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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
続・緑の星の戦争

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第139話 帝国の動き




宇宙歴4263年5月27日、この日、東に位置する『ジルバ帝国』の皇都ラオールでは、お祭りが開かれていた。

皇都の人々がお祭りに浮かれる中、皇都にある帝城のバルコニーからお祭りを眺める1人の女性がいた。


この女性こそ、この『ジルバ帝国』の女帝スカーレット・ユナ・ジルバ2世だ。


代々続く皇帝の血筋たる証の長い紅い髪をなびかせ、黒い瞳を煌めかせながら楽しんでいた。現在22歳、スタイル抜群で、その身体を見た何人もの貴族の男を迷わせた女性。

それがこの帝国の女帝だ。



「フフフ、皆浮かれておるな……」


スカーレットの後ろに控える侍女のアリアナが、白ワインの瓶をもってスカーレットに近づき、自然な仕草でスカーレットの持つワイングラスに注いでいく。


この侍女アリアナは、元貴族の女性でスカーレットとは学園の同級生だ。

天空要塞が現れる前にあった西の王国との戦争で、父親を亡くし、その後、母親をも亡くしてさらに、多額の借金で貴族位をも失くしたところを、スカーレットに拾われたのだ。


薄いグレーの長い髪を後ろでまとめ、その仕草は侍女として完ぺきだった。



「陛下、宰相のギャヴィン様がお見えです」

「そうか、ならば部屋に戻るとしよう」


そう言うと、スカーレットは継がれたワインを一気飲みして、空のグラスを侍女に預けるとバルコニーから部屋の中へ入っていく。

部屋といってもそこは謁見の間、バルコニーから入ってきたスカーレットに敬礼する騎士や頭を下げる宰相のギャヴィンがいた。


スカーレットは、ギャヴィンを確認すると三段ほど高くなった場所にある皇帝の椅子に座った。


「ギャヴィンが私のもとに来るということは、進展があったということだな?」

「はい、陛下。『ロストール王国』へ出していた使いのものが、設計図などを持って戻ってまいりました。

工房の者たちに確認させましたところ、間違いなく『飛行戦艦』の設計図と分かりました。


また、『飛行魔道具』の設計図も手に入れておりましたので、すぐにでも計画が進められます」


「うむ、よくやってくれた。

無事に帰って来た使いの者たちには褒美をやり、十分な休みを与えるように。

それと、すぐに計画を進めるように」


「ハハッ!」


宰相は、返事をするとすぐに立ち上がり謁見の間を出て行った。

残ったスカーレットは、笑みを浮かべると敵国を出し抜いたことへの喜びがあふれてきていた。


「フッ、これで対等になる。西の連中の驚く顔が目に浮かぶな……。

それに、数をそろえることができれば、さらに西の大陸へ侵攻できるやもしれん」


『ジルバ帝国』の将来を思い浮かべ、女帝スカーレットは笑みを深めた。




▽    ▽




赤いじゅうたんがひかれた帝城の謁見の間から続く廊下を、宰相のギャヴィンは歩いている。

そこへ、脇の廊下から一人の男が姿を現した。


「ブレイデン、陛下の許可は下りた。すぐに、計画を始めてくれ。

完成が早ければ早いほど、西の連中を出し抜けるが、陛下は不良品を嫌うからな。

そのことだけは注意しろよ」


ブレイデンは、頷き一礼すると脇の廊下を奥へと歩いて行った。

それを見送る宰相ギャヴィン。


50歳を超えグレーの髪にも白髪が混ざってきたギャヴィン宰相は、ため息を吐く。

天空要塞を沈めた兵器を持っていた『ロストール王国』は、帝国にも飛行戦艦の設計図をもたらした。


それは、敵味方の区別なく兵器を売る死の商人のようではないか。


一抹の不安を覚えながらも、帝国に攻めてくる西の王国たちを何としても止めなくてはならず、宰相は、もたらされた飛行戦艦にすがるしかなかった。


だが、戦争がこれから長引けば帝国の民たちはどうなるのか、と、再び不安になる。


これから先、宰相ギャヴィンにとって胃の痛い日々が続くことになりそうだ。




▽    ▽




宇宙歴4263年6月2日、『緑の星』の衛星軌道上には、貨物宇宙船『ハルマスティ』が停止している。


かねてより計画にあった、宇宙ステーションを運んできたためだ。

宇宙船『ハルマスティ』のブリッジで、僕たちが寛いで待っていると、そこに、待ち合わせ時間きっかりに、ルルとロロの乗る宇宙船『クロウディア』が合流する。



「ルルさん、ロロさん、昨日届いた宇宙ステーションを組み立てて運んできました」


モニターの向こうで、グレーの髪で黒い瞳のルルさんと金髪で青い瞳のロロさんが笑顔で出迎えてくれた。

2人とも、服装は『緑の星』に滞在している時の簡素なものだ。


おそらく、連絡してから急いで上がってきたのだろう。


『ご苦労様ですレオン君』

『早速、衛星軌道上に設置していきましょう』


「了解です、今召喚しますから、細かい調整はお願いしますね」


モニターの向こうで頷く二人を見て、僕は亜空間ドックの出口を宇宙空間に出現させ、目的の完成した宇宙ステーションを出現させていく。


ゆっくりゆっくり姿を現していく宇宙ステーション。


そして、今までは監視衛星しかなかった『緑の星』の衛星軌道上に、宇宙ステーションがその姿を現した。

すぐに、ルルさんとロロさんの宇宙船『クロウディア』が横付けされ、宇宙ステーションの制御システムをのっとるのだ。



「……システム制御完了。ではロロ、静止軌道へ」

「了解、静止軌道へ移動します」


姿勢制御のためのノズルを使い、定位置へ移動させる。

こうして、宇宙ステーションは『緑の星』で活躍してくれるだろう。


いずれ、軌道エレベーター……は無理かもしれないが、コロニーや簡易の宇宙港を設置することも考えてみよう。







第139話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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