第22話 初めての…
宇宙船ガラハッドに乗り込み、僕たちは10分とかからずに大気圏外にまで飛び出した。
青い空から暗い宇宙空間へすぐに景色が変わると、青い星の衛星軌道上を進みハルマスティが泊めてある簡易宇宙港を目指した。
「やっぱりすぐに宇宙空間に出れるね、この船は」
『……ところで、彼女を本当にロージーたちのところへですか?』
気を失っているクレアをそのまま座らせて、僕とアルはこれからを話した。
「もちろん、ロージーたちに………お、見えてきた。あれが簡易宇宙港だ」
『……簡易って、あれもう立派な宇宙港じゃないですか……』
アルが確認した宇宙港に、宇宙船ガラハッドが入港する。
といっても、簡易であるため係留するのが精一杯で連絡通路を取り付けてそのままということになる。
僕たちは、連結された連絡通路を通り、簡易宇宙港に入った。
クレアは気を失ったままなので、アルが担いで宇宙港に入る。
宇宙港には受付があるのだが、今はまだ誰も受付に座っていない。なぜなら、利用するのが僕たちだけだからだ。
僕は、誰もいない受付の中に入ってあるパネルを操作する。そのパネルとは、宇宙船を係留させるための連絡通路の連結だ。
宇宙港には、何種類かあるが今回の僕たちが青い星の衛星軌道上に造ったのは簡易宇宙港。
そのため、宇宙船は連絡通路を連結するだけで係留できるようになっている。
その連絡通路を切り離す。
これで、宇宙船ガラハッドは自由になる。そこで今度は僕の亜空間ドックに収納して点検整備を行うのだ。
「これで、ガラハッドの収納も完了。早くロージーたちのところへ行こう」
『はい、それにしても地上にいるときに別の惑星の発見を……』
「う、んん……」
その時、クレアが目を覚ます。
だが、自分の体が軽い事やフワフワ浮くことに混乱してしまった。
「な、な、な、なーー!」
「落ち着けクレア、ここは地上じゃない宇宙だ」
「……宇宙?う、宇宙、って、なん、です、か?」
手足をばたつかせたり、グルグル回したりして暴れるクレアを落ちつかせようと僕は質問に答えていく。
「クレアは、気を失う前のことを覚えているか?」
「わ、わ、私の、質問……」
「今説明してあげるから、僕の質問にも答えて?」
安定しないクレアの体、でも僕をジッと見ようとしている。
「お、覚えています……椅子に、座って金属の箱が空を、空を飛びました!」
「その空の先にあるのが宇宙だよ」
クレアは壁にぶつかり、そして弾かれ僕に向かって飛んできた。
僕はそれを優しく抱きしめようとするが、身長差に年齢差があり抱きしめるというより抱き着いたっという感じになってしまう。
……なんだか、カッコつかないな。
クレアに抱き着かれ、お互いの顔が目の前という近さになりお互い赤くなってしまった。
それを見ていたアルが、僕の靴のスイッチを入れてくれる。
『簡易重力が、発生しましたからもう歩けるはずですよ』
「ア、アル、すまない……」
『それと、クレアはこの靴を履きなさい』
アルは、僕と同じ靴をクレア用に渡す。
それを恐る恐る受け取るクレア、すぐにジロジロと靴を眺めると自分の足に履かせた。
「こ、これでいいですか?」
「それじゃあ……」
僕はクレアの靴についているスイッチを入れると、簡易重力が発生し床を踏むことができた。
「こ、これは、重力魔法ですか?便利ですね……」
「いや、これは魔法じゃないんだよ。それに僕たちは、魔法が使えないし……」
『若様、もうすぐロージーが到着しますよ。あらぬ疑いをかけられたくなかったら、いい加減抱きしめ合うのはやめた方が……』
そのアルの言葉に、僕とクレアはようやくお互いを抱きしめていることに気付いた。
そして、勢いよく離れた。
もちろん、お互いの顔を真っ赤にして……。
それから5分ほどして、ロージーが到着する。
『若旦那、お帰りなさいませ』
「ただいまロージー、早速で悪いけど緑の星について教えてくれる?」
『はい、ではハルマスティのブリッジに向かいましょう。そちらでの説明の方が資料がそろっていますので』
「分かった。それじゃあ、アルはメンテナンスに。クレアは僕について来て」
「は、はい」
『では、青い星に行くときはまたお呼びください』
アルは頭を下げ、僕に挨拶をすると別の通路へ。
僕とロージー、それとクレアは一緒にハルマスティが係留されてある連絡通路へ向かった。
クレアを見たロージーの目が少し怖かったけど、問題はないはずだ。
僕とクレアのブーツのスイッチを切り、僕に抱き着いたクレアを導くように連絡通路を飛んで渡っていく。
その時、外の景色を見てクレアが驚いていた。
「綺麗……」
「クレア、あの青い星が僕たちが今朝までいた町とか草原とかがあったところだよ」
「え、私たち、あそこから来たんですか?!」
クレアは、僕に抱き着いたまま青い星をじっと見ている。
「……見えませんよ、ディルナートの町とか……」
『町などの細かい物は見えませんよ、ここは地面からかなり高さがありますからね』
「高さ?」
ロージーがクレアに説明を始めた。
『地面から魔法で飛び上がって1時間くらいの場所がここ、と考えればわかりやすいでしょうか?』
クレアは少し考えた後、僕に抱き着く力を強めるとフルフルと震え出した。
想像しちゃったんだな……。
それ以降クレアは、ハルマスティのブリッジに着くまで僕にしがみ付いて黙ったままだった。
第22話を読んでくれてありがとうございます。
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