第20話 宇宙船ガラハッド
朝食をとったあと僕たちは宿を引き払い、クレアの服や身の回りの物を買いに出かける。
そして、買い物を済ませるとその足で町を出ることにした。
目指す場所は、僕とアルが最初に降り立った草原。
ロージーからこの惑星とは別の惑星が見つかったことや、ドラゴンと名乗る謎の女性のことなどいろいろと問題が起きたので宇宙に戻るつもりだったのだ。
しかし、同行者ができるとは思わなかった……。
▽ ▽
ある程度進んだところで休憩を取ることにした僕たち。
たき火を囲み、昼食を用意して三人で食べた後で僕はクレアに質問してみた。
「クレアは、ダークエルフの始まりについて知らない?」
「始まりですか? 昔話程度なら知っていますけど……」
「聞かせてくれる?」
始まりはどこの集落でもある世代交代からでした。
古き王から新しい王に変わるそんな時、古き王とともに生きていく者たちが現れたのです。
古き王は集落の混乱を避けるため、ともに生きていきたい者たちとともに集落を出ました。
集落を出た古き王の一行は、新天地をダンジョンに求めました。
そして、ダンジョンの中で暮らすようになったのです。
ダンジョンで新しい集落を造ってしばらくすると、冒険者が来るようになりました。
冒険者たちは、ダンジョン内の休息できる村として交流を始めました。
そして、月日はたち村は町へ、ダンジョンの周りは巨大な都市になりました。
「……以上が、伝え聞く昔ばなしです。
ダンジョン内で暮らしていくうちに、エルフはいつしかダークエルフへ変わっていたそうですよ」
「なるほど、きっかけはどこにでもあるものだけど結果は大違いだな」
『じゃな、しかしエルフとダークエルフが同じ種族だったとはのう』
「住む環境が違うんだから、その場所に合わせた進化とでもいうのかな?」
進化、ダークエルフはある意味エルフから進化した種族だってことだな。
クレアたち祖先の話を聞いた後、僕たちは再び目的地へ歩き出した。
▽ ▽
ようやく僕たちが初めの草原にたどり着いた時には、日もだいぶ傾いていた。
グズグズしていたら夜になってしまう。
「さて、目的の場所に着いたし早速出現させるか」
『レオン、どの船を出すつもりなんじゃ?』
「ん~、宇宙にあるハルマスティまで帰ることができればいいわけだから、そんなに大きなものは出さないよ」
僕とアルの会話に、首を傾げて何の会話をしているのか分かってないクレア。
僕はそんなクレアは見ると、クスリと笑ってしまう。
そして、僕は右手を前にかざすと亜空間ドックから宇宙船を一機出現させる。
全長200メートルちょい、重量は量ったことないがそこら辺の量産型より軽くなっている。
対宇宙海賊用の武器は、そう積んでいないが逃げることを前提として造ったのだからこんなものだろう。
形は半円形型、丸くなっていない方に8つのスラスターが組み込まれており惑星脱出などを容易に可能としている。
『レオン、「ガラハッド」を使うのか?』
「ガラハッドは成長途中の戦闘艦だからね、いろいろな経験を積んでもっと成長させたいんだ」
『まあ、ハルマスティまで行くのに他の船だと大げさか……』
僕とアルが会話をしている間も、クレアは戦闘艦ガラハッドを見て驚いている。
それはもう、目が飛び出るぐらい目を見開いて、口を大きく開けていた。
ガラハッドのハッチが開き、僕とアルが中へ入ろうとしてもクレアは動かなかった。
「クレア? 船の中に入るよ?」
僕が声をかけると、ギギギと錆びたドアがゆっくり開くときの音のようにクレアがゆっくり僕を見る。
「……な、なんですか?」
「どうしたの?クレア」
「どうしたのじゃないです!なんですかこれは!?」
クレアは、僕に詰め寄りながらまくしたてる。
「大体、どこからこんな鉄の塊を出したんですか!」
「いや、それはね……」
「一体ご主人様は、私をどこへ連れていこうというのですか!」
「それは…」
「もしかして、私、とんでもないご主人に当たったんですか?!」
「クレア?」
「私の不幸はここに極まったんですね!あの研究者ビニー!私をダンジョンから連れ出したあの女!絶対復讐してやる!!」
僕は混乱しているクレアの額に、デコピンを一発お見舞いする。
「落ち着けクレア」
「はぅ!」
クレアは僕のデコピンを食らって、その場にしゃがみこんで痛がっている。
「……クレア、乗って。説明は後でしてあげるから」
「……絶対ですよ」
額を押さえながら、僕とアルとクレアは宇宙戦闘艦ガラハッドに乗り込んでいった。
ガラハットの内部はできる限り簡素化してある。
これは長距離を移動できる船ではないから、ブリッジに向かって三人で歩いているこの通路も、休憩室も他にある部屋も他の船に比べてシンプルな作りになっている。
勿論、今僕たちが入ったブリッジもだ。
「アル、すぐに出発の準備。それとハッチを閉じて、草原にいた魔物が中に入ってこないように」
『了解』
「クレアは、僕の後ろにある席に座って。座ったら何も弄らないこと」
「は、はい!」
それからすぐに、船のエンジンが静かな音をあげて稼働しだす。
それと同時に、警報がブリッジに響いた。
「ヒャッ!な、何?」
「警報?アル、船内チェック!」
『……ハッチに何か引っかかっている、多分警報はこれだな』
「僕が見てくるよ」
僕はブリッジを出ると、通路を走ってハッチに急いだ。
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