第155話 宣戦布告
「艦長、『ロストール王国』が関係あると知っていたんですか?」
「女帝陛下から、通達がきていたからな」
そう、『ジルバ帝国』の女帝スカーレット様から、我々『飛行戦艦』の艦長には、今回の国境付近の砦襲撃の件で、通達がきていた。
その通達には、犯人が『ロストール王国』の者たちから兵器などを供与されているとか、『ロストール王国』の指示で、砦襲撃をおこなっていることとか書かれていた。
そして、近々反抗作戦を行う予定であることも書かれていた。
また、反抗作戦には『飛行戦艦』のみで行われることも……。
「艦長、そういう通達は我々にも教えておいてください」
「すまんな、通達書には公式に発表されるまでは、作戦などは黙っておくように書かれていたんでな。みんなに教えるわけにはいかんかった……」
「でも、こうして教えてくれたということは?」
「ああ、さっきの休憩時に正式に通達があった。
今から三日後、『飛行戦艦6号艦』は南の『ニーブル』の港町の上空にて待機とのことだ」
「……もしかして、他の『飛行戦艦』と合流しての行動ですか?」
「そうだ、現在帝国で製造され戦えるように配備されている『飛行戦艦』60隻すべてが参加することになる、大反抗作戦だ」
「60隻……」
副艦長、飛行士、戦術士の三人は『飛行戦艦』の数に言葉が出ないほど驚いている。
だが、そんな数の『飛行戦艦』が帝国からいなくなると、守護は大丈夫なのかという不安もわいてきた。
「艦長、帝国の守りは大丈夫なのですか?」
「そ、そうです、すべての『飛行戦艦』を出さなくても……」
艦長は、三人の不安そうな顔を見て、笑いながら答えた。
「心配するな!例の陸上兵器の開発が終了してテストも良好、もう量産に入っているから配備ももうすぐだろう」
「陸上兵器………って、例の『飛行戦艦』の兵器を流用したっていう?!」
「ああ、戦術士のお前が驚くんだから、砦の守備は大丈夫だろう?」
戦術士の男は、興奮して艦長に話しかける。
「だいじょうぶも何も、もっと早く導入が決まっていれば砦襲撃で犠牲者が出ることは……」
「まあ、そこは上層部が『飛行戦艦』の導入を急いでいたからな……」
「あの、兵器を流用した陸上兵器って何ですか?」
副艦長と飛行士は、艦長に質問する。
『飛行戦艦』の兵器を流用した陸上兵器、それが開発されテストされ、もうすぐ量産されて配備される。
もしかして、すごい兵器なのだろうか、と、不思議に思ってしまったのだ。
「『飛行戦艦』の砲塔を利用した陸上兵器、『戦車』と呼ばれる兵器のことだ。
この間、ようやく量産体制に入ってな、完成し操縦兵の訓練終了とともに各砦に配備される予定だ」
「『戦車』ですか……」
それは、『飛行戦艦』に搭載されている長距離魔導砲を流用して造られた地上戦用兵器だ。長距離魔導砲を中距離魔導砲に造り替え、元からあった馬車に砲塔を乗せ、戦場で使えるように改良したものだ。
そのため、通常の馬車よりも車高が低くなり、攻撃に強くなるように装甲も付けられ防御力を高められる。
そうなると、機動力が落ちるため開発陣の頭をフルに使って新しい機動力を得ることに成功した。
何と、ここでも『浮遊魔道具』を使うことにしたのだ。
この『浮遊魔道具』の導入により、装甲の重さや砲身などの重量などがほとんど関係なくなり機動力も地面から何センチか浮かぶことにより、どんな場所でも走行が可能になった。
また、走行に『風の魔道具』を使用することでスピードも確保でき、まさに『動く砲台』の完成である。
「『浮遊魔道具』の量産が成功したからこその、『戦車』の完成だろうな……」
地上での戦闘が様変わりしそうだ。
だが、他の国でも開発続けられているはず。油断はできないだろうな……。
▽ ▽
宇宙歴4264年3月20日、午前10時20分。
『ジルバ帝国』の皇都にある城の謁見の間には、帝国領内から集まった貴族や各『飛行戦艦』の艦長。
それに、帝国の運営を任されてる各大臣たちに宰相のギャヴィン。
そして、謁見の間の両端の壁に並ぶ騎士団の騎士たち。
物々しい雰囲気の中、謁見の間に女帝スカーレットが玉座の後ろから現れた。
その姿は、いつもの皇帝の服やドレス姿ではなく、皇帝のみが着ることを許された軍服姿だ。
女帝スカーレットは、足音を響かせながら玉座に着席する。
「皆も聞いておるとおり、現在、『フリューバル』『スプリード』『バンガー』の三国との国境にある砦が襲撃された!」
この女帝スカーレットからの発表に、ざわつく貴族たち。
しかし、女帝スカーレットはそれを無視して、話を続ける。
「だが、この砦への襲撃は三国からの攻撃ではない!
『フリューバル』『スプリード』『バンガー』との休戦協定は、今も守られていた!
では、砦を襲撃したのはどこのどいつなのか!!」
女帝スカーレットの声が強い口調になり、謁見の間にいる全ての人物が黙ってしまう。
「それは、『ロストール王国』だ!!」
「な、なんとっ!」
「そんな!あの国が……」
貴族たちは口々に信じられずに、声に出してしまう。
また、女帝の側に控える宰相ギャヴィンは、下唇を噛み何かに耐えていた。
「この度の情報は『観測院』がよい仕事をしてくれた。
そして、すべての黒幕も『ロストール王国』の宰相だということも分かっている!」
ここで再び、騒いでいた貴族たちも静かにしてしまう。
今まで、影の薄かった『観測院』のことを、無用の長物扱いしていた貴族は多い。
だからこそ、女帝スカーレットのお褒めの言葉に、貴族たちは驚いたのだ。
「犠牲になった砦の兵士の無念を晴らすのだ!
ジルバ帝国女帝スカーレット・ユナ・ジルバ2世の名において、ここに宣言する!
『ロストール王国』に宣戦布告する!!」
謁見の間に、女帝スカーレットの宣言が響いた!
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