第45話 墓場での取引
宇宙歴4262年3月12日、管理惑星の青い星を出発してようやく目的の星『宇宙の墓場』に到着する。
その星は元は火星のような赤茶けた星だったが、宇宙船を捨てていくうちにいつしか星の表面が見えなくなり機械の惑星のような表面になってしまった。
しかも、捨てた宇宙船が原因で星の中に入ることが出来なくなりまさに墓場のような星になっていた。
そのため、宇宙船を拾い上げるには衛星軌道上から持ち上げねばならず、もはや星の表面に捨てられている宇宙船を取り出すのは不可能と言われている。
もともとこの星は資源の無い枯れた星だったので、こんな宇宙船の墓場のようなことができるのだが、最近では星の再生をという嘆願が届くようになったとか。
『すごいですね、機械の星としか見えませんよ……』
シンシアの感想が、初めてあの星を見た人たちの感想だろうな……。
僕も初めて見た時はそうだったし。
「あの星の衛星軌道上に浮かぶステーションが、受け渡しの場所だよ」
『いくつもありますねステーション。しかも、それぞれに宇宙船がくっついているようですし……』
「あれは商談中の宇宙船だよ、捨てたり引き取ったりをあのステーション内でするんだ」
僕はあらかじめ予約していたステーションへ宇宙船を向ける。
どうやら予約しておいたおかげで、ステーションに先客はいなかった。
ゆっくりと宇宙船『キャメロット』を操り、ステーションの連結部分へと近づけていく。
そして、ある程度近づくとステーションからアームが伸びキャメロットを固定し搭乗口が連結された。
「シンシア、降りるよ」
『はい、若』
メインエンジンを切り、宇宙船を停止させて連結された搭乗口を通ってステーションの通路へ。
さらに通路は重力が切られているため、空を飛ぶように移動していく。
しばらく進んでいると『ここから先、重力があります』の注意書きが。
僕たちはゆっくり足をつけて歩くと、重力地帯へ入った。
『ようこそレオン様、お久しぶりです』
歩いて進むとカウンター越しに、顔なじみの女性型アンドロイドが僕の相手をしてくれる。
『若、知っている方ですか?』
「彼女はここの接客を任されているアンドロイドなんだよ」
『初めまして、接客を任されているユニットナンバー2455063です』
『初めまして、若のサポートをしているシンシアと申します』
「僕は彼女のことを『ユニ』って呼んでいるんだよ」
初めてユニの自己紹介を聞いた時、呼びにくいんでユニットのユニって呼びだしたんだよね。
『ではレオン様、今回もお引き取りをご希望ですか?』
「うん、手続きをお願い」
『畏まりました、少々お時間をいただきますのであちらのソファでお待ちください』
僕とシンシアはおとなしく、薦められたソファで待つことに。
僕たちがソファに座ると同時に、別のアンドロイドの女性が飲み物を用意してくれた。
この手続きってやつが、宇宙船の持ち出し許可と引き取り許可の申請だ。
星の管理人の許可をもらって、捨ててある宇宙船を持ち出さないと泥棒扱いを受けることになる。
捕まれば、子供といえど法で裁かれることになる。
『あの若、ここにはどんな宇宙船を目当てに来たのです?』
手持無沙汰なのだろう、シンシアが質問をしてきた。
「今回は軍用の宇宙船が大量に捨てられたって情報があってね?それを目当てに来たんだ」
『軍の廃棄品って、大丈夫なんですか?』
「勿論大丈夫だよ、軍の廃棄品には捨てるとき制限がかけられるからね」
『制限ですか?』
「軍の製品は特別なものが多いから、おいそれと廃棄できない。だから一部制限をつけて廃棄できるようにしたんだ。それがここに廃棄されたものなんだよ」
『もしかして、それって宇宙船ですか?』
「その通り、軍で使用されていた正真正銘の本物の戦艦だよ。システムとか危険な武器何かは取り外されているけど、船体そのものはそのままなんだ」
軍。僕らが生きている宇宙域は『アースロスティック』という国みたいな中央政府の管轄下にあるんだ。
その『アースロスティック』を外部宇宙域の侵略者たちから守ったり、正規宇宙航路の安全を守ったりする任務に就いているのが軍と呼ばれる『アースロスティック宇宙軍』だ。
中央政府の管轄下のもと、日々活動しているのだ………。
『手に入るといいですね、若』
「さっきこのステーションに付けるとき、他のステーションを見たかい?シンシア」
『そういえばたくさんの宇宙船がいましたね……』
「あれの目的も、僕と同じかもしれないよ?」
『まさか……』
それから10分もしないで、ユニから呼ばれる。
『レオン様、許可が下りましたのでこちらの端末からお引き取りになる宇宙船をお選びください』
ユニが僕の目の前に出したタブレットを操作し、目当ての戦艦を見つける。
軍からの廃棄品リストを見ていくと、すでに引き取られたものがいくつも存在していた。
「ん~、少し出遅れたかな……」
そう思いながら操作していき、めぼしいものにチェックを入れていく。
このチェックはキープという意味だが、最初にキープした者に優先権があるのでこれ以降他の人がリストを見ても『引き取り済み』と表示されるのだ。
そしてついに戦艦のリストにたどり着くものの、ほとんどのものが引き取り済みになっていた。
それでも、何かあるかもとリストを見ていくと12隻の戦艦を手に入れることができた。
戦艦の説明や全体図を見ても、申し分ないものだった。
これにあと民間の宇宙船や、部品などをリストから選んでユニに注文する。
『分かりました、チェックされたリストのものをご用意いたしますので貨物室でお待ちください』
「ありがとうユニ、今回もいいものを仕入れることができたよ」
ユニは笑顔で頭を下げると、カウンターの奥に消えていく。
それと同時に、さっきドリンクを運んできたアンドロイドが貨物室に案内してくれる。
さて、これで対宇宙海賊用の戦闘艦はかなりの数がそろえられるな……。
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