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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
オレオン銀河の反乱

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第164話 医療事情と感情




今の時代での医療といえば、前にも説明したと思うけど『再生医療』が主になっている。

そのため、医者がその手で医療行為するのは、軽傷者か病人ぐらいだろう。


重傷者や重病人は、医療カプセルに入ってもらい再生液の中に浸かり治してしまうのだ。


身体のあらゆる部分の欠損には、患者の細胞から調べて、やはり、医療カプセルで再生させて治してしまう。


このように進んだ医療形態により、医者が必要なくなったかといえば、そんなことはない。

医者が必要な場所や人が、無くなることはない。


最近は特に、精神的ケアのできる医者が必要とされているようだ。


だからだろうか、最近は医者といえば女性の仕事と思っている人が多いようだ。

……僕は男性の医者の方が安心するんだけどね。




惑星『ローフ』の月にある宇宙港の側の病院は、月面の地下にある。

停泊ステーションから、月の宇宙港へ定期的に宇宙艇が運んでくれる。


宇宙艇は、小さなバスのような宇宙船だ。

中に乗れる人数は、20人から30人ほど。今回は、僕とオーリーとユリアさん。

シャロンにケニーとアンドロイドのロビンとモリーの7人だけだ。


「シャロン、病院に運び込まれた生き残りの詳細は分かってるの?」

「どう?ケニー」


「少しなら報告されています。

まず、軽傷者はいません。5人とも何らかの生命危機に陥っていました。

それと、男性が1人で、右腕と両足の膝から下がありませんでした。


女性4人は、それぞれ軽いもので両足が切断されていた者、左足がなく身体の左側が重度の火傷を負っていた者、全身を火傷して両腕が切断されていた者、腰から下を切断された者と、何れも現在医療カプセルで治療中です。


回復まで、約三日ほどかかるようです」


ケニーさんの報告に、僕たちは少し驚いていた。

特に、オーリーとシャロンはお互いの手を繋いで苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「……再生医療が確立されているとはいえ、言葉もないわね」

「……仕方ない、私たちも命を危機にさらされたのだから……」


シャロンは、ケニーさんと襲撃を受けた側だ。

技術で天と地ほどの差があるとしても、一歩間違えれば死んでいたかもしれない。


襲撃者たちの治療には、考えさせられるものがあるな……。




▽    ▽




月の宇宙港から、病院へ行くと担当医の女医さんが案内してくれた。

名前はサクラさん。

どこか日本人を思い起こさせる、大和なでしこな容姿をしている。


長いストレートの黒髪は、後ろでまとめてあるとはいえ綺麗だ。

天使の輪が、しっかりとあったよ。


「シャロン様が、こちらに来るとは珍しいですね」

「そうね、私たちは基本生体強化しているから、病院とは無縁なのよね」

「私も、病院は検診の時以来かな……」


シャロンとオーリーが、女医のサクラさんに病院に来ることが珍しいと思い返している。

そうなんだよね、この時代の人間って生体強化が基本なんだよね。


生体強化の利点は、寿命が延びる・病気やケガになりにくい・身体能力が上がる。

この三点が主だ。


特に寿命が延びるということは、老化しにくいということ。

だから、年齢1000歳という人もいるんだよね。

まあ、これにも限度があって、大体2000歳を超えると人間の脳が追いつかなくなって自我崩壊を起こして死に至るんだ。


何事も、ほどほどということだろう。


あと、病気に強くなったり身体能力が上がってケガをしにくくなったりする。

でも、これにも限界はあるわけだから、生活に困らない程度で普通は大丈夫だな。


例外は宇宙空間を仕事場としている人か……。


知っている人もいるだろうが、宇宙空間では筋力や体の衰えが激しい。

定期的に運動をしたり、食事に気をつけなければならない。

疑似重力を発生させることができるようになったとはいえ、宇宙遊泳はよくやることだ。


だから、すぐ運動不足になる。

そこで、生体強化ってことになるんだよね。


生体強化は、大体3歳ごろから受けることができる。

僕も、3歳から受けて生体強化してあるから宇宙での仕事をこなすことができるんだ。




「こちらから、覗いてください。

患者の身分の都合で、こんな隔離することになっていますが……」


生体強化について考えていたら、いつの間にか目的の場所に到着していた。

そこは、隔離病室の並んだ病棟だ。


大きな窓からのぞく形で、病室内を見ることができる。

中には、医療カプセルが並んで置いてあり、一つの病室に5人全員を入れたようだ。


まあ、5人分の医療カプセルが余裕をもって並べられる広さがあるし、圧迫感はないだろう。

縦3メートル、横2メートルの医療カプセルが1メートル間隔で並べられ、カプセルの窓から、中に入っている人の顔が見えた。


「サクラ先生、医療カプセルの窓が開いているのと開いてないのがあるけど……」

「……窓を閉じているのは、火傷を負って再生中だからだよ。

火傷が治れば、窓を開けて外の光を取り込む予定だよ」


そういえば、生き残りの中に火傷の人がいたね……。

……周りの空気が、少し微妙になった気がする。

……失敗したな……。



いたたまれなくなり、周りを見渡すとロビンとモリーが食い入るように病室の中を見ていた。

二人の表情が、少し曇っているみたいだ。


……同情しているのかな?

それとも、回復してほしいのかな?

ん~、最新式のアンドロイドの感情は分からないな……。








第164話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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