第15話 宇宙船の墓場で手に入れたもの
『先ほど、若旦那に確認しました。偵察衛星で様子見と調査を、とのことです』
『若は、緑の惑星には近づくなということですか?』
『今は、ねシンシア。社長たちが来てから本格的に調べる気なのかもしれませんね』
そう言えば、一か月後ぐらいに社長や副社長が来ると連絡していましたね。
管理惑星とするための審査官も同行するとか。
……でももう一つ見つかったとなれば、大発見とともに大ニュースでしょうね。
「う~む、ここから見る限り青い星と何ら変わらないんじゃがな……」
エンシェントドラゴンのソフィアさんは、今も緑の星を観察しながら考え込んでいます。
赤い月に住んでいながら、緑の星に今の今まで気づかなかったなんてとさっきまで後悔していましたからね。
……ところで、若旦那とアルは大丈夫でしょうか?
ステータス魔法が使えないということは、身分証明ができないということ。
そんなことで町に入れたのかな?
私は、地上の様子を確認する……。
▽ ▽
エミリーたちと別れた後、僕とアルはコナーたちと一緒に『ディルナート』という町へ入ることができた。
どうやらこの世界には、僕たちと同じように魔力を持たずに生まれてくるものもいるようでそんな人たちのために犯罪歴を調べる魔道具を使った後、町へ入るために1人銀貨1枚を支払った。
コナーたちは冒険者ギルドカードの提出だけで、お金を払う必要はないとのこと。
無事、町へ入ることができた僕たちは宿を探すことに。
コナーたちと別れると、さっそく近くの宿に入ってみた。
「いらっしゃいませ、ニードル亭にようこそ。泊まりですか?食事ですか?」
建物の中に入って、最初に声をかけてくれたのはカウンターにいた女性だ。
多分受付をしている人だろう。
「ここは一泊いくらですか?」
「君、しっかりしているのね……ここは一泊銀貨3枚よ」
「ありがとう綺麗なお姉さん」
「……ほんと、しっかりしてるわ」
女性の感心した声を聞いた後、僕はアルと相談する。
僕たちが今持っている所持金は、銀貨98枚だ。金貨1枚は銀貨100枚という価値だった。
10進法とは分かりやすい。
となれば、ここは何泊するかが問題だな。
「アル、この町を観光するとなれば何日滞在するかだけど……」
『そうじゃな、コナーたちの話じゃと5日もあれば全部回れるとか言っとったのう』
「なら、滞在は6日だね」
あるも承知して頷いたので、受付の女性に6日の滞在を知らせる。
「では、6泊ね」
そう言うとお姉さんは、カウンターから箱形の道具を取り出し何やら唱えだした。
すると、箱が少し光るとお姉さんは頷く。
「では、6泊で銀貨18枚よ」
何と、その箱は計算機の魔道具か。僕たちが使っている計算機とは使う時の桁が違うが、この魔法があるファンタジー世界に計算機とはある意味進んでいるのかも。
僕はポケットから銀貨18枚を取り出して支払うと、お姉さんが部屋の鍵をくれる。
「はい、2階の203号室ね。階段上がってすぐだから」
ふむ、案内はしてくれないのか。
僕とアルは、2人で2階へ上がり203号室へ入っていく。
部屋の中は、ベッドが2つとクローゼットに机と椅子がついていて部屋全体の広さは約10畳といったところかな。
窓にはガラスはなく、木の扉で開け閉めするようになっている。
入り口のドアには簡単な鍵が付いているだけだ。
「防犯は、あまりいいとは言えないかな……」
『この世界じゃからのう、期待はしない方がええというわけじゃな』
……後で防犯用のロボット番犬でも出しておこうかな。
「それよりも、この町を観光するには先立つものが必要だな」
『レオンは、何かを売るつもりなのかのう?』
売れるものか……。僕の亜空間倉庫には、いろんなものがある。
実は対宇宙海賊用戦闘艦を製作するとき、宇宙船の墓場でいろんな宇宙船や戦闘艦を拾ってきて修理や修繕、溶かして再生利用している時に宝石類を手に入れたんだよね。
宇宙船の墓場といっても危険な場所ではない。一般にも公開している所謂スクラップ置き場のことだ。
何故かみんなスクラップ置き場ではなく宇宙船の墓場と言っているんだけど……。
で、そこから引き取ってきた宇宙船や戦闘艦のいくつかに隠してあったのが、僕が持っている宝石類だ。
これを明日、どこかで売って軍資金を調達する。
どこで売るかは、コナーたちに出会うことができれば聞いてみるつもりだ。
「ああ、宝石をちょっとばかり売ろうかと思ってね」
『なるほど、それなら資金調達にはもってこいかの?』
「この世界で、宝石が売れるかは分からないけどね」
ここに来るまでの間のコナーたちの説明だと、宝石より魔石の方が重要みたいだしね。
もし宝石が売れないってことになったら、森に入って魔物を倒していくしかないね。
アルと明日のことを話していると、ドアがノックされる。
『お客様、食事の用意が出来ました。一階の食堂までおいでください』
「はい、ありがとうございます」
『では、失礼します』
今の声は受付のお姉さんだったな。
「アル、食事にしよう。この世界の食事がどんなものか食べてみよう」
『そうじゃのう、ロボットの儂も食べれるようにしてもらったからのう。楽しみじゃ』
僕たちはそろって、一階の食堂へ降りて行った。
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