表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
緑の星の戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/181

第60話 行方不明者




「アリシア様、その天使の二人とお会いすることはできませんか?」


僕の提案にアリシア様は、目を瞑り玉座に座って考える。

ここでその二人に会っておかないと、後悔するような気がするんだよね。

おそらく、その二人は……。


「分かりました、ここへお呼びいたしましょう」


目を開けてそう僕たちに答えると、扉に視線を移す。

すると、扉の前にはいつのまにか一人のメイドが立っていてアリシア様の視線を感じると、お辞儀をして部屋を退出していった。


……にしても、いつ入ってきたんだろう?



それから10分ほどで、メイドさんが帰って来た。

後ろに二人の女性を連れて。


見た目は二十代の女性二人、一人はショートの髪で眼鏡をかけている。

もう1人は髪を肩まで伸ばしていて、頬から顎にかけての切り傷の後が目立つ。

どちらの服装もこの世界では普通の服で、目立った所は無い。


メイドに連れてこられた二人は、アリシア様の前で止まり跪いた。


「お久しぶりです、アリシア様」

「それで、今日はどのようなことで呼ばれたのですか?それと、この者たちは……」


「ロロ様、ルル様、今日はこの方たちがあなたにお会いしたいと」


そんな会話がされているルルやロロの後ろで、僕たちはロージーに照会させていた。

約800年前に行方不明になった人たちのリストに、ロロとルルがいなかったかというものだ。


どんなに科学や技術が進もうが、分からないことは分からないのだ。


まして、人の行動や偶然の災害など予測がつかないものは、どんなところにいても起こりうるもの。

何があってこうなったと後に理由を聞けば、なるほど!と納得できることもあるが、人の推理力には限界がありすべてを推理して解き明かすことは時間がかかる。


だが、時間がかかればかかるほど人々の記憶は薄れ、事件は過去のものに……。


今ロージーが照会している行方不明者のリストもまた、忘れられた人たちのリストともいえるだろう……。



『ありました!841年前の10月5日、行方不明者リストに載っていますね。

ビーセル星から飛び立った宇宙船クロウティアに、ルルさんとロロさんが乗船していたようです。

その後、目的地のヘルロー星に到着せず家族から捜索願が出されたようですが、50年後に行方不明者リストに入ったようですね』


「50年とは、ずいぶんと探させたのね?」

「お嬢様、家族ならそのくらいは探しますよ。私だってもしお嬢様が……」

「はいはい、それはもういいから」


そこに挨拶などを済ませたアリシア様が、僕たちに声をかけてきた。


「レオン君?いいかしら?お二人を紹介しますよ?」

「あ、すみません。よろしくお願いします」


アリシア様は、可愛い咳ばらいを1つすると二人を紹介してくれた。


「皆様から見て右側の方がルル様、そして、左側の方ロロ様になります。

ルル様、ロロ様、お二方にこの方たちを合わせた方が良いと思いましたのでご足労いただきました」



だが、ルルとロロから返事はない。

2人とも、僕とロージーを見て固まっているのだ。

いや、僕の左手人差し指に嵌めてある指輪とアンドロイドのロージーを見て、といった方がいいか。


僕の人差し指に嵌めてある指輪は、星の管理人の証の指環。

星の管理人制度が出来て1000年ぐらいだから、ルルとロロが知っていてもおかしくはない。

それに、ロージーがアンドロイドと分かるのは僕たちと同じように宇宙に暮らすものなら当たり前だろう。


800年ほど地上で暮らしていても、人とアンドロイドの違いは分かるものだ。




「……あ、あの……」

「……えっと……」


ルルとロロは、視線や指を僕とロージーを交互にさしながら言葉が出ない。

そんな二人を気遣い、僕から話してみることに。


「ご家族の方々は、まだ生きておられます。無事な姿をお知らせしますか?」


その言葉で、ルルとロロの感情は解放されそのまま二人とも泣き崩れた。

それを支えるシャロンやケニー、そしてクレア。


今までの時間や自分たちがしてきたことへの後悔など、いろんなことが彼女たちを強くしていたのにここに来て、もう帰れないと思っていた古郷や家族に会えるうれしさが彼女たちの感情を爆発させたんだろう。


泣きっぱなしの彼女たちを、抱きしめたり側にいて何か喋っていることを聞いてあげたりしているシャロン達。



「レオン君、これは一体?」

「どうやら僕たちは、ルルさんやロロさんと同じ故郷の者だったということですね」

「それで……」


「おそらく、思い出してしまったんでしょう。帰れないと思っていた故郷から来た僕たちを見て帰れるかもしれないと思ったら……」

「涙があふれてしまったんですね……」


僕とアリシア様はそろって、いまだ泣いているルルとロロをそろって見ていた。

よく見ると、アリシア様の目にも涙が見えたような気がするが……。




▽    ▽




結局、その日は顔を合わせただけとなった。

ルルとロロに、シャロンとケニーが側についていろいろと愚痴など800年の堪ったものを聞くそうだ。

また、アリシア様もルルとロロの里帰りを希望していた。


お二人が望むなら、このまま帰られなくともと考えていたようだがルルとロロにそんな考えはなく、また必ず戻ってくると涙ながらに約束していた。



そんな出会いから一週間後、僕たちはルルとロロの宇宙船『クロウティア』に来ていた。








第60話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ