第16話 商業ギルド
宇宙歴4261年10月10日、宿の朝食を済ませた僕たちは資金調達のために商業ギルドへ向かうことにした。
どこかの商会へ行って持っている宝石類を売ってもいいのだが、足元を見られたくはない。
ならば、商業ギルドへ行って買い取ってもらうというのも一つの手ではあるだろう。
商業ギルドの隣に建つ冒険者ギルドは、この朝の時間帯は冒険者が大勢いた。
おそらく、少しでも金になる依頼を探して朝早くから並んでいたのだろう。
その辺は、僕の知っている小説と変わらないな……。
「すごい人だな、アル」
『コナーたちが、朝の冒険者ギルドは大変じゃとか愚痴をゆうておったな……』
「この人混みは、大変そうだ」
人がいっぱいの冒険者ギルドを横目に、僕たちは隣の商業ギルドへ入っていく。
こちらも人が大勢いて、あちこちで商談などをしてはいるが冒険者ギルドより余裕があった。
僕たちは、ギルドのカウンターに行き受付嬢に今日の用件を伝える。
「ようこそ商業ギルドへ、ご用件は何でしょう」
「知り合いの商会がいないので、このギルドで宝石を買い取ってもらいたいのですが」
「少しお待ちください、担当のものを呼びますので……」
このギルドもなかなかだな、今の受付嬢は僕の容姿で対応を変えたり下に見たりはしてこなかった。
少しアルと雑談をして待っていると、受付譲より年上で艶のある女性を連れて戻ってきた。
「お待たせしました、こちら宝石担当のジュリアスと申します。では、商談のための部屋を用意いたしましたので、こちらへどうぞ」
ジュリアスという女性が小さく頭を下げると、僕たちも小さく頭を下げて部屋へ移動した。
「では、向かい側の席へお座りください」
受付嬢はそう言って、僕とアルを机を挟んだ向かい側の席へ誘導する。
僕たちはそれに従い、向かい側の席へ座るとさっそく受付嬢が自己紹介を始めた。
「まずは、今回の商談のお手伝いをさせていただく受付嬢のミリーと申します。こちらは先ほど紹介しましたが、商業ギルドの宝石担当のジュリアスです」
「僕はレオンといいます、こっちは一緒に旅している爺ちゃんのアル」
『初めましてじゃ』
「それではレオン様、売りたいという宝石を見せてもらえますか?」
「その前に、僕から質問いいですか?」
話の流れを遮られて受付嬢のミリーは少し戸惑うが、僕はお構いなしに質問した。
「まず、何故、僕のような子供が持ってきた宝石の売却話を真剣に信じたの?」
ミリーは少し驚いたが、すぐに気持ちを落ちつかせ答えた。
「それはギルド規約に、どんな人にも平等に接しろとありますから。さらに、依然レオン様ぐらいの貴族の子供が訪ねてこられて宝石などを売却したいとの申し入れがありましたが、当時対応した受付嬢が子供だからと言って取り合わず後でその貴族と揉めたことがありましたから……」
「なるほど、経験から相手が子供だろうとちゃんと対応するということですか」
そんな過去があるなら、相手が子供といえどちゃんと対応はするわけか。
そのうえで、いたずらだった時の対処法もありそうだな……。
「では、売りたい宝石を見せてもらえますか?」
「分かりました」
僕は持ってきた鞄に手を突っ込み、そこから亜空間倉庫へ繋げて宝石類をいくつかまとめてある布袋を1つ取り出す。
勿論、傍から見れば鞄から布袋が一つ出てくるように見えるわけだ。
「この袋に入っています」
「では、拝見いたします」
受付嬢のミリーが袋を受け取り、その場で袋の口を開けて中身を取り出す。
布袋の中には、指輪が5点、腕輪が5点、イヤリングが2点、髪留めが2点の合計14点が入っていた。
宝石担当のジュリアスが一点一点鑑定するように、ゆっくりじっくり見ていく。
隣のミリーも、いくつかの宝石に目が奪われているようだ……。
そして一時間ほど経ったころ、ジュリアスは宝石の鑑定を終えた。
「……どれも素晴らしい意匠だわ、斬新でありながら宝石をより美しく見せることができている。私はこんなに宝石を美しく見せれる削り方は知らなかったわね」
「それで、価値としてはどうなのジュリアス……」
「明後日からのオークションに出せば、かなりの値段になるわね。私としてはここでギルドが買ってオークションにというのがお勧めね」
ミリーは、少し考えて僕たちに取引を持ち掛けた。
「レオン様、この宝石類はすべてこちらで買い取らせてもらえませんか?」
「その前に、オークションというのは?」
ミリーは少し渋い顔をしながらも、オークションについて説明してくれた。
「この町で、明後日より開催されるオークションのことです。この国の内外からも商品が集まり、買い手の言い値で買い取ろうとするものです。
一つの商品により高い値段をつけた人が買い取れると言ったもので、私どものギルドもいくつか出品させてもらう予定です」
なるほど、この宝石を僕から買い取ってオークションで儲けようということか……。
「そのオークションですが、僕も参加できますか?」
「へ、あ、はい、それはできます。参加受付は当ギルドでしていますから……」
オークション、面白そうだ。
ロージーたちに何かお土産はないかと思っていたんだよね……。
「あの、出品ではなく参加ですか?」
「ええ、僕たちはすぐにお金が欲しいんです。オークションに出品して落札されても手元にお金が届くのは時間がかかるでしょ?」
「それはまあ、手数料や出品料などいろいろ引いてお渡しということになりますから……」
「だから、今商業ギルドにこの宝石を売って、オークションに参加したいんですよ」
「……分かりました、ジュリアスさん査定額を教えてください」
ジュリアスはミリーを見て、小さく頷く。
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