第166話 植民地惑星の統治
宇宙歴4264年4月7日、『オスティア星』の人を助けて1週間がたった。
この頃になると、カスミさん以外の人達もようやく落ち着いて話ができるようになっていた。
それぞれで質問すれば、答えられるところだけは答えてくれる。
シャロン側に、まだ信用がないからこんな受け答えになるのだろうが、名前が分かったことはありがたかった。
なぜなら、『オスティア星』に生存者がいることを知らせたからだ。
実をいえば、あの戦いから『オスティア星』と音信不通になっていたわけではない。
こちらから呼びかけ、返事を待っていたのだが、何も答えてくれることはなかった。
だが、生存者がいることとその名前を知らせたところ、ようやく返事が返ってきた。
三日後、月の宇宙港で会合を持つこととなった。
その時、生存者を引き渡してほしいと……。
シャロンは、その返答に少し違和感を覚えたため、条件を出すことにした。
それは、生存者の家族を連れてくること。
しばらく『オスティア星』側は黙っていたが、了承してくれた。
▽ ▽
「昨日、ようやく『オスティア星』と連絡が取れました。
あなたたちの迎えがきてくれるそうです」
シャロンは、生存者の五人を目の前にして報告する。
当然、五人は驚いていた。
『オスティア星』の政府が、自分たちの帰還を了承するなんて、って男性が一番驚き、女性たちも、私たちは、植民地出身なのに…、と困惑している。
丸坊主の男性は、年齢27歳の技術士官で宇宙戦艦『宝竜』に上官していた。
名前は『タカシ』君、『オスティア星』出身。
そして、長い黒髪を後ろで三つ編みにしている女性が『カスミ』さん、『オスティア星』出身。
年齢は教えてくれなかったが、見た目で20代前半といったところ。
宇宙戦艦『神苑』の艦長だった。
この二人以外が、『オスティア星』の侵攻によって植民地となった星の出身だ。
五人の話では、植民地出身の人を捕虜交換や人質解放などで親身になることはないそうで、今回の引き渡しは、タカシ君とカスミさんのおかげということになる。
『……同じ政府のもとで生きているのに、差別されているの?』
ロビンが、女性たちに質問する。
僕たちの政府の統治の仕方は、『オスティア星』とは全く違うやり方だからな。
不思議に思って質問したんだろう。
植民地出身の三人の女性たちは、お互いの顔を見て、ロビンに向き直って答えてくれた。
『政府の植民地統治のやり方は、統治する土地に領主を置いて統治するやり方です。
税金や法律、そして教育はすべて領主が決めること。
『オスティア』政府が求めるのは、毎年軍へ入隊させる人数だけで、後は領主の自由にされています。
だからこそ、領主によって差別が酷いそうです……』
そう少し辛そうに話すのは、『レン』さん22歳。
髪と瞳の色がブラウンで、僕の知識で答えるなら外見はイタリア系の女性ってとこだ。
ついでに、紹介すると、もう1人の女性は『ユミナ』さん25歳。
髪が金髪で瞳はブラウンだ、僕の知識で外見を答えるならイギリス人て感じかな。
最後の女性は、『ナナオ』さん30歳。
髪が金髪で瞳はブルー、僕の知識で答えるならアメリカ人だね。
この三人が植民地惑星の出身だそうだ。
もちろんそれぞれ、違う植民地だった。
『しかも、一つの植民地惑星に、何人もの領主がいるからそれぞれで統治のやり方も違うし教育のやり方も違う。
中には、やりたい放題な領主もいるとか……』
『勿論、そんな領主は『オスティア政府』に報告すればすぐに解任されるんだけど、賄賂が横行していてね、政府に届く前に握りつぶされることがほとんどだそうよ』
三人は、俯いて辛そうにしている。
『……『オスティア政府』もそういう連中はいるよ。
賄賂を受け取って、植民地惑星に領地を持ちたい連中の言いなりになっている政治家。
戦争がしたいばっかりに、新しい植民地惑星を探して報告してくる軍関係者とかな……』
タカシ君が、腕を組み独白するように政府の実情を暴露する。
『実をいえば、今回の惑星『ローフ』への侵攻作戦も、そういう連中が持ってきたものだったんだ』
『『ええっ!』』
『俺は技術士官だから、軍上層部に知り合いがたくさんいる。
その知り合いの軍上部の人から、飲みに誘われてよく愚痴を聞かされていたよ。
……その人が、惑星『ローフ』への侵攻作戦は気をつけろって忠告してくれたんだ。
あの時は、最新鋭の宇宙戦艦に上官出来る楽しみで、あの人の忠告を流してしまったけど、今回の敗北でようやく分かったよ。
でも、確か今回の作戦の発案者も、あの150隻の中の一隻に乗っていたはずだから、今ここにいないってことは……』
『死んだってことでしょうね……。
皆の人生を狂わせておいて、自らは死んでしまうなんて……』
カスミさんは、思いっきり拳を握り締めて怒っているようだ。
他の女性たちも、同じように悔しい顔になっていた。
「とにかく、迎えが来ることになったわ。
帰るかどうかはあなたたち次第よ。それに、向こうの政府には家族を連れてくるように言っておいたわ」
『家族を?!』
『俺たちのか?!』
『嘘……』
五人とも驚いて、シャロンを見た。
「嘘じゃないわよ、向こうも少し考えていたけど了承したから、迎えに来た時会えると思うわ。
その後帰るかどうするかは、あなたたちが決めればいいと思うわよ?」
シャロンの言葉に、五人とも考え込んでしまった。
迎えが来るまでの日数、こちらの力を学ぶ予定だったらしいけど、どんな答えを出すのだろうか?
……でも、帰らない人はいるのかな?
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