第131話 その後と故郷の惑星
戦闘終了後、降伏した黒い戦闘艦をどうしようかと悩んでいると、連絡を受けて駆け付けた星間軍に引き渡した。
爆散した残りの戦闘艦5隻についても、星間軍へ知らせて僕たちはその場を後にしたのは、もう一つ、片づけなければならない宇宙船があったからだ。
離れたところで、停止していたオオノさんの宇宙船に近づき、オオノさんたち乗組員を僕の宇宙船に呼び寄せた。
オオノさんたちも、黒い戦闘艦との戦いを見ていたのか大人しくこちらの言うことを聞いてくれた。
「では、これからのことを話し合いましょうか?」
「………」
何も言わずに、頷くだけのオオノさん。
他の乗組員の人達も、下を向いて大人しくしている。
「まず、オオノさんの宇宙船に積まれている『ブーニド装置』はこちらに渡してください」
「……分かった」
「あ、あの、『ブーニド装置』で通信不能にしてごめんなさい!あれは……」
僕が右手を前に出して制すると、謝っていた乗組員の女性は黙り込んでしまった。
「ご心配なく、そちらの事情は分かっています。
マーティン家の親族の一部の人に、独立資金をちらつかされて今回の協力をしたことはね」
「ど、どうしてそれを……」
『オオノ社長、独立資金って何ですか?』
「社長……」
初めて聞いた乗組員が大半で、オオノさんを見て驚いていたが、話は終わってないのでスルーしてどんどん進める。
「『ブーニド装置』の回収は、後で星間軍に渡さないといけないためです。
なにせ、通信妨害が起きているって知らせましたからね」
「そういえば、そう言って若旦那を嵌めたんでしたね……」
オオノさんは、思い出して再び沈んでいた。
「次に、オオノさんも星間軍の事情聴取に応じてもらいますがよろしいですね?」
「……ああ」
「そういえば、惑星『オオビー』へ輸送する荷物などはどうされたのですか?」
「惑星『オオビー』への荷物は、すでに納品済みだ。
その時に、惑星近くで戦闘艦同士の戦いがあるかもしれないと、注意喚起だけはしておいたよ」
なるほど、ということは惑星『オオビー』は、利用されただけで何もなかったということか……。
なら、この後はオオノさんたちを連れて星間軍へ合流。
事情聴取を済ませて、解散といったところか……。
「なあ、1ついいか?」
「何でしょうか?」
俯いて沈んでいたオオノさんが、顔を上げ僕に質問してきた。
「今回の原因を、レオン君は、若旦那は分かっているのか?」
「ええ、僕の婚約を反対したマーティン家の親戚がちょっかいをかけて来たってところですね」
「!……レオン君、年長者としての忠告として聞いてくれ。
マーティン一族は裏の世界に精通している人が多い一族だ、そんな一族の一員になろうとしているんだぞ?」
「……」
「レオン君、今からでも遅くはない。この婚約は解消した方がいい……」
マーティン一族の裏の顔か。
そんなものが在ろうが無かろうが、この婚約は確定事項なんだよね……。
父さんから話があった時点で、僕に断る権利はないんだよ……。
「オオノさん、忠告ありがとうございます。
婚約解消は、僕の一存ではできないんです。一応裏の世界については注意しておきます」
「……そうか…」
これ以上は何も言わず、オオノさんの宇宙船とともに星間軍へ合流。
事情聴取に応じて、『ブーニド装置』を引き渡した後、僕とエリーは故郷の惑星へと向かった。
故郷に向かっている途中で、父さんに事の顛末とオオノ運送のことやマーティン一族の裏の顔などの話を通信ですると、何故か大笑いされた。
オオノ運送のことは、父さんが親会社のマーティニック社にすでに相談しており、時期を見てオーバス運輸の傘下から移す予定だったそうだ。
その時期がいつになるかを決めかねていたため、オオノさんに相談することもできず今回の事になってしまったと、父さんも反省していた。
また、マーティン一族の裏の顔については父さんも把握しており、今回僕の誕生日に会わせる許嫁の女性と一緒に会長本人がきてくれるそうだ。
で、笑いながらその会長本人に裏の顔などを聞けと言われてしまった。
あと、戦闘艦同士の戦いのことも報告すると、呆れていたな……。
『お前は、またとんでもない戦闘艦を造ったのか……。
男の子だからその辺はしょうがないと思うが、女性には絶対理解されないぞ?』
「……それは、経験談なの?父さん」
『経験談だ』
どうやら、母さんも所謂『男のロマン』とやらは理解できなかったようだ。
これは、妹のルーシーも大きくなったら呆れられそうだ。
そんな雑談をして通信を切ると、目的の惑星、故郷『アスティフ』に到着した。
▽ ▽
宇宙歴4263年5月2日、僕の誕生日までもうすぐというところで、ようやく惑星『アスティフ』に到着。
衛星軌道上にある宇宙港に、戦闘艦『マーリン』を泊め、メインエンジンを停止させる。
ブリッジで、忘れ物がないかもう一度エリーと一緒に確認後、通路を通って宇宙港へ。
惑星『アスティフ』は、地上の人口が40億人の文明惑星だ。
大きな都市がいくつもあり、いろんな企業もここに支店を出していた。
もちろん、僕の父さんの会社『オーバス運輸』の支店もこの惑星に出してある。
ちなみに、本店はここからもう少し銀河の中心へ向かった惑星にあるのだが、今は紹介する必要はないだろう。
エリーとともに宇宙港で滞在の手続きをしてから、軌道エレベーターで地上へ降りる。
地上へは一日かかるから、到着は明日の朝ということだな。
「やれやれ、本当にギリギリだな……」
『若旦那、シルビア様に拗ねられなくてよかったですね~』
シルビア・オーバス、僕の母さんの名前だ。
ちなみに、父さんはニードル・オーバスだ。
「まったく、予想外のことが起こりすぎだよ。今回の里帰りは……」
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