第3話 時空乱流
僕たちの目の前にある空中に表示される今回の荷物の詳細なデータ。
それを見ながらのミゲル係長との話し合いは、スムーズに終えることができた。
「オーバス運輸は、いつも丁寧に輸送してくれるから助かるよ」
「他の輸送会社とうちでは違いがあるのですか?」
「ああ、特に『ベルナー輸送』は大丈夫なのかって心配になるほどにね~」
ベルナー輸送って、確かうちと親会社が同じだったはず。
お客あってのことで、心配されるほどって……。
「心配されるほどなんですか?」
「ベルナー輸送が担当の時は、担当者の態度から違うね。レオン君のような態度ならお客との対応はスムーズだ。
ところが、親会社が大手で大きいからか勘違いしちゃったんだろうね上から目線で、荷物を運んでやったんだぞって態度で来られるから揉めるんだよね……」
大手が後ろにいると、勘違いしちゃうのかな……。
自分の力でもないのに、よく上から目線なんてできるな……。
「さらに、荷物の扱いが悪いんだよ。
まあ百歩譲って傷がついたは許そう、だけど、荷物の量が足りないってどういうことなんだい? 1000トン頼んだのに800トンしかないなんて……」
……それって横領か、横流し?
「……それは心配になるレベルですね」
「だろ? こちらとしても困っているんだよ。すべてオーバス輸送にお願いしたいけど、そうもいかないだろう?
だから、次の荷はベルナー以外でとはお願いしているんだけどね……」
まあ、そういうわけにもいかないだろうな~。
「はぁ、今から憂鬱だよ……。
でもまあ、こんなことを君に話してもどうにもならないんだけど愚痴を聞いてくれてありがとう」
「いえ、一応父さんには知らせておきますので」
「何か変わればいいんだけどね~」
「ですね」
その後、この惑星から運ぶ荷物を積み込み次の目的地の惑星『ホーネ』をミゲル係長に確認して出発となった。
宇宙港で出向の手続きをしてもらっている時、ふと思い出したかのように見送りに来ていたミゲル係長が忠告してくれる。
「そうだ、惑星『ホーネ』を目指すんだったらアレに注意してくれ」
「アレ、ですか?」
「そう『時空乱流』だよ。この惑星『ニッキ』と『ホーネ』の間で超新星爆発が観測されてね? その影響で一時的に『時空乱流』が発生しているそうだ」
時空乱流か……。
確か、巻き込まれるとどこかの場所に飛ばされるって話だったな……。
あるいはタイムトラベルするとか、別宇宙に行くとか……まあ、そんな話は物語の中でしか聞いたことないけどね。
「わかりました、気をつけていきますよ」
そう返事をすると、ミゲル係長はジロジロと僕を見てくる。
「あの……」
「いやいや、やっぱりレオン君は母親にだな!」
……ミゲルさんの父さんに対する印象って、気になるな~。
宇宙港でミゲルさんと別れ、オーバス運輸の宇宙船『ハルマスティ』との連結通路でエリーとアシュリーに合流した。
「エリー、アシュリー、荷下ろしと荷運びお疲れさま。
何も問題はなかった?」
『はい、何も心配はなかったですよ。アシュリーと力を合わせて頑張りました』
「うん、エリー、ありがとう」
『……私も一応エリーと力を合わせて頑張りました。
新しく積み込まれた荷の固定など確認しておきましたので問題ありません』
「アシュリー、本当にご苦労様でした。 ゆっくり休んでね」
僕が疲れた顔のアシュリーに労いの言葉をかけていると、後ろからロージーが声をかける。
『と言いたいところだけど、次の目的地までに問題が発生したわ。
アシュリー、エリー、全員を起こしてブリッジに着てちょうだい』
アシュリーとエリーは頷くと、すぐに船内へ入っていく。
「ロージー、やっぱり警戒は必要なんだね?」
『はい、この船で時空乱流に巻き込まれたらどうなるか……』
僕は連結通路の窓から見える宇宙船『ハルマスティ』を見る。
全長2キロを超える貨物船型宇宙船だ。
武装はほとんどなく、宇宙海賊なんかに襲われればすぐに降伏しちゃいそうな情けない宇宙船だけど積載量はこの大きさの宇宙船に比べて2倍の量を積み込める。
それは、極力武装をなくしたこと。
これにより、積載量を増やすことに成功。
ただ、武装がなくなった分、宇宙海賊や宇宙のトラブルに対応する力が弱くなった。
そこで、船体全体を守れるシールドを装備し武装を外部に任せることに。
勿論外部といっても、僕の亜空間ドックにある7隻の戦闘用宇宙戦艦に任せることになったのだ。
クフフ、いずれこの戦艦たちが披露される日が楽しみだ。
『若旦那……若旦那!』
「な、何ロージー」
『ブリッジに着きましたよ、いつまで子供らくない笑みをしているんですか』
「子供らしくないって……」
『とにかく、船外で点検しているロボットを中に入れます。それから艦内チェックをお願いします』
「はいはい~」
『はいは一回ですよ、若旦那』
相変わらずロージーは可愛くないな~。
とりあえず、艦内チェック艦内チェック~っと……。
僕とロージーで、船全体のチェックをしているとアシュリーとエリーが他のアンドロイド2体を連れてきた。
水色の髪の色をした女性型アンドロイドのシンシアに、銀髪の女性型アンドロイドのオリビアだ。
彼女たちは母さんが連れてきたアンドロイドで、どうやら結婚前から一緒にいた古株らしい。今は僕の側で、いろいろ手助けをしてもらっている。
『みんなはそれぞれの席について、これから問題点について話し合いを行います』
『次の目的地に、問題が発生したの?』
『違うわシンシア、目的地じゃなくて航海途中によ』
『えええ~~』
『エリー、うるさい。ロージーの話が聞こえないでしょう?』
『ご、ごめんなさい……』
『とにかく、次の目的惑星『ホーネ』へ行くまでの間に時空乱流が発生している場所があるそうよ』
……こうして、ロージーたちの話し合いが行われる。
その間、僕は聞いているだけだ。
彼女たちの頭脳にはかなわないから、僕は何も口出ししない。
ただ、最終決定権は艦長の僕にあるんだけどね。
第3話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




