第171話 怪しい追跡宇宙船
宇宙歴4264年4月21日、惑星『ローフ』の月基地からようやく解放され、僕の拠点のある『青い星』へ帰還の途についていた。
『若旦那、シャロン様が手伝ってほしそうにしていましたけど?』
宇宙戦闘艦『マーリン』のブリッジの艦長席に座る僕に、アンドロイドのモリーが質問してくる。
どうやら、モリーはこの短い間にシャロンのことを気に入ってしまったようだ。
「惑星『グラニド』の件?それこそシャロン達が中心となってしなきゃいけないことだよ」
『そうですよモリー、シャロン様とは友人関係なんですから、これ以上は友人の範疇を超えます』
『そうねぇ~、シャロンちゃんばかりを優先するわけにもいかないわよね~』
シャロンとエリーも、僕と同じような意見でモリーをいさめた。
『オレオン銀河』をまとめる、そのためにシャロンは一生懸命やっているんだから、今回の事も自らの力で解決してほしいね。
それに、僕たちが駆けつけることになったのだって、シャロンに助けを求められたから、友人として駆けつけたんだしね。
これ以上は、僕たちが手を貸す必要はないよ。
「それにモリー、忘れているかもしれないけど、僕は星の管理人。
本来は、『青い星』の管理をしている者なんだよ。
これから帰って、書類の山や『青い星』での緊急事態に備えないとね」
『……そうでした、差し出がましいこと言ってすみませんでした、若旦那』
「うん、わかってくれたならいいよ」
モリーは少し落ち込んでしまったようだ。
でも、僕たちは万能じゃない。シャロンのことで手を貸していって最後まで面倒見る必要はないんだよ。
もしそれで、本来の『青い星』のことが疎かになったら、目も当てられないだろう。
今の僕にとって優先すべきは何なのか。
それが分かっていれば、道を誤ることはまずないよね。
▽ ▽
宇宙歴4264年4月22日、『青い星』へ帰還する航路の途中で、おかしな宇宙船を発見する。
それを見つけたのは、オーリーで、航路上にスペースデブリなどが無いか調べている時だった。
「レオン君、後方100宇宙キロの位置をずっとついて来てる宇宙船を発見」
艦長席の隣に座るオーリーが、手元のモニターを見ながら報告してくる。
……さっきからモニターを弄っていたのは、それを確かめるためか。
「アシュリー、後方の宇宙船の確認。
あと、前の大型モニターに映して」
『分かりました』
大型モニターに映る、後方にいる宇宙船。
望遠などを使いどんな宇宙船なのか、さらに大きく映す。
「……どこかで見たことあるんだけど……」
はて?どこで見たかな、この宇宙船。
確かに、見覚えのある船体をしているんだけど……。
『……若旦那、これ、『グラニド』の宇宙船だよ』
「……そうだ、確かにコロニーを襲った『グラニド』の宇宙船だ…」
前回、亜空間ゲートの側にあるコロニーを占拠した『グラニド』の宇宙船だ。
でも、何で僕の宇宙船の後をつけるようなまねを?
「オーリー、この宇宙船、いつから僕たちの後を?」
「はっきりいつからは分からないけど、この亜空間ゲート近くの宙域に入ってからはずっとよ」
僕たちは、惑星『ローフ』のある太陽系宙域から、『オレオン銀河』の外周に沿って進み、亜空間ゲートがある宙域に入り、そこから、亜空間ゲート側、亜空間ゲート近くの観測所衛星、そして、『青い星』『緑の星』がある太陽系宙域に入る。
今は、亜空間ゲート近くの観測所衛星を過ぎたばかりだ。
「他に『グラニド』の宇宙船は、発見できた?」
『いえ、現在、観測所衛星を利用して索敵しましたが見つかりません。
どうやら、単独と見て間違いありません』
『となると~、落としちゃった方がいいかな~』
「エリーちゃん、それはやりすぎでしょ?
向こうは何もしてないんだし……」
『私も、エリーの意見には賛成ですね』
「ロビンも、エリーちゃんの味方なの?」
『オーリー様、この宇宙で理由もなく後をつける行為は、敵対行為以外の何者でもありませんよ』
そうだよね、困っているなら声をかければいいことだし、通信チャンネルはオープンにしてあるんだから。
通信ができない状態なら、何かしらのアクションがあってしかるべきだ。
長時間後をつけるということは、こちらを探っている以外ないよね……。
「……それなら罠にかけます。
アシュリー、『ワイヤーネット』ミサイル用意!」
『了解、若旦那!『ワイヤーネット』用意します!』
「レオン君、『ワイヤーネット』ってアステロイドベルトなんかで小惑星を集めるときに使う?」
「そう、それを使って罠にかけるんだよ」
オーリーが、どういうこと?って顔をして聞いてくる。
うん、結構かわいい顔だよね、女の子のこういう顔。
『若旦那、用意完了!』
「二発後方へ射出!後方の宇宙船に『ワイヤーネット』が絡むまで、このまま航行します」
『『ワイヤーネット』射出!』
『進路このまま、気持ち航行速度を落とします!』
うん、操縦を担当しているエリーが、いい仕事している!
それに気が付いているかな?
『ワイヤーネット』ミサイルを、発射じゃなくて射出っていったことに。
罠を仕掛けるんだから、攻撃してはダメなんだよね。
だから、射出して近くを航行した時反応して捕まえる。
……完璧だね!
『『ワイヤーネット』にかかりました!』
よし、では後をつけていた理由を聞きに行こう!
第171話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




