にとっては不利となるだろうな」
「どうしてですか?隊長」
「明日はオークション最終日、しかも『222』はこの二日間大金を使っている。
いくら支払いが最終日終了後だとしても、外すことのできないことがあるのだ」
「外すことのできないこと……?」
「支払い金の確認だよ」
「あ!オークション三日目の入場前にあるあれですか!」
この奴隷オークションでは、しばしば奴隷の大量買いが発生するらしい。
そのため、三日目のオークション開始前に二日目までに競り落とした奴隷を購入するためのお金を確認するという。
もし、そこで資金が足りなかったりなかったりすれば、奴隷は没収され参加者は牢へ送られることになるそうだ。
私の目算では、ここまで『222』は金貨2万枚は使っているはずだ。
一般の者に、金貨2万枚が用意できるとは思えないが、もし用意できたとしてもここまでだろう。
明日は、アーブ様が最も狙っていた女奴隷が出品される。
ジャスミン・エル・リュコードの妹がな……。
「ケイデン、明日のオークションのために私は休む。
アーブ様も、一通り暴れられたらそのまま就寝するだろう。
警護は任せたぞ?」
「ハッ!お任せください」
私は、宿の部屋の弁償をどうするか頭を悩ませながら自分の部屋に戻っていく。
明日のオークションは、アーブ様が競り勝つはずだ……。
▽ ▽
「お待たせいたしました、すべてこの間の物よりも上等なものでした。
デザインはしょうがないですが、すべて買い取りで金貨5万枚でよろしいですか?」
「はい、それでお願いします」
「白銀貨や白金貨への換金もしていますが、よろしいので?」
「はい、インパクトが重要なので」
「そうですか……」
どこか納得いかない男性店員だが、金貨の入った袋を10個に分けて渡してくれた。
気が利いているし、お客様のことを思っての行動だろう。
このお店で、間違ってなかったな。
僕はそれを亜空間倉庫に入れて、店を後にする。
さて、資金は用意できた、明日のオークションも頑張りますか……。
第73話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




