第51話 緑の星の異変
宇宙歴4262年5月2日、今日は宇宙船『ハルマスティ』のブリッジでロージーたちから渡された報告書を読んでいた。
何故か?それは、シャロンからの通信が来たからだ。
シャロンは宇宙海賊襲撃事件の後、大型宇宙船で本来の目的の惑星へ向かったそうだ。
そして、その惑星の管理者になると仕事のほとんどを部下に丸投げして毎日暇しているそうだ。
シャロン曰く、管理者としての仕事を知らない私よりも、知っている人に任せておけばうまくいくわよ、とのこと。
確かに、今までうまくいってたことがいきなり来た上司によってダメになることは多々ある。
シャロンも分からないことは分かる人に任せる気でいたのだろう。
で、任せた結果、暇を持て余してこちらに暇つぶしと称して連絡してきたのだ。
僕は、暇じゃないんだけどね……。
ロージーたちからの報告書を読みながら、目の前のモニターに映るシャロンと話をしているんだが、僕は忙しいんだよというアピールが分かってもらえない。
『ねぇ、レオン君。今度のお休みにそっちに遊びに行きたいんだけど?』
「来るのは構わないけど、相手はできないかも」
『ああ、大丈夫大丈夫。レオン君自慢の青い星に降りて見学したいだけだから!』
「ん~、それなら護衛をつけてくださいね?」
『あら、護衛なんて必要なの?』
「青い星はファンタジーの星ですから、魔物が出るんですよ?」
『魔物か……分かったわ、護衛に何人かつけてもらうから』
シャロンは少し考えて、側にいたケニーというメイドさんに話を通した。
護衛は、アンドロイドかAIロボットになりそうだな……。
「あ、そうだ、シャロン。くれぐれも間違って『緑の星』へは行かないでくださいね」
『へ、緑の星?何それ、面白そうな星があるのね』
「面白くありませんよ、緑の星はいま戦争の真っ最中ですから」
『……それが分かるってことは、監視はしているわけだ』
「今管理している青の星と同じ太陽軌道上にありますからね、監視はしておかないと……」
『星の管理人は、慎重なのね~』
シャロンは気楽だね。暇を持て余すと人は刺激を求めるって誰かが言ってたけど、シャロンの今の状態はそんな感じだ。
あとで、ロージー達やアーサー達に緑の星の監視やパトロールを強化してもらおう。
「それじゃシャロン、僕これからロージーたちと会議があるんだけど?」
『そうなんだ、まあいいわ。今月中にそっちへ遊びに行くから、よろしくね?』
「分かったよ、待ってる」
『じゃ、バイバイ~』
「またね」
こうしてシャロンとの通信が切れると、何故かどっと疲れが出る。
僕まだ6歳なのに……。
『若旦那、いいフリでしたね』
「ロージー……」
これは絶対何か起きるな……。
もしもの時のために、何か作っておこう。緑の星でシャロンを見捨てるわけにもいかないし。
▽ ▽
宇宙歴4262年5月5日、この日の報告書に『緑の星』のものが混ざっていた。
日付は昨日になっている。
普段、僕に持ってくるロージーたちの報告書は週一が基本だ。
だけど、量が多い。
まず青の星の生態状況。特にどこかの国がどうなったという報告が多い。
緑の星のように、大規模な戦争はないが小競り合いはあるようだ。
次にダンジョンや魔物の分布など、衛星軌道上から分かるものだ。
特に、クレアのことがあるのでダンジョンは監視を強化してある。
星の管理人としての青の星の報告書が主だが、中には、この宙域のことや緑の星のことがたまに報告される。
この辺りの宙域はブリュード艦隊が見回っているので、安心できるし、緑の星の宙域もアーサー艦隊やランスロット艦隊が見回ってくれている。
そうそう、アーサー艦隊からランスロット艦隊を独立させておいた。
これも、宇宙の墓場に行った恩恵だ。
戦闘艦を増やし、艦隊を増やして見回りを強化してある。
あと、緑の星の報告書は衛星軌道上からの監視のみとしてあるのでページ数も少ない。
だが、今回の報告書はいつもの倍ぐらいの量がある。
これは何か起きたのだろうと読み進めていくと……。
「え!戦争終結?!世界大戦規模の戦争が終わるって、どうなっているんだ?」
『気になりますか?若旦那』
「ロージーは知っているの?」
『衛星軌道上からでも、監視は続けていましたからね』
「教えてくれ、ロージー」
『その報告書に記載しておきましたが?』
浮遊要塞の出現とその火力に世界は沈黙する。
僕は何度も読み返したが、書かれている報告書が変わるはずもなく、僕は信じられないでいた。
緑の星で起こった戦争は、次々と国を巻き込んでいき世界規模の戦争となった。
これが1年かからずに起こったのだ。
もはや緑の星に住む者たちの生存競争になりつつあった。
しかし、僕が宇宙の墓場に行っているころ、緑の星の中にある海に囲まれた一つの国が島ごと浮遊を開始。
そのまま戦争の起きている地域に赴き、浮遊島の火力を見せつけて戦争を無理やり終わらせた。
その後浮遊島は、様相を要塞に変え今では『浮遊要塞』として緑の星の空を漂っている。
人々はその姿に恐れ、戦争どころではないと対抗するための策を話し合っているとか。
また、浮遊要塞を造り上げた島国もまた国内でもめ始めているとか。
大きな力を持ったことで、野心をあらわにした者たちが出たようだ……。
「……危険な兆候じゃない?これ」
『下手をすれば、世界征服へ乗り出すかも……』
「……」
今、緑の星がやばい状況だ……。
第51話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




