第12話 オーク
「どうする?! オーク相手じゃ『華麗なる妖精』のナタリー先輩たちでもやばいぞっ!」
僕たちの乗る馬車の前方で魔物に襲われている馬車を発見。
護衛と思われる冒険者たちが、襲ってきた魔物と戦っているのだが体の大きさの違いと数に押されて全滅しそうだ。
馬車に乗っていたローガンは、戦っている冒険者の中に知り合いを発見しどうするか皆に声をかける。
コナーとルークもナタリーという人が心配なのか、今にもローガンと一緒に飛び出しそうだ。
「私たちが援護するわ! だからあなたたちは無理をしないでよ!」
「私たちは新人なんだから、ナタリー先輩より自分の心配を最優先に!」
「「「おうっ!」」」
僕とアル以外の全員が馬車を降り、コナーとルークにローガンの三人は剣を抜き魔物に襲い掛かっていく。
「ナタリー先輩!手伝います!」
「あなた達!……無理しないで、まず自分の身を守るのよ!」
「はいっ!」
盾と剣を装備したコナーが一番前でオークに突っ込み、その後ろを剣を構えたローガンがオークの横を狙う。
そしてルークは槍を持ち、コナーの後ろからオークの顔を狙って攻撃する。
こうして三人で一体のオークを相手にしていく。
一方、馬車の側にいるのはアマンダとルーシーだ。
コナーたちが先に戦いに行ってしまったため、自分たちの戦い方を話し合っていた。
「ルーシー、やっぱりあなたの治癒魔法が頼りになるわ。私が土魔法でオークに攻撃するから負傷している人から離れたら治療をお願い」
「……わかった、牽制を頼むね!」
話し合いは一分かからずに終わり、すぐにアマンダとルーシーは行動に移る。
襲われている馬車は一台、馬車に乗っている人たちは外に出てきていない。
その馬車を護衛していたであろう冒険者は10名。
周りを見渡しても冒険者が乗っていたであろう馬車は確認できない。
また、今もなお魔物と戦っている冒険者は確認できただけでも6人。
残りの4人は倒れたまま動かない。
襲ってきた魔物はオーク、今数えたら14体いる。
冒険者を襲っているオークが10体、殺した馬を食べているのが4体だ。
馬車が襲われないのは、馬を食べているからか……。
そんな戦場へコナーたち5人が加わっていく。
「あれがオークという魔物か……」
『レオンは、戦闘に参加せぬのか?』
みんないなくなったため、僕たちも馬車を降り前方でおこなわれている戦闘を眺めていた。
「ここは、戦闘に参加した方が良いのかな?」
『実力があるものが参加すれば、すぐに終わるじゃろ』
だが僕は戦いに参加することに戸惑いを覚えていた。
何故なら…。
「しかし、オークって醜いな」
『そういえば、ゲームじゃともっとマシな描かれ方をしとったな』
「……これが想像と現実の違いか」
戦場に歩いて近づくにつれ、はっきりとわかるオークの醜態。
顔は豚のようだというが、豚よりひどい顔をしている。全体的に崩れていて豚と確認できるのは鼻の特徴だけだろう。
身体も大きな相撲取りより大きく見た目、2メートルは軽く超えている。
戦っている冒険者たちが小さく思えるほどだ。
オーク達が持って振り回している武器は、こん棒とか槍ではなくバトルアックス、戦斧だ。槍のように長く先に幅広の刃が付いている。
振り回す勢いで、冒険者たちに衝撃を与え斧の刃で傷をつけていく。
迫力が違うな……。
―――グフゥ。
オークの一体が、戦っている冒険者とは違う僕たちを見つけたようだ。
そして、僕たちが武器を何も持っていないと分かりニヤつく。
「気持ち悪い笑みだな」
『勝利を確信したんじゃろうな』
―――ブオオォォォ!!
オークは雄叫びを上げ、僕たちにバトルアックスを構え突進してくる。
その勢いはなかなかの速さと迫力だ。
そして、オークが雄叫びを上げて突進してきたとき、馬車の窓が開き誰かが叫んだ。
「そこの子供、危ないっ!!」
だが、その叫びはオークの重量級の足音に消されて僕の耳に入ることはなかった。
勢いを増して僕に近づいてくるオーク。
そして、僕の目の前に迫ったオークは笑いながらバトルアックスを横なぎにする。
「ダメッ!!」
馬車から諦めの叫びが聞こえた……。
ズズンと地震でも起きたのかという音が辺りに響いた。
重量級のオークが僕のカウンターに沈んだ音だ。生体強化した僕にこの程度のオークの強さは赤子と遊ぶ程度でしかない。
沈んだオークも今頃信じられないことだろう。
僕も一撃で終わるとは思わなかったが……。
「アル、どうやらこの程度のオークは大丈夫みたいだ」
『倒してしまって、いいんじゃろうかの?』
「魔物と人種は違うみたいだ。だから、倒してもいいみたい」
では、と僕たちはそれぞれ分かれてオークと対峙する。
一体一体確実に沈めていき、それを冒険者たちは呆然と見ていることしかできなかった。
「何してるの! オークはまだ残っているよ!」
僕の叫びが冒険者たちに戦いはまだ終わっていないことを気付かせる。
その後、冒険者たちは確実にオークを倒していき戦闘は終了した。
「こんなものかな?」
『お見事じゃな、さすがじゃ』
オークを倒し終えたアルが僕に近づき褒めてくれた。僕はこれでもまだまだ子供なのだ、精神は大人でも体に引っぱられるみたいだな……。
「すごい凄いスゴイ!!」
「お二人の強さは分かっていましたが、あそこまでとは……」
僕たちに近づいてゴブリンの時と同じスゴイを連発するルーク、僕たちの強さに感心するコナー。
ローガンは戦っていた冒険者の女性、ナタリーという人と話し込んでいる。
アマンダは動ける冒険者と一緒にオークの解体、ルーシーは回復ができる冒険者の人と治療をおこなっている。
それぞれがすることをしていると、女の子の声が僕の隣から聞こえた。
「君、何者なの?」
女の子の向こうには扉の開いた馬車があった。この子は扉を開けたままで飛び出してきたのだろう。
「僕は旅人かな、ね?」
『そうじゃな、旅人じゃろうな……』
そう答えた僕たちに、女の子をはじめコナーもルークもあ然としていた。
信じられない答えだったか?
第12話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




