第27話 星の管理法
宇宙歴4261年11月12日青い星、緑の星から1光年ほど離れた宇宙域に宇宙船『ハルマスティ』に似た大きさの宇宙船が航行している。
目的地は、青い星の衛星軌道上にある簡易宇宙港だ。
航行しているこの宇宙船の名は『ハルマスライン』といい、レオンの宇宙船『ハルマスティ』の兄弟船になる。
艦長はレオンの父親であるニードル・オーバス、一緒にレオンの母親のシルビア・オーバスも乗っている。
また、この宇宙船に同行している宇宙船が二隻ある。
護衛戦艦の『金色』と『オーガン』といい、対宇宙海賊のために護衛してもらっているのだ。
そして今、この三隻の宇宙船は最後のワープに入る。
この宙域からワープして、目的地近くまで飛ぶつもりなのだ。
レーダーを確認し、辺りに敵が見当たらずさらにワープ線上に障害物も確認できなかったことから、三隻はそれぞれ順番にワープしていった。
▽ ▽
ようやく、青い星がモニター越しではあるが確認できる距離に来た時、ニードルは連絡を入れることにした。相手は勿論、時空乱流に巻き込まれ二ヶ月の間消息を絶っていたニードルの大事な息子、レオンにだ。
「ニードル、目的の星が見えたって?」
ブリッジに飛び込んできたのは、ニードルの妻でありレオンの母親のシルビアだ。
ある意味、父親のニードルよりレオンのことを心配していた。
「シルビア、慌てなくともそこのモニターに映っているだろう?」
「そうね、この青い星にレオはいるのよね……」
「ロージーたちが付いているから、だいじょうだよ……」
シルビアの肩を抱いて一緒にモニターに映る青い星を見るニードル。
そこには、自分の子供を心の底から心配する父親と母親がいた。
「ニードルさん、シルビアさん、目的地が見えたって聞きましたが……」
「……ちょっと待ってベルニー」
「どうしたの?モニカ」
ブリッジに入ってきた女性を後ろから来た女性が肩をつかんで止める。
モニカという女性は空気を読んで、同僚のベルニーを止めたのだ。
急に止められたベルニーが文句を言うために振り向くと、同僚のモニカが前を指さす。
ベルニーが指さされた方向を見ると、肩を抱き合ってモニターに映る青い星を見ているニードルとシルビアを確認した。
ここでようやくベルニーは、モニカがなぜ止めたのか理解した。
「……それならそうと言ってよモニカ」
「しょうがないじゃない、ベルニーが勢いに任せてブリッジに入るからよ」
「……と、とにかく、あれが目的の青い星ね?」
「そう、魔法の使える惑星『青い星』よ。星に名前が無くて青い星とよばれているみたいね」
「そこもポイント高いよね」
「そうね、確か星の管理人になりたいのはニードルさんたちの子供のレオン君だっけ?」
「そうよ、まだ6歳の男の子……大丈夫なのかな?」
星の管理人とは、個人で星を持つことは宇宙法によって禁止されている。
だが、生命惑星の管理人をすることは可能なのだ。
管理人は生命惑星の管理を一手に引き受けて、渡航者の管理や見学や体験などのツアーの許可などを管理する。
その生命惑星に元からある文化や文明を乱さないように、目を光らせて監視することも必要となってくるのだ。
また、宇宙海賊や惑星の資源を狙った犯罪者たちからも守らなくてはならないほど大変な仕事なのである。
その分、管理する惑星に拠点を造ることもできるし生活も許可される。
また、管理している惑星の人たちと交流や結婚も許されるのだ。
もちろん、自分の正体や力を明かしてこちら側へ引き込むことも許可されている。
星の管理人は大変な仕事ではあるが、自由がきく仕事でもあるのだ。
「6歳の男の子が星の管理人ねぇ……」
「前例がないわけじゃないけど、資質とかを見てから決めないとね」
「それに、今回の管理惑星は『魔法の使える星』だからね……」
「モニカは、例の魔法が使える惑星の事知ってたんだ……」
「当然でしょベルニー、あの悲劇は繰り返しちゃならないんだから……」
今から1000年程前、まだ、管理惑星法にそれほど力がない時代。
ある宙域で生命惑星が発見され、その発見された星の管理人に1人の男性が選ばれた。
彼はその宙域にある惑星の都市で、役所に勤めていて上司のお願いと言うことで名義だけ貸して管理人となったのだ。
そのため、星の管理はおざなりで10年ほどでその星は宇宙海賊や資源強盗団の餌食となりボロボロにされてしまった。
ところが10年を過ぎたあたりから、宇宙海賊の被害や資源強盗団の被害がぱったりと無くなったのだ。
原因はすぐに判明した、海賊や盗賊はその星の住人に討伐されていたのだ。
すぐに調査団が組まれ、その星の秘密を探りその星が魔法が使える星であることが判明。
大々的に報道され、ファンタジー惑星発見の報道で世間の注目は過熱した。
それから観光客が急増、この星に来れば魔法が使えると根も葉もない噂を頼りに人々が押し寄せてきたのだ。
この対応に星の管理人は手が回らず、星の中の文明や文化はめちゃくちゃになりあちこちで戦争の火種が生まれる原因となった。
さらに、外から来た人は魔法が使えないことが判明すると一気に人々の関心が薄れ、訪れる人が激減、結局後に残ったのは無茶苦茶に文明や文化が乱された魔法が使える星だけだった。
この悲劇をある報道機関が取り上げ、この出来事の反省から星の管理法が厳しく力を持つようになったのだ。
「私たちがしっかりと確認して、許可を出さないとね……」
モニターに映る青い星を見ながら、モニカとベルニーの審査官は気を引き締めるのだった。
第27話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




