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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
神に触れて

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第175話 拠点放棄




白一色の服を着た司祭は、宗教国家にある教会の廊下を歩いていました。

その顔は、苦虫を噛み潰したような顔で傍から見ても、何かまずいことが起きたんだと分かります。


そして、廊下の端にある扉の前で立ち止まります。


「失礼します、南の島についてお話があります」


ノックもしないで扉を開けると、開口一番に出た言葉は南の島についてでした。

そして、部屋の中に入った司祭は驚いたのでありました……。




「アーリー様、先ほどから何なのですか?その本は……」

「あなたの行動が記された本ですよ。ねぇ、アーリー様」


そう言ったのは、正面の机の横に立っていた男性。

出来る秘書の様な立ち居振る舞いだ。


そして、正面の机の向こうで大きな椅子に座り本を読み上げていた女性。

この女性こそ、今名を呼ばれたアーリー枢機卿。


「フフフ、グロウ司教、いじわるはいけないわよ?

ところで、メード司祭。南の島について何かあったの?」


「お戯れを……。

もうご存知のはずです。南の島に町ができていたことに」

「何と、南の島に町だと?

アーリー様、すぐに聖騎士団を派遣いたしますか?」


「その必要はないでしょ?ね、メード司祭。

あなたはすでに、手を打ってあるのでしょ?」


妖艶なアーリー枢機卿の笑みが、メード司祭の背中に冷たい汗を流させる。

失敗は許されないということだろうか?


「私にお任せください。

すぐにあの町を手に入れて御覧に見せます」

「よろしい、次の報告を待ちましょう」


「ハッ」


そう言うと、メード司祭は部屋を出て行った。

後に残ったアーリー枢機卿は、笑みを浮かべながら本を読み始める。

側に立つグロウ司教は、司祭が出て行った扉を眺めていた。



どれくらい見ていたのだろう、アーリー枢機卿に声をかけてもらい、ようやく我にかえる。


「グロウ司教、南の島の町が心配なの?」

「アーリー様、あの島には例のものが……」


「フフフ、大丈夫よ。

島に住んでいたのもの達は、例の物を見つけてないわ。

それに、例の物を見つけられれば、すぐにわかるもの……」


アーリー枢機卿は、落ち着くようにグロウ司教をなだめるが、司教はソワソワと落ち着く様子はなかった。


「……アーリー様、メード司祭の策が失敗した場合を……」

「フフフ、いいでしょうグロウ司教。

あなたは独自に、やりたいようにやりなさい。


ただし、メード司祭の邪魔はしないように、ね?」

「ハハッ」


そう言って頭を下げると、部屋を急いで出て行った。


「まったく、みんな心配性ね~。

例のものがあの島から見つかろうと、復活することはないでしょうに……」


そう扉を見て言うと、すぐに手元の本に視線を移す。

そして、本を開くとページに、次々と文字が走り物語が記され出す。


妖艶な笑みを浮かべながら、アーリー枢機卿は本を読みだす。


「フフフ……」




▽    ▽




宗教国家の教会で、話し合いが行われていたころ、拠点の島の町『ホリック』では、暴動が起きていた。


きっかけは、もともとの町の住民をセーラの住む屋敷に集めて、軌道エレベーターに乗せるはずだったが、セーラの屋敷から軌道エレベーターの塔までの間に、町にいた信者に見つかってしまったのだ。


信者たちは、セーラが逃亡すると騒ぎ立て、軌道エレベーターのある塔まで押し寄せていた。


「セーラ様!早く、塔の奥へ!」


塔の入り口で何とか止められる信者たち。

しかし、暴動の勢いは止まらず、信者たちがどんどん集まり始めている。

そして、投石が始まり、塔の外壁を棒でたたき始めた。


「な、なんてことを……」

『セーラ様!早く中へ!もうすぐ出発です!』

「し、しかし、町が……」


『レオン様の命令です!住民は上へ避難するようにと!』

「くっ……」


セーラは、下唇を噛むと軌道エレベーターへ飛び込んだ。

それを確認し、軌道エレベーターは出発する。



上へと昇っていく軌道エレベーター、それと同時に軌道エレベーター施設の入り口は厚い扉で塞がれていく。

信者たちが、投石をし、棒で殴りかかっている外壁はどんどん崩れるものの、その中は壊されることはない。


下に見える信者たちの姿。

数えるのもばからしくなるほどの数の人たちが、塔に押し寄せている。

そして、港からはまだまだ信者たちが上陸してきている。


「……これから、『ホリック』はどうなるの?」


下の様子を見ながら、セーラは涙を流していた。

そんな様子を、軌道エレベーターに勤めていたアンドロイドの女性が声をかける。


『セーラ様、レオン様が力を貸してくれます。

今は、コロニー『楽園』で時を待ちましょう。

幸い、レオン様がお集めになった人たちは、無事なのですから……』

「う、うう……」


声を押し殺すようにセーラは泣いた。

自分の無力さに、仲間の無力さに、そして信者の恐ろしさに……。




▽    ▽




軌道エレベーターが、コロニー『楽園』側の出入り口に到着し、セーラがエレベーターから降りると、出入り口の広場で奇妙な光景が。


「……なんですか?これは」

『……おそらく、コロニー『楽園』の光景と、窓から見える宇宙に驚いているものかと思います』

「宇宙、ですか……」


そう呟くと、セーラは上を見上げて窓の向こうの宇宙を確認した。

そして、その広大な暗闇に浮かぶ『青い星』の姿に、目を奪われてしまった……。








第175話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

新作『駅前に冒険者ギルドが出来ていた』をよろしく。

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