第14話 その頃宇宙では…
『若から離れていったみたい』
『……貴族の女性というのは、差別意識が激しいのね』
『ロージー、さっきのステータス魔法とやらの解析はどう?』
オリビアとシンシアは、レオンに近づいてきた貴族の女性を冷静に見ていた。
多分、今後あの女性と若旦那が出会うことはないだろう。
というか、若旦那の教育に悪いわね貴族の女性というのは……。
それよりも、ロージーは若旦那があの星に降りてから最初に見た魔法をはじめ船のコンピューターで解析を始めていた。
魔法を使うことはできないのか、という問いを若旦那からもらっているからね。
『ステータス魔法は解析が終わったわ、でも、私たちや若旦那には使えないみたい』
『……魔法は全滅か』
「お主ら、魔法が使いたいのか?」
突然私たちの後ろから聞こえた聞いたことのない女性の声。
私たちが一斉に振り向くと、そこには褐色肌の銀髪の美しい女性が魔法使いが着るローブを纏って、こちらを不思議そうに見ていた。
『……誰ですか、あなたは。どうやってここに侵入をしたのですか?』
私たちの代表でもあるロージーが質問をする。
「ん? 自己紹介からしたほうが良いかの?」
『ええ、お願いします』
「うむ、ではわらわの名はソフィア、ソフィア・ロードという。種族はエンシェントドラゴンになるのかの」
エ、エンシェントドラゴンって、物語何かでは最強種のドラゴンじゃない。
よく星の守り龍とか呼ばれているのを、若旦那から聞いたことがあるわ。
『……それで、どうやってここに入れたのですか?』
「いやなに、わらわの住処は赤い月なのじゃが、そこから星を眺めているとこのおかしなものを発見しての。
何かな?と近づいたらお主ら5人が何やら話しているのが外から見えたんでの、気になって転移でこの部屋に入ったのじゃ。
……まずかったかの?」
エンシェントドラゴン、というより人種の女性に化けているのか。
その人種に化けたドラゴンのソフィアさんが、悲しそうな顔でこちらを見てくる。
『……いえ、そんなことはありません。急に現れたものですから……』
「そうか、それはよかった」
今度は笑顔になった。きれいな女性がコロコロ表情を変えるのは見ていて飽きないな。
『それよりも、ソフィアさんの行動のおかげでわかったことがあります』
『ロージー、何か気が付いたの?』
「何じゃ、わらわの行動のおかげとは……」
ロージーは、私たちを前にしてもったいぶるようにシンシアにある指示を出した。
『シンシア、青い惑星から魔素がこの宙域にも充満しているはずだから調べて』
『わ、分かった』
……宇宙空間に魔素? でも、確かソフィアさんは転移を使ってこの船の中に入ったんだよね。ということは、宇宙空間でも魔法が使える……。
『解析終わりました、この宙域にも魔素が充満していたわよ』
『やっぱり、範囲は分かる?』
シンシアが再びパネルを操作して答えが導き出される。
『範囲は、青い惑星を中心に二つの月を包んだ辺りまでみたい』
『そんなに広範囲に及ぶのね……』
「当然じゃろ、わらわは赤い月に住んでおるのじゃ。そのわらわは魔力を体内に取り込んで生きておるのじゃからのう」
ソフィアさんは、魔力を吸収して生きているんですか……。
ん、シンシアが何か困った顔をしてますね……。
『シンシア、どうしたの? 何か困ったことでもあったの?』
私がシンシアの側に近づいて声をかけると、シンシアは私に助けを求めるように答えてくれた。
『アシュリー、どうしよう。ロージーに頼まれたことをしていると、新しい発見があったの』
新しい発見か、ここはちゃんと報告するように言っておきましょう。
『シンシア、それは報告しておいた方が良いよ。あとで知られても対処できないでしょ?
それなら、ロージーに丸投げしてみんなで考えよう』
『……うん』
シンシアは黙って抱え込むタイプなのかもしれないね。それなら、早めに皆に話してみんなで考えた方が早く解決するよ。
『ロージー、話があるの』
『……何シンシア、何か見つけたの?』
『ロージーに言われて魔力の範囲を調べた時、別の魔力波形を観測したの』
ん? シンシア、あなた一体何を発見したの?
『別の魔力波形って、あの青い星から出ている魔力とは別のものってことなの?』
『そうよ、まったくの別物。いえ、それどころか反発の兆候があるの』
『反発?』
魔力同士が反発って、磁石と同じようなことなのかな?
S極とN極が引きあったり、同じ極同士で反発したりする。
「違う魔力じゃと? わらわは知らんぞ? どうなっておるのだ?」
『シンシア、その違う魔力がどこにあるのか調べられる?』
『もうやってます………ロージー、ここから前方に見えるはずです』
『前方?』
ロージーをはじめ、シンシア以外全員が前方に注目して見ている。
みんなで、こんなにも宇宙を見たのは初めてじゃないかな……。
『……あった、目の前の青い星と同じ惑星を発見』
『私も見えた、あれは青い星じゃなくて緑の星だ……』
「わらわも確認したぞ、確かに緑の星があるが何も感じることはできのう……」
ソフィアさんが何も感じないってことは、シンシアの言う通り別の魔素が確認できるってことなのか……。
もしかして、あの緑の星にも知的生命体はいるのかな?
若旦那が帰ってきたら、ソフィアさんのことと一緒にあの緑の星のことも教えておこう。
第14話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




