第66話 お金を用意する
宇宙歴4262年8月14日、僕とアルは宇宙船『ガラハット』に乗り、拠点の町から北の方角にある港町『カルロー』に到着した。
いつも通り、町から少し離れた場所に着陸を考えていたが、海岸線の浜辺の一部がちょうど町から見えない角度になっていたのでそこを利用させてもらった。
港町『カルロー』に問題なく入ると、すぐに換金のため今回はアクセサリーを扱っている商会の店に入っていった。
アクセサリーを扱う店『エスピール』が、町の人からの評判がいいみたいで今回はそこで換金をすることに。
エスピールというお店は、商業ギルドの向かいに構えていたので分かりやすかった。
「いらっしゃいませ~」
店の入り口のドアを開けてアルと一緒に中に入ると、すぐに店員の声が聞こえる。
店員の教育はしっかりしているようだ。
「あの、アクセサリーの買取をお願いしたいんですが?」
「畏まりました。では、こちらのカウンターにお願いします」
入り口側で、女性の店員がいたので声をかけるとすぐに対応してくれる。
僕が声をかけたのにもかかわらず、ちゃんと対応してくれたのは好感が持てるな。
カウンターに行くと、そこには男性の店員が待っていた。
「買取をご希望とのことでしたので、買い取ってほしいものをお出しください。
この場で、私が鑑定と査定を行います」
「では、お願いします……」
僕が取り出した袋には、どっさりと指輪やネックレスなどの宝石がはめ込まれたアクセサリーが入っている。
それを確認した男性店員は、少し考えてから対応してくれた。
「……お客様、この量ですと時間がかかりますので後ろの椅子にお掛けになってお待ちください」
「分かりました、よろしくお願いします」
僕とアルは、袋を店員に渡して少し離れたところにある椅子に座って待つことに。
すると、そこに飲み物を持って先ほどの女性店員が訪ねてくる。
「いらっしゃいませ、こちらは当店のサービスとなります」
「ありがとうございます」
『おお、すまんのう……』
女性店員は、僕とアルの前に紅茶を並べてくれた。
僕とアルは、紅茶を一口飲む。
……うん、これ結構いい茶葉を使っているな。
「あの、失礼ですが、あんなにアクセサリーを売却してどうするんですか?」
「奴隷を買うんだよ、僕の村、人手が足りなくなってきたんでね」
「それじゃあ、あのアクセサリーは村の財産なんですか?」
『いやいや、あれは村の近くに盗賊が現れての?それを撃退してアジトに行ったときに隠し持っていたのもなのじゃ。
盗賊のお宝は原則盗賊を討伐した者のものじゃから、儂らで有効利用しようってことなんじゃよ』
「へぇ~、お二人の村には強い人がいらっしゃるんですね~」
僕とアルは顔を見合わせて、お姉さんの方を見る。
「すごい人がいるんですよ」
「それは、羨ましいな~」
カウンターで対応してくれた男性店員が、チラチラとこちらを見ている。
この女性店員と僕たちの会話から、袋いっぱいのアクセサリーの出所を知ろうとしたんだろうな……。
僕たちの会話を聞いて、今は表情が少し和らいでいるから信じたんだろう。
……汚れた指輪や腕輪を入れておいてよかったかも。
「奴隷の購入を考えているなら、午後からのオークションに参加するの?」
「オークション?奴隷オークションがあるの?」
「そうだよ、今日から3日間はオークションだから、奴隷商も閉まっているはずだよ?」
奴隷商もオークションで手いっぱいというわけか?
それなら、僕たちも奴隷オークションに参加決定だな!
「お姉さん、奴隷オークションに参加するにはどうすればいいの?」
「それは簡単、この店の向かいにある商業ギルドで申し込めばいいんだよ。
オークションが開催されてからも、参加受付をしているから大丈夫だよ」
ほっ、よかった~。
参加申し込みが出来なかったら、他の場所に行かないといけないところだった……。
それから30分ほど、お姉さんと雑談をしていると男性店員が近づいてきて査定が終わったことを知らされた。
さて、今回のアクセサリーは、いくらぐらいになったかな……。
「お待たせしました。今回お客様が持ち込まれたアクセサリーを鑑定しましたところ、素晴らしいものがかなりありました。
ただデザインが古いものやダメなものもありましたので、そこら辺を査定して金額を出しました。
全部で金貨3万枚とさせていただきたいと思います。
いかかでしょうか?」
う~ん、金貨3万枚。前回が確か1万いかなかったから約3倍以上ってことか?
前回のアクセサリーの2倍出して、収入は前回の3倍。
それじゃあ、宇宙海賊から回収したお宝すべてを売るととんでもない金額になりそうだな……。
「そ、それでお願いします」
「ありがとうございます。ではこちらの二枚の書類にサインをお願いします」
「すごいね~、子供が持っていい枚数じゃないよ~?」
「でも、午後からのオークションで消えていくから」
「貯めておこうとかは、思わないの?」
「ん~、思わない。だってこのお金は村のみんなのお金だからね」
それを聞いたお姉さんと男性店員は、嬉しそうに表情を緩めてくれた。
多分、このお金がどういうものなのか分かっているか試したんだろうな……。
店員さんの出した書類にサインをし、お金の金貨3万枚を受け取る。
「ご利用ありがとうございました」
「また来てね?」
そう言って僕とアルを送り出してくれた。
さて、向かいの商業ギルドで、オークション参加を申し込まないとな……。
第66話を読んでくれてありがとうございます。
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