第181話 救出作戦の準備
アーリー枢機卿たちが女神ハーテスを呼びだし、無理やり願いを叶えさせる場面をモニター越しに見ていた僕たちは、驚き言葉が出なかった。
女神が出てきただけでも驚きなのに、その女神の自由を奪い魔道具の一部としているその技術にも驚きだ。
宇宙船『ハルマスティ』のブリッジにいる僕やロージー、それにアシュリーも誰一人としてしゃべれなかった……。
しばらく呆然としていると、ロージーがしゃべりだした。
『……驚きましたね……』
その声に、僕とアシュリーが我にかえった。
「……女神って、本当に存在するんだね……」
『若旦那、どうしますか?
あの女神様は、助けてほしそうにこちらに視線を向けてましたが……』
ということは、あの女神様は僕たちが覗き見ていたことに気付いていたってことか……。
まあ、女神様だしな……。
『しかし、助けるにしても、あの元拠点の島を解放しないといけませんね……』
そうだよね、今あの島は占領されているわけだし……。
僕は気になったので、元拠点の島に仕掛けてある虫型カメラで確認してみる。
すると、人が少なくなっていた。
が、その代わり死体が増えていた。
「……これって、あの騎士たちの仕業かな?」
『おそらくそうでしょう、信者たちが暴動を起こしていましたし。
無謀にも、騎士たちに襲いかかったのでしょうね……』
う~ん、僕たちが手を出して死人が出ると星の管理人としての資質を問われるような事態には……ん?待てよ……。
「ねぇロージー、僕がシャロンの所に救援に行っている間に、荷物が届いてなかった?」
『荷物ですか?
確か、いくつかありましたがそれが何か……』
「その中に、ドームシールド発生装置が無かったかな?」
ドームシールド発生装置。
拠点の島を守るために、昔注文していたものだ。
ただ、造っている会社が、かなりの小さい会社らしく僕の手元に届くまでに、時間がかかるって注意書きがあったんだよね。
でも、注文した時は、こんな事態になるとは思いもよらなかったし、時間がかかっても手に入れておきたかったから注文したんだけど……。
結局、間に合わなかったというわけだが、これを使えないかと思う。
『……なるほど、島をドームシールドで包み催眠ガスで島にいる人たちを眠らせて、女神様を救出しようというわけですね?』
「正解!よく分かっているねロージー」
『当然です、若旦那のことで分からないことはありません』
スゴイ自身だけど、なんか怖いよ?ロージー。
でも、これで女神さまのところまでは行けるけど、問題はどうやって救出するか、何だよね。
あの装置を壊しただけでは、救出したことにはならないよね?
「女神様の救出には、ソフィアたちにも協力を仰ごうか」
『エンシェントドラゴンのソフィアさんたちなら、女神様救出に一役買ってくれそうですね』
ロージーの同意も得られたし、このことをソフィアに話して救出作戦を考えよう。
しかし、女神を利用する技術とは、ほんとすごいな……。
▽ ▽
「ワハハハッ!女神を封じるとは、えらい技術があったものじゃのう」
「ソフィア、笑い事じゃないでしょうに。
でも、確かに我らエンシェントドラゴンの知識よりも上みたいだね……」
ソフィアは感心し、セレニティーは考え込んでしまう。
ここに、二人の性格が出ているな~。
「それで、ソフィアには、女神様解放を手伝ってもらいたいんだけど?」
「ふむ、その装置を壊すだけではだめなのか?」
「見た感じ、どうもそうらしい。
会話を聞いた限りでは、契約で縛っているとか言っていたけど……」
確か、会話の中でそんな単語が出ていたような……。
「契約か、確か、精霊を契約で縛る技術があったな?」
「ああ、確か何千年か前に栄えた魔導王国だったかな?
そんな技術を確立した王国があったが、契約解除も確かあったはず……」
そんな王国が存在していたのか……。
でも、改めて、ソフィアたちって長生きなんだな……。
宇宙船『ハルマスティ』のブリッジで、ソフィアたちとは女神様解放の話をしていると、ロージーたちが入ってきた。
『若旦那、ドームシールド発生装置の設置が終わりました。
何時でも、装置を起動させて島を包むドーム型のシールドを発生させられます』
ロージー、エリー、シンシア、オリビアの四人が頑張って設置してくれたようだ。
これで、いつでも作戦を進められる。
でも、問題は女神様の解放なんだけど……。
「それでソフィア、女神様の解放はどう?」
「そのことなんじゃがな?儂らの予想では、おそらく精霊を契約で縛る魔法陣の発展させたものじゃろうと予想しておる。
じゃから、契約解除もできるじゃろう……」
……でも、魔法陣を見るまでは分からない、ということかな?
ならば、一緒に行ってもらおう!
「分かった、じゃあ、島にいる人たちが眠ったら、僕とソフィア、セレニティーは女神の救出に向かってもらうよ?
あと、様々なトラブル回避のために、ロージーとシンシアについて来てもらおう」
『分かりました、若旦那』
『お任せください、若』
ロージーとシンシアが嬉しそうに、頭を下げる。
そこへ、エリーとオリビアの寂しそうな顔が見えた。
「エリーとオリビアには、衛星軌道上のこの宇宙船から、島に近づくものを見張ってくれ。アシュリーを通して、僕に直接連絡が行くようにするからね?」
「「は~い」」
こればかりは仕方ない。
今回は、いつもは留守番してくれているロージーとシンシアの出番なのだ。
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