第135話 動き出した緑の星
宇宙歴4263年5月20日、『緑の星』にある『スプリード王国』の王都にあるお城の一室で三人のお偉いさんたちが顔を突き合わせていた。
一人は、この国の女王リミニー・スプリード。
真っ赤なドレスを身にまとい、白いストールを羽織っている。
金色の長い髪は、艶を保っているほど美しく、緑の瞳は残りの二人のお偉いさんを見つめていた。
「それで、例の生き残りは見つかったのかしら?」
「ああ、我が王国の漁村に住む民が見つけてくれたよ。南にある無人島に町が出来ていたとな……」
そう言ったのは、今回の報告に訪れた南の隣国『バンガー王国』の国王デイヴィッド・バンガーだ。
銀髪で青い目をしたデイヴィッドは、エルフと人族のハーフで、見た目はエルフの特徴を受け継いでおり美男子だ。
また、グレーを基本とした高そうな服を着ており指には、魔力を帯びた魔石で作られた護衛用の指環が三つほど嵌められていた。
「やれやれ、そんな島に避難しておったとはな」
ため息を吐いて、めんどくさがっているのは北の隣国『フリューバル王国』の国王オーウェン・フリューバル。
金髪の短い髪で、右耳に護身用のアクセサリーをつけている。
目はグレーで人族でありながら、顔はエルフよりの美男子だ。これは何代か前の祖先のおかげということだろう。
黒を基調とした服を纏っており、これまた高そうなコートを側の背もたれにかけていた。
ここは、三人の王たちだけで話し合われる特別な部屋だった。
「そういえば、天空騎士たちが攻めてきたとか報告があったが?」
「ええ、天空要塞を落としたから、その報復でね。
でも、そんなこと予想しておりましたから、見事殲滅できましたわ」
「フフフ、となると、その生き残りたちの島には、戦力があまりないということになるな」
「どうするのだ?攻め込むのか?」
デイヴィットは、オーウェンの問いに少し笑みを浮かべながら答える。
「そんなに急ぐ必要もないだろう?生き残りの奴らに、何かできるとは思えないしな」
「そうですよ、今は東の帝国との戦争をどうにかしないと」
「東の帝国か……」
天空の要塞が落ちてから、しばらくは戦争もなく平和だった。
だが、どこにでも好戦的な連中はいるもので、一年もたたないうちに再び戦争は再開された。
ここ『スプリード王国』も例外ではなく、東に君臨する帝国と戦争状態にあった。
また、その戦争は『バンガー王国』と『フリューバル王国』を巻き込んでいた。
「まったく、『スプリード王国』と同盟を結んだがために戦争に巻き込まれるとはな……」
「私に非はないわよ?帝国と隣接する貴族が、勝手に先走ったせいですかね」
「ま、いずれ帝国とは決着をつけないといけなかったんだから。
それよりも、西の隣国は返事を寄こしたのか?」
西の隣国『ロストール王国』。
古代帝国遺跡を有し、おそらくこの世界で最も文明や技術が進んだ王国。天空要塞を撃ち落とした兵器を研究し造り上げた実績を持つ。
帝国との戦争で武器などを提供するように頼んでいる王国だ。
「返事はあったわ、兵士などを派遣することは出来ないが、武器や技術などの提供は惜しまないそうよ」
「ほう、それは助かるな」
「しかし、兵士を出せないとは、何かあったのか?」
デイヴィットが不思議に思い、疑問を口に出すと、リミニー女王から答えが返ってきた。
「落ちた天空要塞を調べるそうよ。
いろいろな技術を持ち帰るために、サルベージをしているわよ」
「……西の王国は技術バカが多いのか…」
「国王がドワーフと人族のハーフらしいから、ドワーフの血が騒ぐんでしょ?」
「なるほどな……ハハハッ!」
緑の星は、すでに戦争が始まっていた……。
▽ ▽
青い星の衛星軌道上にある宇宙船『ハルマスティ』のブリッジでは、帰りの遅いレオンをロージーたちが揃って待っていた。
『ロージー、アシュリー、若はまだ帰ってこないのか?』
『私たちが連絡をもらったのが5月の7日。
今日は20日だから連絡をもらってから10日以上が経っているわね……』
『ねえアシュリー、若たちの宇宙船の現在地って分かる?』
『ちょっと待ってね………』
アシュリーは、目の前の機械を操作しレオンの乗っている戦闘艦『マーリン』の現在地を探ってみる。
いつもより、少し時間がかかったが、現在地がモニターに表示される。
『……ここって、シャロン様のいる惑星ですか?』
『……間違いないわ、惑星『ローフ』の位置を示しているから。
アシュリー、通信を!シャロン様の宇宙船『エリザベート』につないで!』
『ちょっと待ってね………繋がった!モニターに出します!』
ロージーたちの目の前に現れる大型画面のモニター。
そこには、シャロン様ご本人が映し出される。
『あら、ロージーじゃないお久しぶりね?今日はどうしたの?』
『お久しぶりですシャロン様。そちらにうちの若旦那のレオン・オーバスが、許嫁とともにお邪魔していないかと思いましてご連絡しました』
モニター越しのシャロンは、驚いた表情になり…。
『よくわかったわね、レオン君がここにきているなんて。
確かに許嫁のオーリーもいっしょに尋ねてきているわよ。代わりましょうか?』
『そうですね……よろしければ、代わってもらえますか?』
『分かったわ、ちょっと待ってね』
モニターの前からシャロンが移動すると、シャロンと交代するようにレオンがモニターの前に現れた。
そして、画面越しに頭を下げるレオン。
『すまない!連絡を怠っていました!』
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