第38話 奴隷商
エンシェントドラゴン姿のソフィアに乗ること30分、拠点の島から一番近くそして一番繁栄しているであろう町の側に降り立った。
一応姿を消していられる魔法を使ってもらっているが、僕には実感がなかった。
とりあえず、町の側に降りても騒ぎにならなかったんだから町の人達には気づかれてないのだろう。
ソフィアが人化すると、僕たちはそろって町へ入っていく。
門のところで税金を少し取られたが、全員分払えたので問題なし。
町の中へ無事入ると、すぐに商業ギルドを目指した。
まずは、奴隷調達のための資金作りだ。
『そういやぁ、前回この星の町に来た時のお金、残っていただろ?』
「金貨1600枚ほど残っていますね。でもこのお金が使えるかは分かりませんよ?」
『若、この星全体で使われている貨幣は統一されていますよ』
「え、そうなの?」
『はい、ですからいまお持ちのお金もご使用になれます』
「それはありがたいね~」
星全体で、貨幣を統一しているということは情報伝達がしっかりされているってことだよね?
……これは見くびっていたな、ファンタジー世界!
▽ ▽
「ご利用、ありがとうございました」
この町の商業ギルドは金持ちだったね。僕が持ち込んだ宝石類やアクセサリー類すべてに高額の値段をつけてくれた。
おかげで宝石10個、アクセサリー20点、全部で金貨6700枚で買い取ってもらえたよ。
前回は急いでいたところを足元見られたようだけど、今回はじっくりと腰を据えて交渉したところ高額買取になった。
『結構な額になったのう』
「前回のと合わせて金貨9300枚、これでかなりの奴隷が購入できるんじゃないかな?」
「そうですね、村を作るぐらいの奴隷は買えると思います」
「そうじゃのう、じゃが島までの移動はどうするんじゃ?」
『そこはソフィア殿にお任せして……』
「移動手段で我を頼ろうとするな、それに島に連れていくのは奴隷ばかりではあるまい?」
『そうですね、今回は村を作るためですから家畜などのことも考えないと』
「そうだね、今回はいろいろ購入するからこの中から金貨8000枚だけ使おう」
『ふむ、計画的に使うということか……』
▽ ▽
この町で一番大きな奴隷商のボルゴル商会に来ている。
「いらっしゃいませ、ボルゴル商会へようこそ!」
「奴隷を購入したいんです、見繕ってもらえますか?」
「ありがとうございます、わたくし皆様を担当いたしますロングと申します。
いや~お客様方は運がいい!昨日大量に奴隷が入りましてね?今なら、選び放題ですよ」
大量に奴隷が入荷?何かあったかな……。
『奴隷が大量に入ってきたって、どこかの村がつぶれたの?』
「いえいえ、そうではありません。どうやらお客様方はこの国の人ではありませんね?」
奴隷商が疑るように僕たちを見てくる。どうやら敵国のスパイとでも思っているのかな?
「まあね、僕たちはこの近くの島に村を作ろうと思ってね。そのために大量に奴隷がいるんだよ」
「ほう、入植者の方でしたか。この近くというとバンルー諸島辺りに村を?」
「そうなるね、村が出来たら船でこの町とも取引をしたいね」
「それはそれは、取引できる日を楽しみにしておりますよ。
それと大量に奴隷が入ってきたことを不思議に思われたのなら、お答えしましょう」
『ええんか?よそ者なんぞに話して』
「この町にいる者なら誰でも知っていることですからね。
実は3日ほど前、この国と隣国でおこなわれていた戦争が終わりましてね?それで奴隷が大量に入ってきたのですよ」
『てことは、戦争の犠牲者か?』
「そういう人もいるでしょうが、大半は借金で奴隷落ちした人ですね。
戦争で住んでいた場所を追われ、お金を使い果たして奴隷落ちといったところでしょうか」
ロングさんの話では、入ってきた奴隷の大半が隣国の人達だそうだ。
戦争に巻き込まれた村や町の人たち、家族で奴隷落ちした人や捕虜になった後奴隷落ちした人もいた。
また、戦争に参加していた兵士や騎士も奴隷落ちした人がいるらしい。
さらに、この奴隷商には隣国の貴族も没落して奴隷に落ちた人もいるみたい。
……何か、そういう人を紹介するってことは買えってことかな?
お金足りるか分からんが、出来る限り購入して拠点に連れていくか……。
『若、購入するのは必要な奴隷優先でお願いしますよ』
「分かってるって、面倒ごとには巻き込まれたくないからね」
「おや、ご予算がご心配で?」
「ええ、ですから家族奴隷をまず見せてもらえますか?」
「分かりました、ではこちらへどうぞ」
こうして、僕たちは奴隷購入のためロングさんに連れられて奴隷部屋へと移動する。
そこは、種類ごとに別れて牢屋が存在していた。
最初の部屋に併設されている牢屋には、男の奴隷が盛りだくさん。力自慢の奴らから武人と言われる者たち、元騎士って人もいた。
次に通った部屋の牢屋には、女の奴隷がこれまた盛りだくさん。艶のある目で僕やアルに視線を向けるのは勘弁願いたい。
また、種族も色々いたな。
中でもめずらしかったのが元冒険者のエルフって女性だけど、このエルフ、クレアと同じ感じがするんだよね。
もしかすると、もしかするかも。クレアも彼女を見て、考え込んでいるみたいだし……。
女奴隷の部屋を過ぎて、ようやく目的の家族奴隷の部屋に入ることができた。
その部屋の牢には、家族と思える人たちが捕まっていた。
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