第118話 騒がしいコロニーとこれから
円筒形コロニーの第二コロニーに朝がきた。
窓から入る日差しに眩しさを感じ、秘書のナタリーは目を覚ます。
ゆっくりとベッドから出ると、服を脱ぎシャワーを浴びる。シャワーを浴びながら、今日の予定を思い出していると部屋の扉を叩く音が響いた。
シャワーを止め、バスタオルで体を隠すと、もう一つのバスタオルで体や髪を拭きながら扉の前で止まる。
「どうしたの?!その場で用件を言いなさい!」
『クリアム大佐がすぐに集まるようにとのことです!』
大佐が?こんな早朝に緊急の呼び出しとは……。
「何があったか聞いてるの?」
『そ、それが……』
「構わないわ!何があったか言いなさい!」
『ほ、捕虜が……捕虜が全員消えました!』
ナタリーは、自分の姿を忘れて驚きのあまりドアを開け報せに来た兵士に確認する。
「捕虜が消えたって、確認はしたの?!」
「ナ、ナタリー上級秘書官殿!」
「いいから、確認は行なったの?!」
「は、はい!それで今、全兵士が捜索しています!」
兵士は、目を瞑り敬礼したままナタリーの質問に答えていた。
そして、ナタリーは自分の姿を気にすることなく少し考えてから兵士に指示を出す。
「分かりました、すぐに向かいますと大佐に伝えてください」
「りょ、了解です!」
兵士は、逃げるようにその場を後にする。
ナタリーも、部屋に入りドアを閉めていつもの軍服に着替えるのだ。
捕虜が全員消える……ありえないことが起こっている……。
もしこれが、宇宙人たちの仕業だとしたら……。
ナタリーは一抹の不安を抑え、急いで部屋を出て行った。
▽ ▽
それは、激しいドアを叩く音で目が覚める。
昨日は、カーソンと一緒に宇宙人の女三人をじっくり調べていたのだ。
主に、生殖機能をな……。
そう言えば、俺たちとの間に子供ができるか試したが、どうなんだろうな?
行為の間中、宇宙人は何か言っていたが理解はできなかった。
翻訳機は役に立たなかったが、やることは同じだろうと気にせず最後までしたが、どうも睨まれ続けていたみたいだ。
今思い出せば、行為に夢中なのは俺たちだったような……。
まだ、激しくドアを叩く音が続いている。
本当にうるさい、安眠妨害じゃないか?今日の俺はオフだというのに……。
ベッドの上で体をひねろうとしたが、俺の身体に絡みつく裸の身体があった。
もしかして、昨日の好意をもっとしてほしいのか?と一瞬思った俺はどうかしている。
……何せ、その絡んだ身体は男の身体だったからだ。
「な!カーソン!起きろ!何絡みついてんだよ!」
「んん?……うるさいぞ、パーカー。俺の頭の上で叫ぶな……よ……」
「寝てんじゃねぇ!とにかく離れろ!」
俺は必死にカーソンの身体を剥がそうとするが、全く離すことができない。
よく見れば、俺の足とカーソンの足を絡めて紐で結んでいやがった!
さらに、カーソンの腕は、俺を抱きしめるように紐で固定してやがるし!
「ん……ん?んん!!お、おい!俺に下のモノを押し付けるな!気持ち悪いだろうが!」
「それはこっちのセリフだ!おまえも下のモノを押し付けんじゃねぇ!」
まずい!こんなところをドアの向こうの奴が見たら……。
しかし、無情にも扉は開けられてしまった……。
「「「………」」」
ドアを開けて入ってきたのは、俺たちの同僚のターナーだ。
俺たちと目が合うと、すぐにそらされる……。
「えっと、カーソンとパーカーはシャワーを浴びてからでいいから集まってくれ。
俺は、下で待ってるからさ……」
そう言ってドアを閉めようとしたので、カーソンが言い訳をする。
「ま、待てターナー、これは誤解だ!パーカーとはお前が思っている関係じゃねぇ!」
「ああ、誰にも言わないから安心してくれ。
お前たちの秘密は、絶対守るから……な……」
安心できねぇ~!
いや、何を安心すればいいんだよ!
「ターナー、とにかくこの紐を外してくれ!絡みついて取れないんだよ!」
「紐……お前たちは、もうそんなプレイを……」
「「そんな訳ねぇ!!」」
クソッ!こんな仕打ちをしやがった奴を、おれは絶対許さねぇ!
ターナーが、少し恥ずかしがりながら紐を外している間、俺は復讐に燃えていた。
▽ ▽
第二コロニーの行政庁舎の一室では、人の出入りが激しく行われていた。
捕らえていた捕虜の全員がいなくなってしまったのだ。
捕虜全員に付けていたチップは、使われていない倉庫のような場所で見つかったが、きれいに外されてあった。
確り鍵をかけて嵌めてあったはずなのに、鍵を壊すことなく外されていた。
このコロニーの内部をくまなく探すも、見つけることはできなかった。
「大佐、これだけ探していないということは、奪還されたとしか……」
「……そうだな、そう考えるのが自然だろう。
相手は宇宙人だ、私たちの知らない技術で救出したのだろう」
「……まるで、映画に出てく転送装置を使ったみたいだ」
そんな話を部下としていると、上級秘書のナタリーが入ってきた。
「遅れました」
「うむ、早朝からすまんな、ナタリー」
「いえ、それで呼びに来た兵から聞きましたが、見つかりましたか?」
私と部下の顔をナタリーが見るが、その表情から察したようだ。
「捕虜に付けてあったチップは?」
「すべて外されていた。しかも、鍵を壊すことなくな……」
「まさか……」
ナタリーは信じられないと、驚いた表情で部下を見る。
だが、現に奴ら宇宙人たちは、それをやってのけている。
「……これから、どうしますか?」
「今回の救出は、宇宙人たちの仕業だろう。
だから、交渉はこれ以上継続できない。となれば、ここを放棄して……」
「……戦いますか?」
ナタリーが、真剣な表情で私に聞いてくる。
その横の部下も、真剣なようだ。
だが、勝てないまでも生き残れるのか?
生きて、母星に帰ることができるのか?
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