第158話 戦争の行方
宇宙歴4264年3月26日、『緑の星』の衛星軌道上にある宇宙ステーションのモニタールームに、レオンとオーリー、そしてロージー達アンドロイドが揃っていた。
また、その場には『緑の星』に永住している、ルルとロロの二人も参加している。
「『ロストール王国』が、二日も持たないで落ちてしまうとはね……」
「私たちも、この報告書を受け取って驚きました」
ルルとロロが、手に持っている報告書を見ながら話している。
また、レオンをはじめとした全員も手にした報告書を読んでいた。
『ジルバ帝国』と『ロストール王国』の戦争は、『飛行戦艦』の投入によりわずか二日で決着した。
投入された『飛行戦艦』は、帝国側60隻、王国側20隻。
『飛行戦艦』を最初に開発した『ロストール王国』が、『飛行戦艦』の数が少なかった理由は、初期の物を開発した後、改良を繰り返していたためらしい。
結果、『飛行戦艦』の数が多い帝国側に数の力ですべての『飛行戦艦』を落とされ、王都を占拠され、『ロストール王国』は降伏。
今回の戦争のきっかけとなった宰相を公開処刑し、王族を帝国の公爵として女帝スカーレットに忠誠を誓わせた。
このことにより、『ロストール王国』は滅び、『ジルバ帝国』となった。
「しかし、『ロストール王国』が無くなって『ジルバ帝国』の領土になったとなると、挟まれた三国がどう出るか、だよね」
『はい、帝国とどう接するかで、今後が決まるでしょう』
『最終的に、帝国による大陸統一、なんてこともあるわけですね』
僕としては、どちらでもいいんだけどね。
とにかく平和になれば、発展していくだろうし……。
そんな話し合いをしている時に、通信が入ってきた。
『若旦那、シャロンさんから通信です。かなり急いでおられるようです』
「シャロンから?何だろうね。モニターに出して」
『はい』
前面のモニターに、シャロンの顔が映ると、すぐに喋り出した。
『よかった、繋がった!大変よレオン君!ピンチなの!すぐに助けに来て!』
「とりあえず落ち着いて!何があったか…」
『そんな暇ないのよ!すぐに持てる戦力をもってこっちに来て!この『シャロン様!ここは退避です!すぐに脱出艇へ!』…分かったわ!』
そのまま通信は遮断された。
かなり切迫していたことだけは、理解できた。
『どうしますか?若』
「レオン君、シャロンちゃんが助けを求めてきたんだよ?助けに行くでしょ?」
「……ロージーは、『青い星』の管理代理をお願い。
ルルとロロは、『緑の星』の今後の動向を」
「「分かりました!」」
ルルとロロの返事と一緒に、ロージーは頷いた。
「僕と一緒に行くのは、エリーとアシュリーとモリーにお願いする。
後は…「ちょっと待って」」
そこにオーリーから待ったがかかった。
「私も行くわよ。シャロンちゃんは友達だし、私だって助けになるわよ!」
「……分かった、オーリーもついて来て。それと、ユリアさんとロビンも追加で人数に入れる」
「分かっているわね、レオン君」
「それじゃあ、すぐに出港の準備を!」
▽ ▽
『緑の星』にある『スプリード王国』の王都にあるお城の一室。
ここで、リミニー女王がグレーマンからの報告書を見て、震えていた。
「『ロストール王国』が落ちたというのか……?」
「はい、帝国の『飛行戦艦』の数の前に……」
「『ロストール王国』は、開発国だぞ?『飛行戦艦』でも、先を行っているはずだろう」
「物見の話では、確かに『飛行戦艦』の新型と呼べるものがあったそうです。
しかし、帝国の物量に押され、あえなく撃沈したと……」
「そんなばかな……」
リミニー女王は、青い顔をしてその場に座り込んでしまう。
グレーマンは、座り込んだ女王に手を差し伸べるが、女王がそれを拒否。
そこで、話を続ける。
「それで、今後どうするのかを三国で話し合わないかと『バンガー王国』の国王陛下から打診がきておりますが……」
「……話し合いも何も、東西を帝国に挟まれて何ができるというのか……」
「陛下、帝国との『休戦協定』はあと半年もありません。
協定が切れれば、再び戦争状態となります。
今後の王国の未来を考えるのであれば、三国で話し合い同盟を結ばれてはいかがでしょうか?」
「……帝国と同盟、ですか?」
「はい、『ロストール王国』の王族は帝国の公爵位をもらって生きながらえております。陛下も帝国の貴族位をもらって生きのびるか、それとも帝国と同盟を結ぶかしかないかと」
リミニー女王は、青い顔のまま立ち上がり考える。
これから、この国はどうしていけばいいのかを……。
そして、5分ほどじっくり考えると、女王の顔色は元に戻っていた。
「決めました、すぐに三国会議を開きます。
グレーマン、『フリューバル王国』と『バンガー王国』に連絡をしてください」
「ハハッ!」
グレーマンは力強く返事をすると、部屋を出て行った。
女王一人で、部屋にある椅子に座り今後のことを考える。
グレーマンの持ってきた報告書には、『ロストール王国』の滅亡だけではなく、帝国との国境にある帝国の砦襲撃の話まで報告されていた。
『帝国が侵攻している時も帝国の砦に襲撃する者あり。
が、帝国が開発した新型の陸上兵器により襲撃者たちは全滅した』
第158話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




