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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
オレオン銀河の片隅で

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第114話 認識の違い




「アルバン連邦代表、こんな宇宙にまで来られるとは……」

「何を言われる、人々の代表である私はどこにでも呼ばれれば向かうよ。

それに、今は『グラニド』の歴史上もっとも記念すべき時だろう?」


惑星『グラニド』の衛星軌道上に浮かぶ大型宇宙戦艦のブリッジに、グラニドやテラフォーミングで人々が住めるようになった惑星『エラニド』『ローニド』の三つの惑星の代表が乗船していた。


記念すべき時、それは人類が初めて宇宙人と出会い話した時だった。


それが、どんな出会いであり話し合いだったとしても……。



「こちらにも、話の内容は送られてきているのだろう?」

「はい、約二時間遅れではありますが……」


二時間、それは距離が離れすぎているために起きたズレ。

『グラニド』『エラニド』『ローニド』の人々にも中継されていたが、内容が伝わるにはさらに時間が必要であった。



宇宙人がいる、人類は孤独ではなかった。

その事実は、連邦政府によって正式に発表されたが信じられるまでは時間がかかるだろう。

その間に、人類は宇宙人たちと交流ができるのか?


これからの、この連邦の未来は分からない。

この先の未来を予言できたものはいなかったのだから……。




▽    ▽




連邦代表たちが、今か今かと話し合いの連絡を待っているころ、第二コロニーのある建物では兵士たちの暴走が始まっていた。


「どうだ?この宇宙人たちは、俺たち人類と同じなのか?」

「う~~ん、身体は同じようだな……」

「感覚も同じなのか?」


「ふっ、それは殴ってみればわかるだろ?」

「そりゃそうだ!」


そう言いながら、一人の女性が殴られ続けていた。

全身に痣ができるほど殴られ、気を失っているのか声も上げなくなっている。

それを不思議そうに見ながら、さらに殴る兵士たち。


「何も鳴かなくなったな……」

「やっぱり、俺たちとは違う構造をしているのかもな」


「……解剖してみるか?」

「貴様ら!そこで何をしている!」


そこに上官の兵士が飛び込んできた。

見張りがいないと探し回っていたようで、うっすらと汗が額ににじんでいた。


兵士たちは、いきなり上官に声をかけられ直立不動だ。

上官の兵士は、部下たちの足元に転がる捕虜の女性を見てさらに怒りをあらわにする。



「何てことをしてくれたんだ!この捕虜たちは、交渉材料なんだぞ!」

「……申し訳ありません!」


直立不動で謝る部下たちに、思わずため息を吐くことになった上官の兵士。


「いいか、すぐにその捕虜を研究者のもとに渡して来い。

治療をお願いしますとな、治療が終わったら他の捕虜たちのもとへ連れて行くように」

「ハッ!分かりました!」


兵士たちは、荷物のように女性を担ぎ上げると宇宙人たちの研究をおこなっている建物に走って行った。


「クソ、部下たちの暴走が止まらない……。

さっきも捕虜を集めている場所で、集団リンチをしていた者たちをしかりつけたところだというのに……」


上官の兵士は部下の暴走に頭を痛めながら、見回りを続ける。

何とか虐殺行為にならないように……。




▽    ▽




第二コロニーの周囲に配置している宇宙戦艦の死角になる場所が、第二コロニーにあった。

それは、格納庫がある場所だ。


普段は、ここに宇宙船を繋ぎ宇宙港の役割をしていたが、今は敵の宇宙戦艦がこの反対側の宇宙港に入ったため、機能していなかった。

そこに、光学迷彩をしたままの宇宙船『コンスタンティン』と『トリニティ』が入港した。


「アシュリー、コロニー内の様子はどう?」

『人質が集められている場所は変わらず、見張りの兵士は入れ替わりしているようです』

「助けれそう?」


『……地下通路がありますから、それを使えば助けることは可能です』


僕とロージーは、コロニー内の地図をモニターに出して救出の相談をしていた。

地下通路は、この第二コロニーを建設するうえで大事な場所だ。


円筒形コロニーは、外装から何層にも分かれている。

それは、宇宙からの放射線などから守るために必要な処置だからだ。


今となっては昔のような分厚い層は必要なくなったが、それでもこの処置は必要だった。


そして、層と層の間には、点検用の地下通路が存在する。

この点検用というのは、人工構造物には必ず必要となるものなのだろう。


まあ、今回はこれが役に立つはずだ。


「……問題は、人質とこの宇宙港の距離か」

『全員を逃がすには、この距離は遠すぎますね……』

「何か乗り物でもあればいいんだけど……」


『それだと、今度は人数が問題になりますね』


ままならないものだ。

外では星間軍と敵との交渉が始まっているのに、こちらは八方塞がりか?

……いっそのこと、催眠ガスでも流してみるか?




▽    ▽




「チッ、あの上官、俺嫌いなんだよな……」

「そう言うな、あれでも苦労しているようだぞ?」

「そうだな、ここにきてから上の連中や研究者たちは少しピリピリしているようだし……」


ボコった宇宙人を研究者にわたし、治療をさせている建物の出入り口で、俺たちは話し込んでいた。

宇宙人たちの力に、最初に驚き始めたのは研究者たちだ。



宇宙人の科学技術を手に入れる。そのためだけに、俺たちの部隊は研究者を連れてこんな場所に進出してきた。

ワープを何度も繰り返して、ようやく到着した場所だ。


母星の『グラニド』にある宇宙望遠鏡で、この場所のことは分かっていたが、こんな人工物があるとは分からなかった。

あの頃は、宇宙人なんていないってのが俺たちの認識だったからな。


それならと、詳しく調べるために宇宙軍が編成された時、先行して調べる俺たちの部隊が誕生したんだ。


で、こうして来てみれば、ここには俺たち人類と同じような容姿の宇宙人がいた。

これは調べなければならないと、この場所を占拠したんだよな……。



「はあ、これからどうなるんだろうな……」

「そりゃあもちろん、あいつら宇宙人と戦うんだろ?宇宙ヒーローみたいによ」

「それはテレビの見過ぎだ、言葉が通じないだけで悪い宇宙人とは限らないだろ?」


宇宙人と戦う、か。

子供の頃やってたな、悪い宇宙人が攻めてきてヒーローが平和のために戦うってやつ。


……俺たちがヒーローになるのか?

ていうか、なれるのか?







第114話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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