第56話 王都へ向かう
リビングに招き入れた僕たちに、レブトンは単刀直入に質問する。
「あなた方は、何をするために来られたのですか?」
「単刀直入ですね」
「回りくどいやり方は、皆様には通用しない気がしましたのでね」
これはどう答えたらいいのかな?と、僕がみんなを見るとロージーが頷いた。
これは素直に話して問題ない、ということだろう。
「僕たちは、この世界の調査に参りました」
「調査、ですか?」
「はい、この世界は数週間前まで戦争に明け暮れていましたよね?
それが天空上出現とともにピタッと止めている。これがどう世界に影響があるのか調査を、というわけです」
いくつか加えたり誤魔化したりしたが、概ねそんな考えだ。
この世界というか、この星の調査はしたかったからね。僕からしたらチャンスが来たって感じかな。
「調査、ですか……」
「では、陛下がおっしゃっていたあの黒い飛行物体は、あなた方のものなのですか?!」
レブトンの隣に座るシャーリーという女性騎士が話に加わる。
黒い物体って何だろう?
「あの、シャーリーさん、でよろしかったですよね?」
「はい、その呼び方で構いません」
「まず、その陛下のおっしゃっていた黒い物体とは何ですか?」
「黒い物体とは、天空要塞よりも高い所を飛んでいる黒いもののことです。陛下がおっしゃるには、その技術を使えば天空要塞も敵ではないと」
……なるほど、シャーリーの言っているのは人工衛星のことか。
でも、よく見えたよね、衛星軌道上を飛んでいるのに……。
「えっと、確かにその陛下が見た黒い物体は僕たちが飛ばしたものです」
「皆様!申し訳ありませんが、我らと一緒に王都へ、そして陛下にお会いしていただけませんか?」
「……えっと、何故でしょうか?」
「それは、あの天空要塞を落とすためです!」
「もう少し、詳しく教えてもらえますか?」
「それは、我らと一緒に王都に向かう道中でお話いたします」
僕は、真剣にお願いし頭を下げてくる二人を見て、ロージーたちに視線を移すとシャロンが目を輝かせながら僕を見ていた。
その後ろで、クレアとソフィアも僕がどう判断するのか見ている。
どうやら、ここは僕が決めないといけないようだ……。
「分かりました、王都へ行って陛下という方にお会いしましょう」
「ありがとう、レオン君!」
「ありがとうございます!」
そこからの行動は早かった。すぐにブルトン男爵に伝えられ王都へ向かう準備が始まった。
準備といっても、この村で用意するものはない。
男爵たちが乗ってきた馬車が用意され、僕たちはどこに乗るかで少し揉めていたので、僕たちは別の馬車を用意した。
もちろん、ただの馬車ではない。
「ゴ、ゴーレム馬車、ですか?レオン君……」
「あれ、ダメでしたか?」
戸惑った理由を聞いたところ、どうやらゴーレム馬車というのは戦場へ人を送る専用の馬車だそうだ。
それが日常で使われることはないのだとか。
僕はそれを聞いて、ゴーレム馬車を亜空間倉庫にしまい普通の馬車を取り出す。
馬は村長が用意してくれた。
村長にお礼を言いつつ、僕たちは村を出発する。
僕たちが王都へ行くことが決定してから、その日のうちに出発とは……。
『ところで若旦那、何故ゴーレム馬車を用意していたんですか?』
「あ、それ私も疑問に思ってた」
馬車を走らせて移動の最中に、ロージーとシャロンから質問が来た。
どうやら、僕の用意したゴーレム馬車を疑問に思ったようだ。
「この緑の星は、衛星軌道上からの監視しかしていなかったんだよ。そのため、よく使われていた移動手段がゴーレム馬車だったんで」
「間違えたってわけね」
「なるほど、上から知るだけではだめなんですね……」
「そうじゃな、我も人と接することができるようになって初めて人というものが理解できたしのう」
馬車の後ろで、クレアとシャロンが納得していた。
まあこれは失敗してその理由とかが知れたから良しとしよう。
でも、この先のこの星に関する知識は補完していった方がよさそうだ。
どこがどう間違っているか、分からないからね……。
王都へ向かう途中、いくつか町を経由して分かったことがある。
それはいまだに戦争状態なのだということだ。
各町では、魔導銃を持った騎士たちで溢れていた。
しかも、臨時で騎士となった者たちまでいるようで、各町で問題を起こしていた。
またそのためか、町の雰囲気もどこか沈んだような感じだった。
天空要塞が現れて戦争が止まって平和になる、というわけではなさそうだ。
天空要塞が無くなれば、再び戦争が始まるのだろう。
戦争が止まって、まだ一月もたっていないから結論を出すわけにもいかないが、天空要塞はあのまま存在していた方がいいのではないか?
ふと、そう考えてしまった。
王都に向かって馬車を走らせること5日、ようやく王都の外壁が見えてきた。
「あれが王都の一番外側の外壁になります。王都中心部まで、あのような外壁がいくつか続きますがちゃんとついて来てくださいね」
シャーリーにそう注意され、しっかりと男爵たちの後ろを走る僕たちの馬車。
城門の兵士たちから調べられるわけでもなく、素通りできたのは前を行く男爵たちの馬車のおかげだろう。
そう思いながら最初の城門を潜ると、そこには町はなく街道が続いていた。
……なるほど、一番外側の外壁か。
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