第159話 オレオン銀河の片隅で再び
シャロン・アブル・ロスティックが、緊急通信で助けを求める一日前の、
宇宙歴4264年3月25日。
この日、シャロンが『オレオン銀河』をまとめるために与えられた惑星『ローフ』に、2隻の宇宙戦艦が到着した。
この宇宙戦艦の出身星は、『オスティア』という文明惑星だ。
『オスティア星』は、地球人類が宇宙に出て約3000年たってから宇宙に出てきた人類だ。
地球人類からすれば、宇宙人であり、地球人類と同じような姿をしている。
宇宙に出るのが遅かったせいだろう、到着した宇宙戦艦は、地球人類からすれば何世代も前のものに見える。
だからと言って、バカにする地球人類はいない。
なぜなら、地球人類が宇宙に出た時も、別の宇宙人が地球人類を温かく迎えてくれたおかげだ。
シャロンは、月の宇宙ステーションに接岸している宇宙戦艦を見下ろしていた。
「ようやく『オスティア星』が、話し合いに応じてくれましたか……」
「『オスティア星』は、宇宙に出ていろいろな生命惑星を植民惑星にしていますから……」
「ええ、でもそれを咎めることはしませんよ。
私たちは、征服ではなくまとめることをするのですからね……」
そう、私に課せられた使命は、銀河をまとめること。
決して、銀河統一ではないのだ。
だが、このまとめることが難しい。
まずは、話し合いから行うのだが自分たちの住む星に、宇宙人が訪ねて来て仲良くしましょうといっても、素直に友達になる人類はいない。
必ず、自分たちの利益になることを要求してくるのだ。
だが、私たちは現状を壊して仲良くなろうとは思わない。
なぜなら、その星にはその星の成長スピードというものがあるからだ。
たとえ、間違った未来に、破滅の未来に向かっているとしても私たちは手を出して助けることはしない。
ただ、仲良く……いや、知り合うだけかな。
宇宙には私たちがいますからね、と知ってもらうだけか……。
おかしな話ではあるが、私たちとまともに相手できるようになるのは、人類が外宇宙に出れる力を持ったときだろう。
その時、改めて付き合い方を話し合うのだろう。
「しかし、『オスティア星』はすでに外宇宙へ航行可能な力を持っています」
「ええ、ですからこれからの付き合い方を話し合うのです」
ケニーは、一抹の不安を抱いていた。
『オスティア星』は軍政治が進んでいて、人類が住めるような生命惑星を次々とその手に納めている。
さらに、他の宇宙人類の住む惑星にも、我が物顔で攻め込み植民地惑星化している。
その植民地惑星の扱いは、辛辣であるとの情報も得ていた。
そんな『オスティア星』との話し合いだ。
何が起きるか、分かったものではない。
シャロン様だけは、何としても助けなければ……。
▽ ▽
月の宇宙ステーションにある会議室に、『オスティア星』の使者の三名の男性が通された。
そして、それを迎える私とケニー。
宇宙港で、私の姿を見た時、態度と表情が少し変わったが、今は要人相手の態度と表情になっている。
「どうぞ、お座りください。
この度は、私どもの要請にお答えいただきありがとうございます」
『いえ、我らよりも先に宇宙に進出した方の要請、受けないわけがありません。
それよりも、返答が遅れて申し訳ない』
顔は笑顔をしているものの、目は笑ってなかった。
こちらを警戒しているのだろう。
「いえいえ、いきなり私どもから話し合いの要請をすれば、警戒して当然です」
『……それで、私どもとどのような話し合いを?
こう言っては何ですが、私どもの行動を咎めるつもりなら……』
「ええ、それは戦争につながる。それは分かっています。
今回は、私どもと友好関係を結ぶことができればいいのです。そして何れは、銀河の主要生命体を集めて連合のような組織を作れれば……」
『銀河連合、ですか……』
「ええ、この銀河の外にはさらに多くの銀河が存在します。
そこには私たちの手が及ぶものと、及ばないものとがありますので、この『オレオン銀河』でまとまって外銀河と友好を結べればと……」
『オスティア星』の三人は驚いているようだ。
今いる銀河の外に、まだたくさんの銀河がある事や、そのたくさんの銀河の一部に目の前の者たちの手が入っていることに……。
三人は、しばらく下を向いて考えていた。
そして、三人の中の一人が意を決したように話をしてくれた。
それは、これから起きる『オスティア軍』による作戦。
この宙域へ『ワープ』で乗り付け、一気に襲撃をして星を乗っ取る計画だという。
襲撃する宇宙戦艦の数、150隻だそうだ。
作戦の決行は、すでに始まっているとのこと。
そして、警報がけたたましく鳴った!
「シャロン様!」
「すぐに避難します!あなたたちも、自分の船へ避難しなさい!」
『わ、我々を、逃がすのですか?!』
『オスティア星』からの使者の一人が立ち上がり、驚いた勢いで私を咎める。
「……おそらく、あなたたちは宣戦布告の使者のつもりで来たのでしょう?
ですが、私たちはその使者を殺めるつもりはありません。
……それに、そんなやり方では、この銀河を支配なんてできませんよ?」
『そんなことはありません!
我が『オスティア』は、銀河統一を掲げて動いています!
ここを落とし、惑星を植民地とします。そして、ここにある技術を我らの物に……』
私を睨むように、座ったままの端の男は反論する。
そして、最後にニヤリと笑ったのだ……。
「シャロン様!」
ケニーに腕をつかまれ、会議室を出ると外が見える大きな窓から、この宙域に飛んでくる無数の宇宙戦艦を見た。
だが、この宇宙ステーションには、無人戦闘艦が配備してある。
しばらくは、それで持つはずだ。その間に、星間軍に救援要請を出し、レオン君に連絡をしなければ……。
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