第37話 青い星の拠点
宇宙歴4261年12月18日、青い星の周辺宙域を任せてあるブリュード艦隊とは別の戦闘艦隊が就任した。
その名は『アーサー艦隊』、旗艦アーサーを中心とした9隻の対宇宙海賊艦隊となる。
内訳は、中心の戦闘艦アーサー、アーサーと同型艦のランスロット。
索敵を主に目的とした宇宙船に、ミサイル装備を主にした戦艦が三隻。
後の三隻は万能戦闘艦で、どんな攻撃もそつなくこなす言わば何でもありの戦闘艦だ。
アーサーは船体が赤で統一されていて、性格は素直だが融通があまり効かない。
その点補佐についているランスロットは、融通は効くが考えすぎるところがある。
両者とも性格を持った戦闘艦だが、仲良く任務にあたってほしいものだ。
あとブリュード艦隊より戦闘艦が多いのは、アーサー艦隊は『緑の星』の周辺宙域を担当するからだ。
本当は、アーサーの名のごとく円卓の騎士張りの艦船を用意したかったんだが、時間がないような気がしたので急遽、製造完了していた戦闘艦をまとめてアーサー艦隊として世に送り出した。
「アーサー、寄せ集めの艦隊で悪いが緑の星の宙域は任せたぞ!」
『マスター、緑の星宙域はお任せください。私が担当するのです、大船に乗った気で大丈夫ですよ』
「そう言ってくれると、ありがたいよ」
「ランスロット、アーサーのフォローをよろしく頼む。何かあったらまず相談ね?」
『了解です、マスター。報・連・相は守りますよ』
こうして、急ごしらえながらも青の星と緑の星の宙域は安心しておける。
そしてその日の午後、僕はアシュリーとアルを伴って軌道エレベーターで青の星の拠点の島へ降り立つ。
この先、拠点の町の発展次第では、軌道エレベーターを使っての貿易や観光客の出入りが激しくなるのだろうが、それはかなり先のお話になるだろう。
僕は、軌道エレベーターから見える青の星の地上の景色を見ながらそう考えた。
軌道エレベーターは町の北側に設置されていて、周辺には倉庫街を配置している。
これは貿易などを始めた時のことを考えてだが、倉庫街といっているが倉庫は現在一つしか建っていない。
あとは、ただ広い更地があるだけだ。
また、簡易宇宙港のように受付や案内をするカウンターは用意されているものの、人手不足ということもあり誰もいなかった。
軌道エレベーター受付のある建物を出ると、拠点のゴーストタウンのような街が……町が………ないね。
「あれ?地上の拠点の町がゴーストタウン化してるって聞いたんだけど……」
『そうですね、報告ではそうなっているはずなんですが……』
『まあ、人がいないんじゃしある意味ゴーストタウンと言えなくもないかのう』
周りを見渡せば、ゴーストタウンどころか町すらできていなかった。
ただ、正面の遠くに目を凝らすと町の外壁が見えていた。
「ん~、あれがこの町の安全のための三重外壁ってやつか」
『あの向こうに魔物がいる森が、広がっているんですよね?』
『魔物から町を守るための城壁じゃからのう、それだけ丈夫なんじゃろう』
確か出入りする門は、南の門と西の門だけだったな。
北は海になっていて門は不要、東は港を造るから門は不要だって報告書にあったな。
「そういえば、東に港を造るとか報告が上がっていたけど?」
『それなら、現在ロージーに止められていますね』
「何かあったの?」
『海の魔物の分布や近くの町の港が分からないとかで、時期尚早とか言ってました』
『……ロージーの姐さんは、先のことを考えているからな』
「ロージーが了承しない限り、港建設は止まったままだな……」
町の中央に公園を造って、そこを中心に住民たちの住む家は西と南側に造っていこうとしたんだよね。
でも、住む人がいないのに家だけ造っても勿体ないだけか……。
家は住む人がいないと、痛むのが早いっていうしね。
町をじっくりと見て考えていたレオン達は、閉ざされた南門の上から入ってきた二人の女性に気付いた。
「アシュリー、アル、あれってクレアとソフィアだよね?」
『えっと、あ、はい、こちらに歩いてくるのはそうです』
『……あれがクレアか?なんだか見違えちまったな~』
そうか、アルはクレアを初めて宇宙へ連れて行った時以来、会っていないのか。
それなら驚くのも無理はない。
あの日から、この島の拠点化の計画とともにソフィアにクレアを鍛えてもらっていたからね。
僕は報告書で見聞きしていたけど、確かに実際見てみると見違えたって分かる。
「クレア、久しぶり!」
「ご主人様!お久しぶりです!」
笑顔がまぶしいな~、それに前の卑屈さが無くなっているね。
今はレベル100を超えて自信に満ち溢れているって感じだ。
「レオン殿、それにみんなも久しぶりじゃのう」
「ソフィアも久しぶり!クレアのことありがとうね」
ソフィアは変わらないな、前会った時と同じだ。
エンシェントドラゴンの余裕といったものなんだろうか?
「何、暇だったのとクレアは教えがいがあるからのう」
「いえいえ、師匠の教え方が上手かっただけです」
師匠?クレアってソフィアのことを師匠と呼ぶほどにいろんなことを教わったのか……。
「教え方だけで、レベル100越えはなかっただろう?クレアも努力を怠らなかった証拠だよ」
「あ、ありがとうございます……」
「ところで、今日はどうしたのじゃ?上のことが片付いたのか?」
上?……ああ宇宙のことか。
確かに地上から宇宙は上だな……。
「一応めどがついたからね、拠点づくりのために人を集めようかと思ったんだけど……」
「そうじゃな、さすがに我ら二人だけというのは寂しいからのう……」
「ご主人様、また奴隷を買いに町へ行かれるのですか?」
「ああ、それとクレアたちの日用品や雑貨、それに服や装備もね」
「ほう、我のも用意してくれるとな?」
「勿論、資金は十分用意できると思いますからね」
また宝石類を売ることになるけど、かなりの量があるからな~。
この間の宇宙海賊の爆散した宙域でも、回収できたようだし……。
「それじゃあ、出発しましょうか」
ソフィアのご厚意で、町の近くの草原まで連れていってくれるというので任せた。
さて、ファンタジーの世界が再びだな……。
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