第130話 戦闘と決着
惑星『オオビー』に近づいていくと、惑星の影から黒い戦闘艦が6隻現れた。
どこの所属か全く分からないように、今まで見たこともない艦影だ。
『前方に現れた戦闘艦6隻、どこの所属とも一致しないよ~』
「……さて、どんな作戦なのかな?」
僕たちが、これからどうするか考えていると先頭の黒い戦闘艦がライトで合図を送ってくる。
すると、僕たちの宇宙船の後ろを航行していたオオノさんの宇宙船が方向転換しここから逃げ始めた。
どうやら、事前に合図を知らされていたようだ。
『オオノさんの宇宙船が逃げるよ~』
「亜空間盗聴はまだ繋がっている?」
『大丈夫、気づかれてもいないね~』
「なら、今は放っておいても大丈夫。後で探せば見つけられるよ。
それより、前方の黒い戦闘艦たちに集中!」
『了解~』
さて、この戦闘艦『マーリン』の実力を見せてやる!
▽ ▽
俺たちは、惑星『オオビー』の宙域から逃げ出した。
事前に、光で合図があったらその場から逃げると通告があったからだ。
「……これで、いいんですよねオオノ社長」
「……ああ、これでいいんだ……」
……これでいいんだ……何も殺されるってわけじゃない。
レオン・オーバス君の身柄をあずかり、ただの子供だったということを証明できれば無事に帰すらしいし………。
でも、どうやって証明するんだ?
レオン君がただの子供だっていうなら、どうやってそれを証明するんだ?
……もしかして、俺はとんでもないことをしたのでは……。
『オオノ社長!後方、惑星『オオビー』宙域で多数の光が!』
「……あれは、戦闘の光だ!」
俺は、すぐに後方の様子が分かるようにブリッジに映像を出す。
かなりの遠距離のため、望遠での映像となったが、ちょうど何か宇宙船のようなものが爆発したところだった。
「……今の、宇宙船……だったよな……」
まさか、まさか……あれは、レオン君の宇宙船の……。
俺はその場に崩れ落ちた。
自分がしてしまったことの、罪の重さと罪悪感が俺を押しつぶす。
本当に、俺はなんてことをしてしまったんだ……。
「………長……社長……オオノ社長!」
ブリッジの床に崩れ落ちた俺を、従業員の一人が正気に戻した。
俺はその呼び声に、顔を上げると従業員はモニターを指さす。
見ろってことなのか?
「………どう、言う、事、だ?」
望遠で捉えているモニターには、まだいくつもの光と時々何かの爆発の大きな光が映っている。
そう、レオン君の宇宙船はまだ戦っていた!
『……すごいな、あんな戦いができる宇宙船だったんだな……』
『………』
ブリッジにいる全員が、その光景に唖然としていた。
いくつも飛び交う光の筋、これはお互いの攻撃のビームだろうことは予想がつく。
だが、片方のビームの軌道がおかしい。
発射され、まっすぐ進んだと思ったら、途中で曲がるのだ。
まるで、鏡にでも反射されたように曲がっている。
普通はありえない光景だ。
俺たちは宇宙船を停止させ、その戦いに見入っていた……。
▽ ▽
『第3偽装戦闘艦、爆散!残り本艦を入れて2艦です!』
バカな!バカな!バカな!!
こんな一方的な戦いがあってたまるものかっ!
何だあの攻撃は!曲がるビーム兵器など聞いたこともないぞ!
それにあの宇宙船の動き!
一体あの船にはいくつの方向転換用ノズルがあるのだ!
「ミサイルや閃光弾も使え!とにかくあの宇宙船の足を止めろ!」
こちらのビーム兵器が当たらない!
シールドシステムも考慮しての攻撃だというのに、当たる直前で軌道が反れるとはどういうことなのだ!
「ぐぁ!!」
次の指示を出そうとしたとき、大きな衝撃がブリッジに伝わってきた。
まさか、被弾したというのか?!
外側だけとはいえ、星間軍の最新型が!
『本艦被弾!第22区画で火災発生!すぐに消火を!』
「先ほどの被弾で、第6エンジンが停止!攻撃出力が20パーセントダウン!」
『第23区画にも火災発生!広がりが早い!』
………なんてことだ……。
最新の装甲が、相手の攻撃で破られたというのか?!
星間軍の装甲なんだぞ?!
「火災が起きている区画は閉鎖!空気を抜いて消火しろ!
ええい、出力が落ちていようが攻撃は続行だ!続けろ!」
その時、ブリッジの右側から大きな光が見えた。
『第5偽装艦爆散!残るは本艦のみです!』
そ、そんなばかな・・・・・・。
たかが子供の宇宙船に、我々が負けるというのか……?
戦いの前にスキャンした時は、子供とアンドロイドの2人しか乗っていなかったんだぞ!
こんな、バカな戦いがあってたまるか!!
「どぁ!!」
『第1・第2エンジン被弾!爆発の危険のため停止します!』
『第1・第2エンジン停止のため、エネルギー出力が大幅にダウン!』
「艦長!これ以上の戦闘は継続困難です!」
クソ!クソ!クソ!
儂は信じないぞ!こんな一方的な戦いが……。
こんな一方的な戦いが、わずか7歳の子供にできるものかっ!
「全閃光弾発射!光りで怯んだすきに撤退だ!」
『了解!全閃光弾……待ってください!敵戦闘艦より光信号!』
『……こう……ふく……せよ。降伏せよです!』
降伏?
この儂がか?
この最新の船がか?
「ふ、ふざけるな!たかが7歳のガキが何を粋がっている!
第4・第5エンジン出力を最大へ!主砲『アルネード砲』へ集中!」
『艦長!今の状況で第4・第5エンジン出力を回せば、艦内の空気が!』
「構わん!粋がったガキに一発かませれば本望だ!」
ガキが!この攻撃をくらって宇宙のチリとな……れ……。
「……すみません、艦長。これ以上は見ていられませんでした……。
光で通信、こちらは降伏する!」
『了解!』
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