第157話 飛行戦艦同士の戦闘
「お、おい!馬車を端に寄せるぞ!」
「あ、ああ……」
上空を通過していく何隻もの『飛行戦艦』を見て、いまだに唖然としているカレブは言葉にならない返事をする。
無理もない、上空を飛んでいる『飛行戦艦』を真下から見るなんて、まずないからな。
しかも、それが何十隻と空に浮かんで、通過していく。
馬も少し興奮気味だ。
それを何とかなだめて、街道の端に寄せて停車させる。
俺はすぐに、後ろの荷台へ叫んだ。
「馬車を降りるなよ!『飛行戦艦』が通過するまでおとなしくな!」
荷台からの返事はない。
なぜなら、荷台に乗っている女たち全員、空を見上げて驚いている。
「……それにしても、なんて数だ」
▽ ▽
『飛行戦艦6号艦』のブリッジでは、艦長をはじめとした乗組員が無言で作戦を遂行していた。
「……飛行戦艦20隻を率いて南から侵攻せよ、か」
「どうしました、艦長?」
「いや、この侵攻作戦の第一陣を任されるとは思わなくてな……」
ブリッジの正面に見える『ロストール王国』の景色。
どこにでもあるこの景色の先に、『ロストール王国』の王都がある。
俺たちは、そこを目指し制圧する。
場合によっては、犠牲も出るだろうし、相手の『飛行戦艦』も……。
「艦長!前方に敵の『飛行戦艦』多数接近!」
「正確な数は!」
「6……7…、いや、数11隻!」
「全艦に連絡!敵『飛行戦艦』発見!数11と!」
「了解!敵『飛行戦艦』発見!数11!」
艦長が、通信士に叫んでいる間に、副艦長が伝声管を通じて艦内に敵発見の知らせをする。
『敵正面にて、11隻発見!第一戦闘準備!急げ!』
その伝声管の知らせと同時に、艦内に危険を知らせるブザーも鳴り響く。
こちらが戦闘準備に入っている時に、『ロストール王国』側の『飛行戦艦』から攻撃が開始される。
「敵『飛行戦艦』が散開!撃ってきました!!」
「落ち着け!操縦士、回避運動開始!」
「りょ、了解!」
操縦士は、戸惑いながらも操舵を操作しながら、船体を左右にゆっくりと移動させていく。
その移動で、敵の砲撃から弾を避けるつもりなのだ。
回避運動は、しないよりした方が被弾率が落ちる程度のもの。
すべての攻撃を避けれるわけではない。
「第一から第五までの砲塔、攻撃準備!目標敵『飛行戦艦』!」
「目標固定!砲塔回転開始!」
「射程角に気をつけろ!」
「第一から第五まで、準備よし!」
副艦長が艦長を見る。
それが合図となり、艦長が叫んだ。
「撃てー!!」
艦長の合図とともに、長距離魔導砲が大きな音をたてて発射!
魔導砲弾が、『ロストール王国』の『飛行戦艦』目がけて打ち込まれる!
ブリッジにいる全員が、正面の『飛行戦艦』に着弾する様子を目撃した!
「着弾確認!」
「全弾着弾確認しました!」
「次弾装填急げ!」
グズグズしている間に、味方の『飛行戦艦』にも被害が出始める。
艦長は、次弾の装填の時間をソワソワしながら待った。
「艦長、次弾装填完了しました!」
「目標軸を上下1度づつずらせ!」
「了解!1度づつずらします!」
「再度標的固定完了!」
「よし、撃てーー!!」
一斉に第二射が発射される。
魔導砲弾は目標に飛んでいき、敵の『飛行戦艦』に叩きこまれていく。
敵が被弾するたびに、艦内で爆発があり、炎が広がっていった。
「敵『飛行戦艦』下部より、火柱が吹きました!」
「艦長!こちらの被弾箇所で火災が発生!」
「すぐに消火に取り掛かりなさい!」
「了解!」
ブリッジにいた火災を報告した兵士が、伝導管のところまで行き蓋を開けて叫ぶ。
『艦内で火災発生!消火を急げ!
繰り返す!艦内で火災発生!消火を急げ!』
兵士は伝導管で叫んだあと、艦長に一礼してブリッジを出て行った。
「次弾の装填を急げ!」
「了解!次弾の装填を急ぎます!」
「艦長、艦内での火災は大丈夫でしょうか?」
副艦長は、艦長の側に近づき、先ほどの火災の件で話をする。
「だいじょうぶだろ?あいつは艦内での消火活動の見回りに行ったんだ。
何かあれば、知らせてくれるさ」
「それなら、いいのですが……」
「副艦長、次弾装填完了!」
「射撃角を元に戻せ!」
「了解、長距離魔導砲の射撃角を元に戻します!」
「射撃角固定完了!」
「よし、撃てーーー!!」
三度目となる砲撃が発射された!
発射された魔導砲弾は、敵の『飛行戦艦』に命中!
そして、敵の『飛行戦艦』は彼方此方から爆発が起こり、後部にある風を起こして姿勢制御する場所が大爆発!
そして、『飛行戦艦』の後部から炎が燃え広がり全体へと広がっていく。
ついには、地上へ墜落していった。
「敵の船体が爆発!墜落していきます!」
「他の『飛行戦艦』は?!」
「敵『飛行戦艦』全滅!全て墜落しました!」
「こちらの被害は!」
「本艦は被弾箇所が七か所!火災が発生しましたが現在は鎮火しています!」
「他の味方『飛行戦艦』は一隻が墜落、残りも被弾が目立つものがありますが、半数以上が無傷で健在です!」
「『飛行戦艦』6・7・10・12号艦はこの場に残るぞ。
残りは、王都へ向けて侵攻を開始せよ!中心艦は8号艦に任せる!」
『了解、『飛行戦艦8号艦』はこれより指揮権を受け取り侵攻を再開します!』
「頼んだぞ」
『お任せください……侵攻組、発進!』
こうして、この場に残る『飛行戦艦』と侵攻する『飛行戦艦』に別れることになった。
6号艦の艦長は、敬礼をして侵攻組を見送る。
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