第31話 火種
緑の星に関する重大なことを聞き、モニカさんは固まってしまう。
だけど、相棒のベルニーさんはそれがどれだけ重大なことなのか理解できてないようだ。
「魔力がないのに魔法を使うってことは………ああっ!」
「ベルニー、気づいた?」
「気づいた。レオン君、これは大変なことになるわよ……」
「ええ、だから管理する星に選ばなかった……というか選べないんですよ」
その昔、魔法が使える星が発見された時は大騒ぎになったそうだ。
そして、人々は魔法を使いたくてその星に殺到。
結果、その星に根付いていた文化や文明がめちゃくちゃにされた。
また、その星で生まれ育った人でない限り魔法が使えないと分かると、人々はその星に興味すら失い気にする人もいなくなった。
そんな時、宇宙海賊がその星を拠点化し、さらに、資源強奪団なる者たちがその星からめずらしい鉱石などを根こそぎ奪おうとした。
そこまでになってようやく中央政府が立ち上がり、宇宙海賊を討伐。
さらに、資源強盗団を壊滅させることに成功する。
その後、その星はボロボロになり、こんな悲劇を繰り返さないために星の管理人法が制定された。
今そのボロボロになった星は、星の管理人法に基づきちゃんとした人が管理して再生を図っているそうだ。
その後も魔法が使える星は発見されるが、すべてその星で生まれ育たないと使えなかった。
「しかし、その星で生まれ育っていなくても魔法が使えるかもしれない……」
モニカさんとベルニーさんの顔が青くなっていく。
そして、近くで聞いていた父のニードルと母のシルビアの顔も青くなる。
当然、僕の顔も青くなっている。
「これは、誰にも知られるわけにはいきませんね……」
「それどころか、知られたら昔の騒ぎの非じゃないわ……」
「レオン、これからどうするんだ?」
父ニードルの質問で、皆の視線が僕に集中する。
緑の星に関しては、今も衛星軌道上からしか調べさせてないけど、いつかは星に立たないといけないんだろうな……。
「今は、青い星の管理に集中するよ。緑の星は当分調べるだけで手を出さない」
「……それしかないわね、下手に関わりを持ってしまうと大変なことに巻き込まれそうね」
「でも、一応巻き込まれた時のことを考えておいてください。私たち審査官もお手伝いできるかもしれませんし……」
「その時は、お手伝いしますよ」
モニカさんとベルニーさんが力強く協力を申し出てくれた。
多分この二人、星の管理人法ができた経緯を知っているんだろうな。
だからこそ、僕に協力してくれるんだろう……。
「分かりました、緑の星のことがばれた時のことを考えておきます」
緑の星、厄介な星があったもんだと言いたいけど、一番の問題は世間の人達か。
魔法を使ってみたいってだけで、星に住む人たちのことを考えずに行動するからね……。
緑の星を守るためにも、戦闘艦隊を増やした方がいいかな……。
▽ ▽
星の影より、亜空間ゲート付近の騒ぎを見守る者たちがいた。
こいつらは、ニードルたちを1日遅れで追いかけてきた宇宙海賊団だ。
総勢6隻の宇宙船を使い、獲物を確実に仕留めてきた。
その宇宙海賊団の宇宙船が、星の影に隠れて見守っている。
「お頭、襲わねぇんですかい?」
「ああ、亜空間ゲートが無事開通するまでな」
「下っ端の者たちがうるさいんでさぁ、訳っての教えてもらえやすか?」
船長室で、暇つぶしに亜空間ゲートの様子を見ていた船長に側近の男が聞いてくる。
こいつも、面倒見がいいだけで頭が悪かったんだよな。とため息を吐かないようにしながら説明してやる。
「いいか?俺たちの宇宙船にある食料はあと一ヶ月分だけだ。
この食料が無くなったら、俺たちはこの場所で飢え死にだな?
他人の食料を奪うって手もない事もないが、他人の食料ほど信用のおけないものはない。
それは、もしかしたら俺たちが襲い掛かった時、敵わないと見て自分たちの食料に毒を盛っておく。そして、俺たちを一網打尽で殺そうと考える。
信じられないかもしれないが、昔、そうやって壊滅した宇宙海賊がいたんだよ。
だから、今、俺は待っているんだよ」
「……待っているんですかい?」
こいつ、俺の説明で分かったのかねぇ?
多分この顔は分かってねぇな……。
「今あいつらは、亜空間ゲートを完成させるためにあそこに留まっているんだよ」
「亜空間ゲート!あそこに亜空間ゲートができるんですかい?」
「そうだ、それが完成したら本国の連中も呼びやすくなるだろ?」
「確かにそうですなあ、ここに来るまで二つの銀河を素通りでしたから、こっちに拠点ができれば……」
どうやらわかってきたようだな。
亜空間ゲートの完成で、本国の仲間を呼び寄せて素通りしてきた銀河二つで大暴れ!
亜空間ゲートができたばかりの頃は警備も薄いからな、暴れ放題だ。
資源がある星を調べて資源を俺たちのものにすれば、大儲けはもとより俺たちの船の戦力向上も約束されたようなものだからな……。
……だが、問題がないわけじゃないんだよな。
俺たちがここに来るまでずっと追いかけていたあの船、気になるんだよな。
あの船の護衛についていた船は、確か星の管理の護衛戦艦だったかな?
あの船がいるってことは、審査官が一緒のはずだ。
てことは、星の管理人を置くような星が近くにあるってことだろう……。
調べてみるか……。
第31話を読んでくれてありがとうございます。
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