第149話 見守る者たちの前での開戦 終結
子供推しの貴族派が使った、光収縮魔道具を搭載したレーザー兵器。
そのレーザー兵器が、今まさに偶然とはいえ自分たちに向けて発射されようとしている。
テントから兵器の向いている方向を直すために、駆け寄ろうとしている者やこの事故を知らせようと走り出した兵士。
さらに、この事態はさっき敵の『飛行戦艦』の着弾で吹き飛んだ貴族のせいだと、走って逃げようとする貴族の生き残り。
様々な、人達の行動を無視して、兵器は光を放った。
僕たちが発射時に出る光に眩しさを感じた瞬間、兵器を中心に大爆発が起きた。
眩しいと感じたら大きな爆発音が辺りに響く。
その爆発音に、戦場は一時的に戦いがストップした。
前線で戦いっていた兵士たちが振り向くと、自分の味方陣地の前方に上がる炎と煙の塊のきのこ雲。
爆風で舞い上がるテントや何かを覆っていた大きな布。
あ然としている顔が、モニター越しに確認できたほどだ。
「……爆発?」
『おそらく、レーザー兵器の耐久力が限界を超えたため爆発したのでしょう』
「かなり巻き込まれたようだね……」
『はい、他に用意されていたレーザー兵器の残り全て巻き込まれて大破したようです』
『後、かなりの人が巻き込まれていますね。後方の陣地は大混乱しています』
僕とオーリーがあ然としていると、ロージー達アンドロイドは冷静に分析していた。
さすがだね~。
何て、感心していたら、アシュリーが叫ぶ。
『着弾っ!』
その叫びと同時に、先ほど爆発した場所と同じ場所で爆発が起きた。
ようやく、『飛行戦艦』から発射された長距離魔導弾が着弾した。
最初の爆発で、何とか命を取り留めていたであろう人たちも、この着弾の爆発で死んでしまったのかもしれない。
子供推しの貴族派の陣地は、さらに大混乱となり、自分たちの陣地が攻撃されたと勘違いした前線の兵士が次々と降伏。
陣地の混乱に、自分たちの負けを悟った兵士や貴族も次々と負けを認め降伏。
子供推しの貴族派の陣地内でも、主だった貴族は私兵を連れて撤退。
休息をとっていた兵士たちも、逃げ出したり降伏したり、それぞれ行動していく。
こうして、『フリューバル王国』の東西戦は公爵押しの貴族派の勝利となった。
大型モニターでも、前線の兵士たちが、公爵派の兵士たちに手を挙げ、魔導銃を地面に置く姿が目に入ってくる。
どんどん、降伏しているようだ。
「どうやら、戦争は終わったようですね……」
「はい、お嬢様。でも、大変なのはこれからです」
そう、大変なのはこれからだ。
公爵を推していた貴族が中心となり、公爵を王に据え、『フリューバル王国』をまとめていかなければならないのだ。
さらに、隣国との外交や国内の混乱の鎮静化。
特に、今回の戦争の原因の一つになった前王の子供をどうするのかとか、子供推しの貴族派をどうするのかと、問題は山積している。
隣国、特に帝国との停戦協定失効の時間もない。
停戦協定失効後、すぐに戦争となるわけではないが、戦力が、特に『飛行戦艦』を製造、量産していない『フリューバル王国』にとって残りの時間は貴重なのだ。
「これからどうなるか分からないけど、僕たちは注意深く見守っていこう」
『『『はいっ!』』』
▽ ▽
宇宙歴4264年3月1日、『緑の星』の『フリューバル王国』の王都にある神殿で、大々的に戴冠式が行われた。
もちろん、その様子を中継して宇宙船『ハルマスティ』のブリッジにある大型モニターで見ていた。
みんな、こういう戴冠式なんかの儀式って、歴史書や歴史映像でしか見たことなかったから真剣に見ていたよ。
この戴冠式の後は、新しい王をお披露目するためのパーティーがあるとか。
さすがに、パーティーまでは興味ないので、僕たちの見学はここまで。
「あれが本物の『戴冠式』だったんだね」
「歴史の1ページを見ることができた、感動があります」
「……本物は重みがありました」
僕やオーリー、ユリアさんが感動しているとロージーたちは首を傾げている。
『確かに貴重な儀式ではありましたが……』
『そんなに感動することなの~?』
『……これもアンドロイドと人間の感情の違いなのかな?』
『そうかもしれませんね……』
ロージーたちは、どこかピンと来ていなかった。
▽ ▽
宇宙歴4264年3月5日、この日『フリューバル王国』と『ジルバ帝国』の国境で、ジルバ兵士のいる砦に襲撃があった。
『魔導銃』を持ち、全身黒い服で身を包み、黒い覆面までして襲撃してきた。
激しい銃撃戦を繰り広げ、大型の魔導銃を使って、火炎系の魔法を撃ちこんできた。
通常、『魔導銃』の魔導弾丸は、無属性魔法を使った魔導弾丸で殺傷能力はあまりない。
だが、いろいろな属性を籠めることで、殺傷性のある魔導弾丸ができるのだが、それでも決定打になることはないだろう。
だが、今回使用された大型の魔導銃は、見た目がバズーカ砲のような形状だ。
そこから打ち出す魔導弾丸も、無属性の物では意味がない。
そのため、火炎系統の属性を籠めて打ち込んだと思われる。
そのため、威力は魔導銃など比べ物にならず、一撃で壁を破壊するほどのものだったようだ。
それが、何発も撃ち込まれ、砦に壊滅的なダメージが蓄積される中、帝国側が反撃に出た。
『飛行戦艦』を使用したのだ。
『飛行戦艦』の砲撃により、敵はすぐに撤退。
謎の黒い部隊は、『フリューバル王国』方面に逃走した。
この襲撃は、はたして本当に『フリューバル王国』が仕掛けたものなのか……。
真相が分からないまま、時間だけが過ぎていく。
第149話を読んでくれてありがとうございます。
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