第128話 配達先の謎
結局、転倒した女性は再び列に並び『柔らかプリン』を購入するようだ。
側にいたお付きの女性に挨拶をして、その場で別れた。
後になってお互い名乗ってなかったことを思い出したが、この広い宇宙で再び出会うこともないだろうと気にしないことにした。
とりあえず、検問ステーションを出て故郷の惑星へ再び出発したのだ。
▽ ▽
宇宙歴4263年4月30日、明日ぐらいには故郷の惑星にたどり着くかなと考えていると、前方からオーバス運輸の貨物宇宙船が迫ってきた。
僕たちが航行上に邪魔したか?と、避けようと進路変更すると向こうも進路変更して追いかけてくる。
不思議に思いながら、宇宙船を一旦停止してやり過ごそうとすると相手の宇宙船は、僕たちの宇宙船の真横に付けて乗り込むための通路を伸ばしてきた。
「ん?エリー、向こうの宇宙船から連絡はあった?」
『いいえ~、通信は開けてありますが無いですね~』
「それじゃあ、何だろう……」
そうこうしているうちに、通路を繋げられその先にある扉が開けられた。
そして、人が入ってきたようだ。
ブリッジで、監視モニターに映像を切り替えてみていると、入ってきた人たちは僕の知らない人たち。
主に女性がほとんどだけど、指揮を執っているのは男性だった。
『何でしょうね~、新手の宇宙海賊かな?』
「うちの宇宙船で?そんなニュースや情報はなかったけど……」
もう一度、この辺りの警告情報を閲覧するがオーバス運輸の宇宙船で宇宙海賊が出たとか襲われたとかの情報はなかった。
そうこうしているうちに、ブリッジに女性たちが雪崩れ込んできた。
「若旦那!若旦那はどこですか!」
『若!若!!』
どこ女性も僕を呼んでいる。
しかも、ものすごく焦っているようだ。
そこへ、指揮を執っていた男性がブリッジに入ってきた。
「若旦那!お願いがあります!緊急事態です!」
「どうしたの?通信もしないで宇宙船に乗り込んでくるなんて……」
僕が話しかけると、皆が艦長席に座る僕に注目し何故か安堵していた。
一体何があったんだ?
「申し訳ありません、現在目の前に見える惑星『オオビー』から出る通信妨害のせいで通信関連が一切できないんです」
「え?エリー、確認して!」
『はいは~い』
エリーが、故郷の惑星に通信を試みようとすると、通信妨害でできなくなっている。
どうやら、彼らの言うことに間違いはないようだが……。
『通信できません~』
「亜空間通信や光通信とかではどう?」
『う~~ん……どっちも通じないわね~』
となると、かなり強力な妨害が起こっているのか?
でも、とりあえず、まずは自己紹介してもらうか。
「通信ができないことは分かったけど、君たちはどこの誰ですか?」
「あ、これは失礼。
俺はオーバス運輸第203貨物宇宙船艦長のオオノといいます。
後は、俺が雇っている従業員やアルバイト、それにアンドロイドが3人です」
オオノさんか、日本人みたいな名前はこの世界に転生して初めて聞いたな。
まだ、日本の苗字は残っていたんだな……。
「オオノさんですね、それにしてもなぜ、この宇宙船が僕の宇宙船だと思ったんですか?」
「それは分かりますよ、社長が息子の宇宙船には紋章がプリントされているって自慢していましたから」
自慢って、星の管理人になると紋章登録があるから作っただけなのに。
民間人の僕たちが、普段から紋章なんて使わないからね。
それで、自慢したのかな……。
『それで、オオノさんたちは何故この辺りに~?運ぶ荷物でも、あったの~?』
「あ、そうなんです。
妨害されているおおもとの惑星『オオビー』に運ぶ荷物がね」
……なるほど、事前連絡が通信でできなくなって運び込むことが出来なくなっているのか。
通信無視で運び込むと、惑星の地上で飛んでいる飛行物体を無視することになって危険だからね。
連絡を入れて、注意を促しておかないと危ないよね……。
「それで、偶然僕たちが航行しているのが確認できて助けてもらおうとしたというわけですか?」
「そうなんです、若旦那、助けてもらえませんか?」
……これは困ったな。
目的地の故郷の惑星まではあと一日という距離にあるのに、ここで足止めか~。
でも、この問題を解決しないとオーバス運輸全体に及びそうだし……。
「……エリー、射出カプセルに詳細を保存して本国の惑星に向けて射出。
これで、事態も分かるだろうから何か手を打ってくれるだろう」
『若旦那は、どうするんですか?』
これも、オーバス運輸の次期社長の仕事かな~。
「惑星『オオビー』に近づいて、何が起きているのかを調べます。
惑星内で戦争や紛争が起きていたら、惑星を離れて星間軍へ緊急連絡。それ以外の場合は、妨害が出ている衛星をつぶして『オオビー』の首都と連絡を!」
『了解で~す!』
エリーの返事だけが、ブリッジに響いた。
他のオオノさんとかその従業員さんたちは、驚いているようだ。
「オオノさん、オオノさん!」
「……はっ、な、何ですか?若旦那」
「惑星『オオビー』に近づきます、オオノさんの乗っていた宇宙船から伸びている通路を放してください」
「あ、は、はい、分かりました」
そう言うと、乗り込んできた全員が自分たちの宇宙船に戻っていく。
その間に、エリーが射出カプセルを用意し射出する。
これで、連絡は行くはずだ。
そして、射出してから少しすると、通路が僕の宇宙船から離れしまわれていく。
これで、動きやすくなった。
では、惑星『オオビー』で何が起きているのか、調べに行きますか~。
第128話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




