第42話 出発準備
ドンという鈍い音がすると、アルに剣を向けていた豪華絢爛な騎士がぶっ飛ばされた。
アルも思いっきり殴ったようで、死んでいないか心配だったが頭の兜が外れ威力が少し落ちたおかげで、命に別状はないようだ。
ただ、一撃で意識を刈り取られ気を失って倒れていた。
『ふぅ~、すっきりしたわい』
アルはいい笑顔で、本当にすっきりとした顔になっていた。
よっぽどストレスが溜まっていたのだろう。
何が起こったのか一瞬分からなくなっていた騎士たちが、ようやく理解する。
そして、上司のラーナス卿の心配を始める。
「ラ、ラーナス様っ!」
「き、貴様ら、何をしたのか分かっているのかっ!!」
口々に騎士たちが怒鳴ってくるが、アルはただ挑発するだけだ。
そして、ソフィアとクレアがあるの両側に立つとますます挑発をする。
「グチグチ言うとらんで、かかってこんか!この、腰抜けども!!」
その言葉を合図に、騎士たちが一斉に三人に襲い掛かってきた。
騎士たちは、それぞれ腰の剣を抜き、アルやソフィアに襲い掛かっていく。
アルは、剣をかわすと襲いかかってきた騎士一人一人に一撃を喰らわせて意識を刈り取っていく。
ソフィアは、騎士たちの攻撃を受け止めながら鎧の上から一撃を喰らわせる。
その一撃が当身となり、すぐに騎士の意識を刈り取り気絶させていた。
クレアは、二歩ほど後方に下がると魔法を発動。
すると、騎士たちの後方から『ぎゃん』だの『ぎゃふ』だの声が聞こえる。
どうやら、雷系統によるショックを与えて気絶させていた。
そして、わずか10分ほどで50人いた騎士たち全員が気絶していた。
『こいつら、弱いのう……』
「騎士とはこんなものじゃな」
「ご主人様、どうでしたか?」
僕はクレアの頭を撫でてやりながら褒めてあげる。
「よく頑張ってねクレア、すごく強くなっているよ」
「えへへへ~」
この後、気絶した騎士たちを街道の脇に投げ捨てると再び馬車で旅を続ける。
馬車が再び動き出すと、セーラさんが質問してきた。
「あなた達、いったい何者なの?」
「何者って言われても、どう答えていいか分からないです」
「それじゃあ、何あの強さは!騎士たちがあんなに簡単に倒されるなんて」
「あの騎士たちはかなりの強さを持っていたはずよ?レベルも相当高かったみたいだし……それを………」
あの騎士たち、そうとうレベルが高かったのか?
ちょっと聞いておこうか、この世界の平均レベルとかを。
「セーラさんに質問なんだけど、国の騎士たちのレベルってどのくらいなの?」
「国ってことは騎士団クラスってことね?確かレベル50から60辺りになるはずよ」
ということは、一般人はレベル10前後、兵士や冒険者とかで20から40かな。
それならクレアのレベル100越えは相当すごいことになるんだな……。
それから、雑談を交えながら進むこと30分でようやく草原にたどり着いた。
「ようやく到着したね」
僕が馬車を降りると、クレアが一緒に降りてきた。
どうやら、僕の護衛をするつもりのようだ。
後続からやってくる馬車が、先頭の馬車の横に来て止まっていく。
それを確認しながら、僕は草原に宇宙船『ガラハッド』を亜空間ドックから出した。
いきなり目の前に鉄の塊が出てきて、セーラたち奴隷一同は凍りついたように止まってしまった。
そんな奴隷たちを後目に、僕たちは出発の準備に取り掛かる。
ガラハッドのメインハッチを開き、中へ入っていく僕とアルとアシュリー。
その時思い出したように僕は、クレアとソフィアにお願いをしておいた。
「クレア、ソフィア、あそこで驚いている奴隷たちを全員この入り口から中へ入れてもらえる?真っすぐ入っていけば広くて休める場所に出るから」
「我にできることはないからのう、分かったぞ」
「了解しましたご主人様、お任せください」
そう言って、奴隷たちに向かっていく。
僕たちはその間に、宇宙船を点検しメインエンジンをかけていつでも動かせるようにしておく。
さらに5分ほど経ったころ、クレアがブリッジを訪ねてきた。
「何かトラブル?クレア」
「いえ、全員乗り込みましたけど馬車はどうするのか聞きに来たんです」
そう言えば、乗ってきた馬車は購入したものなんだよね。
まだ使えるし、島でも使えると思うから乗せていくか……。
「それじゃあ、クレア一緒に来て。馬車から馬を外すから」
「馬は船の中へ入れればいいんですか?」
「うん、馬を入れるハッチを開けるからそこから入れて」
僕とクレアは宇宙船の外に出ると、すぐに馬車のもとへ行き馬車から馬を外していく。
外した馬車は、僕の亜空間倉庫の中へしまい、残った馬たちは僕たちが出入りしたハッチとは別のハッチを開けて、そこから入れてもらうことに。
「このハッチの奥は、倉庫みたいになっているからそこに馬たちを入れて」
「分かりました、ご主人様」
馬を中に入れてハッチを閉めて、もう一つのハッチから中へ入るとクレアにもう一つの頼みごとをする。
「クレア、奴隷たちの人数確認をお願いできるかな?」
「はい、お任せください」
「じゃあ確認できたら、ブリッジまで報せに来てね」
そう言ってクレアと別れて、僕はブリッジに入る。
すると、アシュリーから騎士たちの仲間が近づいているという知らせを聞く。
「あの騎士たちの仲間なの?」
『そのようですね、街道脇に捨てた騎士たちを回収して手当てをおこないながら近づいてきています』
『しぶとい連中じゃのう』
でも、その前に出発できればいいんだけどね……。
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