第26話 本格的拠点づくり
宇宙歴4261年10月14日、僕はクレア、ソフィアと一緒に朝食を済ませると宇宙船ハルマスティのブリッジへ移動した。
ブリッジには、ロージーたちがすでにそろって緑の星を調べていたが作業をいったん止めてもらい今後のことを話すことにした。
「まず青い星についてだけど、これを見て」
僕は艦長席のパネルを操作し、中央の立体モニターに青い星の3Dモデルを映し出す。
そこからさらに、青い星の地表を映し出し、ある島に寄っていく。
「……これ、あの青い星、ですよね……」
「すごいのう……まるで宇宙、じゃったか?そこから降りて行ったような感覚になったぞ……」
クレアとソフィアが3Dモデルに驚いている時、ロージーたちは冷静に質問してきた。
『それで若旦那、この島がどうかしたのですか?』
「この島は、ロージーたちの調査で大体の魔物の分布が分かっている島の一つだ。
この島の……この場所に拠点を造ろうと思う」
そう言って指さした場所は、島の東の端。
島全体に広がる森を避け、東の端にあるでっぱりに僕たちの拠点を造りたいんだよね。
『……この場所に拠点を造るとなると、港町となりますね』
『分布する魔物を見る限り、町の外壁は三重が理想ですね』
『拠点を造るといっても、土地を均してから外壁を造り町を造るといった流れになりますね……』
『若旦那、期間はどれぐらいを設けるつもりですか?』
期間か……そういえば考えてなかったけど、この計画はクレアのためにも必要なことなんだよね。
「期間は一か月を考えているよ」
『……若旦那、多すぎます。この程度の工事ならば一週間が妥当です』
一週間でできちゃうのか?
すごいな……僕の昔の知識は、本当に役に立たないな。
何のために転生したのか、疑問に思うけど深く考えるのはよそう。
「それじゃあ、拠点づくりをお願いするよロージー。あと、緑の星は当面衛星軌道上からの偵察だけを続けてくれ」
『それは、何か意味があるのですか?』
「アシュリー、緑の星は魔導銃を使った今までにない魔力を持った星だ。すぐに緑の星の人と接触、とはいかない方が良いだろう。まずは観察、そして文化を調べて接触といきたいんだ」
『分かりました、偵察衛星からできる限り調べておきます』
「よろしくね」
緑の星は、今まで見つかった魔力を持つ星とはどこか異なる生態系みたいなんだよね。
魔導銃なんて魔道具も、今までの星には無かった武器だし……。
「それから、ソフィアにはお願いがあるんだけど……」
「ん、何じゃ、我のできることであれば協力してやるぞ?」
おお、ソフィアはかなりここが気に入ったようだな。
後で、デザートでもおごるかな……。
「ソフィアには、クレアを鍛えてもらいたいんだよ」
「ご主人様……」
「クレアをか?主人であるお主が鍛えるのが筋じゃと思うのじゃが……」
確かにそうなんだよね、クレアも悲しそうに見ているけど僕にはできないんだよね。
「確かに、僕が面倒を見るべきなんだけど僕では鍛えることが出来ないんだよ」
「……もしかして、年齢とか身体が小さいとか気にしておるのか?」
「いや、そうじゃないんだ。僕には魔力がないんだ、だから魔力を持つものに鍛えてもらおうと思っていたんだ」
「お主、魔力を持っておらぬのか?」
ソフィアは、ジッと僕を見つめている。何か探っているみたいだ……。
「確かに、お主に魔力は宿っておらぬな……しかし、別の何かを感じるが……まあいいじゃろう」
「それじゃあ、ソフィアお願いできるかな?」
「うむ、クレアを鍛えること、任せてもらおう」
良かった、これでクレアも強くなるだろう。何せ、赤い月のドラゴンに鍛えてもらうんだからな……。
「場所は、今度拠点にするあの島でお願いするよ。クレア、頑張って強くなれよ?」
「ご主人様、必ずご期待に沿えるよう頑張ります……だから、見捨てないでください……」
「見捨てたりしないよ、ただ、僕ではクレアを鍛えられないからソフィアにお願いしただけなんだから」
「はい!」
まだ不安そうだなクレア、ここは僕も拠点づくりに参加した方がよさそうだ。
「あと、一応僕も拠点造りを『ダメです』…」
ロージーのダメが入った……。
『若旦那には、この宇宙でやってもらわなければいけないことが残っています』
「えっと、それは?」
『私たちが調べた資料に目を通すことと、緑の星に飛ばしている偵察衛星の改良です』
偵察衛星の改良……そういえば音声データもとれるようにと要請が上がっていたな……。
それとロージーたちが調べた資料のチェックか。
宇宙船ハルマスティの船長は僕か、6歳児だろうと責任はついてまわるわけね。
「分かったよ、改良と資料に目を通しておくよ。そういうわけだからクレア、時々会いに行くことしかできそうにないけど、頑張れよ」
「……はい!」
……どうやらやる気を出しているみたいだなクレア。
今は強くなりたいって顔をしている。
『……残念でしたね若旦那』
ロージーがボソッと僕の側にやってきて呟く。
「な、なにが?」
『本当は寂しい表情のクレアさんを期待されていたのでは?』
「そ、そんなことは……ない……と思う」
『若旦那、女の子は若旦那が思っている以上に強いものなんですよ?』
「そ、そうなの?」
『ええ、そして若旦那が思っている以上に弱いものでもある』
「……訳が分からないよ?」
『お子様には、まだまだ女性の心は早すぎますよ』
くっ、転生して本当は6歳児の頭ではないのにお子様扱い……。
何か納得いかないぞ……。
第26話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




