第55話 訪ねて来た者たち
儂らは今、バルテナ村の中を歩いて聞き込みをおこなっている。
ニッキーに書かせた似顔絵は、二人分しかなかったがどんな人物かはよくわかった。
一人は子供。それも大体7歳か8歳ぐらいの男の子じゃ。
そして、もう1人はメイドの女性。
彼女に関しては顔は見えなかったが、姿を見たというだけじゃった。
しかし、この二人に他にも何人かいたとなると、どこかの貴族の子供とそのお付きという構図が頭に浮かぶのう。
じゃが、この二人の目撃情報は手掛かりの一つ、ここから核心へと迫ることができればオンの字じゃな。
「ようこそバルテナ村へ。ブルトン男爵様にはご機嫌麗しく……」
「ああ、そのような挨拶は勘弁してくれんかのう?
儂は貴族の挨拶が苦手でのう?いつも通りの挨拶で構わんよ」
「そうですか?では、ようこそわが村へ。歓迎いたしますブルトン男爵様」
「すまんのう。ところで村長、この似顔絵の人物に心当たりはないかのう?」
村長は、男爵から似顔絵の書かれた紙を見せられると考え込み始めた。
「確か、この子はこの間来た旅の一行じゃなかったかな?」
「知っておるのか、村長!」
「は、はい!ブルトン男爵様!」
いきなり舞い込んできた情報に、興奮した男爵が村長に詰め寄っている。
それに怯えてしまって、何も言えなくなってしまった村長。
そこで、興奮したままの男爵を村長からはがし、男爵の隣にいたレブトンという騎士が村長に似顔絵の人物の行方を聞く。
「すみません村長、男爵様が興奮されてしまって……」
「い、いえ、わ、私の情報が有益なものなら、幸いです……」
「それで、その子たちはどこに向かって行かれましたか?」
「行くも何も、この村に家を建てて住んでいますよ?」
男爵は部下たちの手をすり抜け走って行った。
その後を、何人かの部下たちが追いかけていく。
その後ろ姿を見ながら、レブトンは呆れていた。
似顔絵に書かれた少年が、この村のどこに住んでいるのかまだ村長から聞いていないのに走って行くなよっと。
「それで、その少年たちはどのあたりに?」
「あ~、村の南に大きな家を建てて、昨日から住んでいるようです」
……家が建つのが早すぎないか?
いや、魔法のカバン持ちなら可能か?ん~魔法の鞄の能力はよくわからないところがあるからな……。
でも、完成していた家を丸ごと持ち運ぶ……魔法が使えるエルフならできそうだな……。
「では、これから尋ねてみますよ村長」
「後、なるべく村での騒ぎは困りますから……」
その辺りは男爵閣下次第か……。
▽ ▽
宇宙歴4262年5月20日、家をドワーフロボットが作ってくれたのでみんなで快適に過ごしている。
今月初めの約束通り、シャロンが僕の青い星の衛星軌道上に浮かんでいるコロニーに遊びに来た。
もちろん、シャロンは緑の星と間違わずに来てくれた。
そのことに、ロージーが何故か不機嫌になっていたが気にすることはあるまい。
フリがどうとか、昔のバラエティ見過ぎだよ……。
それはともかく、緑の惑星で戦争が終わったとシャロンに教えてあげると、予想通りすぐに遊びに行こうと言い出した。
まあ、こっちは調べたいことがあったから、安全を確保して緑の星へ降りることにした。
降りるメンバーは、僕とロージー、シャロンと侍女のケニー、後は青い星と緑の星の魔力調査のためクレアとソフィアにも同行をお願いした。
後は、万が一のためにお留守番ということになった。
そして、深夜の暗闇を使って緑の星の大地に降り立ち、旅人の一行を装ってこの村に侵入。
住み心地がいいと村長を褒めて、村に住むことを了承してもらった。
そして、草原からも近い南の村の端に家を建てた。
木造平屋で、部屋数とか多く造った。
基本、食事や洗濯などの家事は、僕の亜空間ドック内でしてもらっている。
亜空間ドック内で料理をしてもらって、村の家のテーブルの上に料理を運ぶ。
食事や掃除はこっちで、後は亜空間ドックを利用することにした。
そこへ、玄関から声がかけられた。
「すみません!新しくこの村に住むことになった人たちってあなた達ですよね?」
僕がその声に反応し、玄関に出てみると騎士の鎧を纏った金髪碧眼の男性が立っていた。
そして、その後ろには興奮したおじさんを押さえる若手騎士たちが頑張っていた。
「ええ、僕たちがこの村に新しく住むことになったものですけど?」
「実は、この間の空から光が降りてきたことについて調べているんですが、何か情報はありません?」
ん~、どうやら僕たちがこの緑の星に降り立つところを見ていた人がいるようだな……。
僕がどうするべきか考えていると、訪ねてきたレブトンという人が僕の視線の高さまでしゃがんで調節してきた。
「どうかな?何か知っていることがあるならお兄さんに教えてくれないかな?」
普通の子供なら、この人に何でも教えてしまうんだろうがそうはいかないぞ!
こう見えて僕は転生者だ、大人の対応を見せてやる。
「えっと、後ろのおじさんの興奮が収まらないようだし、改めて訪ねてきてもらえますか?」
「………ふむ、改めて訪ねれば教えてくれるんだね?」
あれあれ?あしらえてないみたいだぞ?
「それでは、明日、またここへ来ますので。ほら閣下、日を改めて明日、尋ねましょう」
「うぬ、そ、そうか?そうだな……明日、訪ねるとしよう」
そう言うと、男爵様の興奮が収まり全員で村を出て行ったそうだ。
その翌日、レブトンという男とシャーリーという女性の二人だけが訪ねてきた。
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