第62話 戻ってきた二人
天空要塞が墜落したとの報告は、僕に衝撃をもたらした。
すぐに、生存者の確認とどこの国が天空要塞を墜落させたのかすぐに調べさせた。
また、家族と再会したばかりのルルとロロに報告するか悩んだが、事態を調べてから報告することにした。
アリシア様をはじめ、天空要塞にいた人たちや浮遊島に住み着いていた人たちがどうなったか今わかっていることだけでも教えると、ルルとロロはすぐに飛び出していきそうだったからだ。
三日という時間を使い調べ上げた結果、天空要塞を墜落させたのはニーグホルンという国とケブリードという国が共同で開発した光収縮魔道具による攻撃と分かった。
これは天空要塞から持ち出された技術の一つで、太陽の光を収束させてレーザーのようにし、敵を攻撃するものだ。
ルルとロロが原形を考え、アリシア様に仕える研究チームが完成させた光魔道具。
天空要塞の主力魔道兵器であり、戦争を終結させた兵器でもある。
この技術が外に持ち出されただけでなく、研究され自分たちの天空要塞を落とす力に利用されるとは……。
そしてもう一つの天空要塞を始め浮遊島にいた人たちの安否だが、全員無事、とはいかなくて死者はかなりの数に上った。
だが、これが全滅にならなかったのは墜落した場所が海だったからだろう。
もし、陸地のどこかに落ちた場合、すぐに追撃部隊を送り込まれ天空要塞にあった技術をすべて奪われた挙句、殲滅させられていた可能性があった。
こうして事態をまとめられ、ようやくルルとロロに報告された。
2人とも、初めは報告しなかったことを怒っていたが、すぐに救助のために向かうことを決意。
宇宙船『クロウティア』を亜空間ドックから出し、宇宙港につなげると僕に感謝してくれた。
新しくなったクロウティアは、真っ白な船体を見せていた。
流線形の船体が美しく、砲塔などの兵器類は見せないようにしておいた。
また、アンドロイドなどを連れていないルルとロロに合わせて、二人で何とかなる操縦室にしているし、今回の救出任務のための収容部屋をいくつも造っておいた。
まさに、今までのクロウティアとは全くの別物となっている。
ルルとロロは、物資を宇宙船に積み込むと家族と別れすぐに出発。
緑の惑星に向かって行った。
「あの、再開に水を差す形になってすみません……」
「いいんですよレオン君、昔と変わらない娘を見ることが出来ましたから」
「そうですね、うちの娘も同じような性格ですからね……」
どうやら、家族の方たちはこうなることが分かっていたようだ。
800年以上行方不明だったのにもかかわらず、今も昔も自分の娘を信じていられるなんて……。
その後、ルルとロロのご家族の方たちは連絡先を教えてもらい帰って行った。
これからは、長い時間待たなくても会えるだろうから、と言って笑顔で帰っていったよ。
寿命が伸びに伸びた人類にとって、すでに1年以内は待ち時間に入ってしまうのかな?
僕は、前世の記憶があるから年単位の待ち時間は勘弁してほしいね。
▽ ▽
落ちた浮遊島。
上空から海面に落ちた際、衝撃で浮遊島は3つに分かれてしまった。
また、攻撃を受けた際にも浮遊魔道具のいくつかが消費つ、そのため島を浮かべることができないくなっている。
このままでは、海に落ちたこの島は波にのまれて沈んでしまう。
何とか生き残っている島の人達だけでも助けないと……。
アリシア様は焦っていた。
いつものように女神増に祈りをささげ、玉座に鎮座し政務に励む。
大臣たちからの報告を聞き、一言二言自分の意見を言って政に反映させる。
そんないつもの風景に、一発の衝撃ですべてが変わった。
無敵と言われた天空要塞が、下から攻撃を受けたのだ。
どこの国からの攻撃か調べているうちに、二発目、三発目と攻撃を受け浮遊島が傾いた。
浮遊島全体がパニックになる中、浮遊島が墜落。
海に叩きつけられ、島が3つに分かれてしまう。
これまでのことを思い出しながら、アリシア様は拳を強く握りしめた。
この突然の攻撃に、騎士団が暴走。
島の人たちの救助をしないで、報復のため出兵。
無事だった騎士や兵士など合わせて4万が、島から出て行った。
『すでに我らへの攻撃は始まっている!このままでは攻め込まれこの天空要塞の秘密をすべて盗まれて皆殺しですぞ!』
騎士団長の言葉が、アリシア様の胸に突き刺さる。
この浮遊島を落としてしまうほどの攻撃だ、地上の人たちがこの数ヶ月で開発できるはずがない。
となれば、この天空要塞から持ち出されたものということになる。
誰が、誰がその技術を持ち出したのか……。
アリシア様は、頭を振るとさっきまでの考えを消す。
今はそのことを考えている時ではない、生き残った浮遊島の人達の救助をどうするかだ。
するとそこへ、うれしい声が聞こえてきた。
「アリシア様!大丈夫ですか?!」
「ルルとロロ、ただいま帰ってきました!」
アリシア様は、玉座の間に入ってきたルルとロロの姿を確認するなりすぐに抱き着いた。
いきなり抱き着かれたルルとロロは驚くばかり。
「ア、アリシア様?」
「いきなり抱き着くなんて、どうされたのですか?」
「いいんです、ルル様とロロ様が帰ってこられたことがうれしいのです……」
ルルとロロはお互いを見ると、少し困った表情になる。
「アリシア様、私たちはもうこの島の住人だと思っています」
「この島で何百年も暮して来たんですから、もう第二の故郷ですよ」
「ありがとう……」
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