第179話 封印の奥にあったもの
宇宙歴4264年5月30日、この日のお昼ごろ、元拠点の島の港に新たな船が到着する。
その船から降りてきたのは女が1人。
「アーリー様、お待ちしておりました。
例のものを見つけた時から、ここを訪れると分かっておりましたので……」
「フフフ、さすがですグロウ司教。
私の力を理解しての迎え、ご苦労様です。
さっそく、例のものを見せてください」
「では、ご案内いたします。
例のものは、アーリー様の予想通り、運び出すことができませんでしたので」
「お願いします」
そう言うと、アーリー枢機卿は、グロウ司教の案内のもと例の洞窟へ。
そして、護衛の聖騎士たちが10人ほどアーリー枢機卿の後ろをついて歩く。
今だ、この島には、暴徒化している信者が何人かいるからだろう。
▽ ▽
一時間ほど歩き、目的の洞窟へたどり着くと、休憩もそこそこに洞窟の中へ。
暗い洞窟を、松明の火の明かりだけで進むグロウ司教。
幸い、足元は平らにできており、躓くようなことはなくどんどん遠くへ進む。
そして、巫女が封印されていた少し大きな部屋にたどり着いた。
「……ほう、ここが巫女様が封印されていたと思われる場所ですか」
「はい、ですが、メード司祭が発見した時はすでに何もなかったようです。
そして、われわれが、さらに奥へと通じる道を見つけました」
そう言って、グロウ司教は部屋の奥へと進み、隠し通路へとつながる大きな岩を横へスライドさせた。
大きな音をたてながら、横へ動く大岩。
「ククク……、このような仕掛けが……」
「では、進みましょうアーリー様」
アーリー枢機卿は頷くと、再びグロウ司教の案内について行く。
松明の明かりのみで、洞窟の通路を進んでいくと、目の前に階段が現れた。
その階段は、下へ続いているのだが、先が暗くて見えない。
「アーリー様?」
「グロウ司教、進みますよ?
ここまで来て、引き返すつもりはありませんからね?」
「畏まりました」
そう言うと、グロウ司教は、階段を一段一段慎重に降りて行く。
後に続くアーリー枢機卿や、聖騎士の人達もグロウ司教に続いた。
そして、慎重に階段を降りること1時間。
罠もなく、無事に階段をすべておりきることができた。
そして、降りた場所は、ドーム球場ほどの広さと高さがある空間となっていた。
「……松明では、先まで届きませんので……おい」
グロウ司教は、アーリー枢機卿に断りを入れると、後ろについて来ていた聖騎士たちを呼ぶ。
聖騎士たちがグロウ司教のもとに集まると、灯りの魔法を使うように命令した。
そして、聖騎士たちが各々別れて、魔法を使いこの場所に明かりを灯すと、この場所の全体が見えてくる。
広さはやはりドーム球場ほどあり、高さも20メートル近くある。
あの降りてきた階段の段数を計算すれば、この高さは納得だ。
そして、広い空間の真ん中に大きな透明の柱が一つ立っていた。
それは、どこまでも透明で、対面の人がはっきりと見えるほどだ。
「……このようなものは、見たことがない……」
口々に出る、驚きの賛辞。
そして、この透明な柱の意味が分からない。
他にも何かないかと、アーリー枢機卿たちは探すが、この場所で見つかったのは、この透明な柱のみ。
ならばと、アーリー枢機卿は、透明な柱に恐る恐る手で触れる。
しかし、何も起きることはなかった。
「……何も起きませんな、アーリー様」
「グロウ司教、この柱に魔力を流してみるのです」
「……畏まりました」
アーリー枢機卿が手を放した後、今度はグロウ司教が恐る恐る手で触れ、自身の魔力を透明な柱に流した。
すると、透明な柱が少し明るくなったかと思うと、文字が浮かび上がってきたのだ。
「も、文字が出てきましたが……これは、何という言葉でしょうか?」
グロウ司教が、浮かび上がる文字を見て戸惑いを見せている中、アーリー枢機卿は、目を細めて柱に浮かび上がった文字を凝視する。
「……これは、古代ガシュランド語、ですね………」
「アーリー様、古代ガシュランド語とは?」
「古代ガシュランド語とは、今残っている書物の中で、もっとも古い書物に書かれている言語です。
どのくらい昔かは分かりませんが、その書物によれば、ガシュランドの人々は神とともにあったとか……」
神とともに。
聖騎士の中には、その言葉にうさん臭さを感じたものがいたが、目の前にある透明な柱の存在が、少しだけ真実味を感じさせられた。
グロウ司教も、素直に信じられることではなかったが、手で触れている透明な柱が少しだけガシュランドの存在を、信じさせた。
「あのアーリー様は、この柱にある文字を読めますか?」
グロウ司教の質問に、アーリー枢機卿はニヤリと笑うとしゃべりだす。
「ええ、私の能力のおかげで、古代ガシュランド語も理解できます……。
………なるほど、では、ここに触れて『〇〇〇〇』」
アーリー枢機卿が、透明な柱に表示された、古代ガシュランド語を理解し、その指示に従って手を触れ、魔力を流しながら古代ガシュランド語をつぶやく。
すると、透明な柱に、魔法陣らしきものが浮かび上がり、その透明な柱を中心に六つの魔法陣が、囲むように地面に光とともに浮かび上がった。
「な、何が!」
「これは、どうなっているんだ?!」
「グロウ司教様っ!」
「ア、アーリー様!これは一体!!」
地面に浮かび上がる光の魔法陣に、透明な柱にも出た魔法陣を見て、聖騎士たちとグロウ司教が慌てだす。
そんな中、アーリー枢機卿だけが、落ち着いていた。
遅れましたが、更新再開します。
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