第13話 貴族の対応
「ふざけないでっ!あんなに強い旅人がいるわけないでしょ?!」
「そんなこと言われても……ねぇ?」
『旅人としか言えんからのう』
僕たちの目の前にいる女の子は怒っている、多分旅人ってことが信じられないんだろう。
「……いいわ、ならステータスカードを見せて!」
女の子がおかしなことを言い出したぞ?
ステータスカードってなんだ? ギルドカードみたいなものなのか?
僕とアルが困った顔で、考え込んでいるとさらに女の子は怒りだした。
「ステータスカードも見せられないの?! やっぱり旅人というのは嘘なのね!」
僕たちがステータスカードなるものを見せないのは、正体を隠すためだと誤解してしまった。
……ここは、素直に聞いてみるか。
「あのさ、ステータスカードって何?」
この問いには、僕とアルと女の子の周りに集まり始めた人たちも開いた口が塞がらないほど驚いたようだ。
女の子にいたっては、少し震えている。
「……【ステータスカードオープン】と唱えなさい……」
「え?」
「いいから唱えなさいっ!!」
「は、はいっ!」
僕は女の子の怒りの迫力に負けて、その場で唱えた。
【ステータスカードオープン】
すると、何も起きなかった。
女の子をはじめ、周りにいた人たち全員が驚きの表情をしている。
「そんな……もう一度、もう一度よ!」
「……何度やっても同じような気がするけど」
【ステータスカードオープン】
……やはり何も起きなかった。
この星で生まれ育っていない僕とアルに、魔法を使うことはできないんだろう。
女の子は、まだ信じられないという顔をしている。
「……ステータスカードは、この世界のものなら誰でも出現させることができるはず。
あなたたちは、何者ですかっ!」
女の子が僕たちを警戒して少し後ずさりすると、女の子の後ろにいた冒険者たちが戦闘態勢になる。
一触即発、僕たちがちょっとでも怪しい動きをすると襲いかかってきそうだ。
だが、俺たちの間に入ってきた人たちがいた。
コナーたち5人だ。
「ま、待った! 待ってくださいエミリー様!」
エミリー様?
それが、女の子の名前なのか?
赤い髪をなびかせて、歳は僕より少し上。服装はなかなか上等な服を着ているから富豪か貴族といったところか。
顔は美人というよりかわいいといった方が良いかな………もしかして、有名な女の子なの?
「……あれ? ルーク、それにコナーたちも。どういうこと? その男の子を知っているの?」
「は、はい、そこの草原で知り合いました」
……うん、嘘は言ってないな。
いろいろ質問して答えてもらっていたから、知り合いって言えばそうなるのか?
「それならルークたちに聞くわ、この子たちは何者なの?」
「えっと、旅人としか聞いていません……」
女の子が頭を手で押さえている。
どうやら、ルークたちが役に立たないと分かったようだ。
「君、名前は?!」
ようやく女の子が僕の名前を聞いてきた。だがここはあえて意地悪をしておこう。
「人の名前を知りたかったら、自分が名乗るのが先だろ?」
「……そうね、失礼したわ。私の名前はエミリー・マストール、この先の町で『マストール商会』を経営させてもらってるわ。さぁ、あなたの名前は?」
「僕の名前はレオン、こっちは一緒に旅をしているアル。こう見えても血のつながりはないんだ。一緒に旅をしている相棒といったところ」
『よろしくじゃの』
エミリーの後ろにいる冒険者たちの一部が、馬車の周りを警戒するように集まりだしたな……。
誰か出てくるのか?
僕の視線に気づいたエミリーが、後ろを振り返り馬車から出てくる女の子を確認する。
すると、出てくる女の子の名前を紹介する。
「……あの子はニーナ様よ。ニーナ・エリストール、エリストール家の次女で私と友達なのよ」
まさかの貴族のお嬢様か。
ニーナの見た目は金髪で、先がドリルになっている。
目は少し釣り目で、生意気そうな感じがしている。
また、スタイルも出ている所は出ているようで、服装もそれを主張するような服になっていた。
ニーナの紹介が終わると、エミリーは僕を見て質問してきた。
「ステータスの魔法が使えない人は初めて見たわ。この魔法はどんなに少量だろうと魔力があれば使えたのに……」
なるほど、ステータス魔法というのか。
だが、魔力があれば使えたということは今の僕とアルは魔力が無いってことになるな。
「たぶん、僕たちは魔力がないんだろうね」
「魔力がない………つまり、無能力者というわけね?」
エミリーの後ろの冒険者たちの態度が、少し変わった気がするな……。
コナーたちは変わらないようだけど、驚いているのは確かだ。
「そうなんだろうね」
「無能力者って初めて見たけど、いないわけじゃないよな?」
「ええ、うちの村にも一人いたし……」
アマンダの村には、魔力がない人がいるのか……。
今度、その人に会ってみたいな……。
エミリーと話している所に、ニーナが冒険者たちを引き連れてエミリーの側に来た。
ニーナは僕を見た後、すぐにエミリーを見て質問した。
「エミリー、子供の相手なんてしてないで町へ帰りましょ」
「そうだけど、一応助けてくれたんだしお礼だけでもね?」
「それなら、これで十分よ」
そう言うと、ニーナは金貨一枚を取り出すと僕の足元に投げた。
僕の足元に金貨が落ちると、甲高い音を出して止まる。
「さぁ、町へ帰りましょうエミリー」
そう言うと、僕を見ることもなく馬車へ帰っていく。
ニーナは貴族だから、こんなやり方しか知らないのかな?
「やっぱり貴族なのね、ニーナ様は……」
僕に少し頭を下げて挨拶をすると、エミリーはニーナを追いかけていく。
周りのコナーたち以外の冒険者たちも、ニーナの護衛をしながら馬車に戻っていく。
僕は、足元の金貨を拾うとまじまじと見つめる。
「これが金貨か……」
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