第112話 相手の正体
「やはり、科学技術の差は彼らに一律の長があるか……」
「それは仕方ありません、私たちが初めて宇宙に出た時にはもう、彼らは星々を行き来していたのですから」
亜空間ゲートにある第二コロニー内の行政府庁舎の一室で、ここを占拠した軍の司令官とその秘書の一人が資料の紙の束を読んでいた。
彼らの正体は、『オレオン銀河』にある『グラニド』という星の宇宙軍の一部隊だ。
グラニドという惑星は、人口約140億人、近場の惑星二つをテラホーミングし人が住める環境にしてから入植。
その二つの惑星も、人口が約100億人を突破。
その人口増加の突破口として、外宇宙に新天地を求めた。
ところが、いざ外宇宙に出てみれば、自分たちの知らない宇宙人たちが自分達よりもはるかに進んだ科学技術で進出していた。
そのため、政府はその宇宙人たちと話し合いか武力侵攻かを迫られたが、まずは情報を集めて考えようということに落ち着き、こうしてこの『オレオン銀河』から離れた場所にある施設へと進軍したのだ。
……彼らは知らなかった、亜空間ゲートなるものを。
そして、ここが重要施設であることも……。
「この資料によれば、ここは亜空間ゲートとかいう施設であるらしい。
……亜空間ゲートとは何か、わかるかね?」
「資料には長距離移動の出入り口としかありませんね……。
一応研究機関の者もついて来てますから、そちらにお任せしては?」
「うむ、専門家に任せた方が、理解も早いか……。
しかし、この宇宙人たちは広範囲に勢力を持っているようだな……」
宇宙人たちの勢力図に感心している司令官の部屋に、一人の兵士が訪ねてきた。
「失礼します!第144連隊のブルールです。私をお呼びとのことですが……」
「おお、よく来てくれた。
確か君の隊が、捕虜の面倒を見ているとの話だったな」
「はい、現在は一か所に集めて監視していますが、それが何か?」
「その捕虜を使って、宇宙人たちと交渉することになる。
余計なことはせずに、全員無事で生かすように。と釘を刺しておこうと思ってな」
ブルールは、司令官の注意の意図が分かった。
どうやら、見張りの兵士の中に捕虜に手を出したものがいたようだ。
あれほど、手を出すなと命令したのに……と悔しがってしまう。
「以上だ。手を出した兵士は不問にするが、今後は処刑もありうると徹底させるように」
「ハッ!申し訳ありません!失礼します!」
ブルールは敬礼して、部屋を後にする。
秘書の女性は、ブルールが去ったドアを見ながら心配していた。
「これで、余計な心配がなくなればいいのですが……」
「それは無理だろうな、宇宙人についての興味は尽きんだろうし。
何より、私たちとどう違うのかも関係してくる。
当分は、上からの命令と処罰で縛るしかないが、あまり厳し過ぎると暴発することになるからな……」
「母星でも、追加の支援を検討しているが、まずは情報収集と交渉がメインとなる。
ここで捕まえた宇宙人たちの捕虜は、都合のいい情報収集の材料ということだろう」
「それでは、私たちは宇宙人たちから見て犯罪者ではないですか?」
「その宇宙人たちに、そんな法律があれば、だがな」
「まさか、これだけ科学が発達している宇宙人たちに法律がないと?」
「そうは思いたくないが、我らは何も知らないのだ……」
「母星は、私たちに情報収集のために犠牲になれと?」
「そうでないことを祈るばかりだよ……」
部屋から見える円筒形コロニーの内部の景色。
これだけでも、宇宙人たちの科学技術が進んでいることが分かる。
なにせ、こんなもので人が生活できる空間を造っているのだから……。
▽ ▽
『なるほど、宇宙に進出したばかりの生命体でしたか……』
情報収集専用艦『コンスタンティン』が集めた情報を整理し、宇宙船『トリスタン』のブリッジで報告を聞いていた。
星間軍より前に僕たちが到着し、さっそく情報収集を始める。
相手側からは、どうやら宇宙船『トリスタン』の姿は見えていないみたいで、『コンスタンティン』による情報収集はスムーズに行われていた。
そしてものの1時間ほどの情報収集で得られた情報で、相手が『オレオン銀河』の一太陽系の『グラニド』という惑星から進出したばかりの軍隊だということや、僕たちを調べるために、『オレオン銀河』から離れたこの場所を襲ったことなどが分かった。
その他にも、彼らの兵器や宇宙船の技術も分かった。
『彼らの技術は、3000年以上前の技術が主ですね。
……こんな技術で、よくここまで進出したもんです~』
「コロニーを占拠している兵士の数は分かる?」
『はい、全部で896人ですね。
コロニー内を調べたり、格納庫にある宇宙船を調べたりしているものがいますから、技術者か研究者を連れてきていたのでしょう』
「それで人数が、少し多いのか……」
『若旦那、星間軍からの通信を受けました。話があるとのことです』
「分かった、艦長席のモニターに出して」
僕が艦長席に座ると、手元のモニターが開き初老の身なりのいい男の人が映し出された。
その制服は星間軍の制服、ということはこの人がシャロンの補足メッセージにあったブルッケン隊長さんか……。
『初めまして、星の管理人のレオン・オーバス君』
「初めまして、シャロン・アルブ・ロスティックから聞いています。
星間軍第2656部隊隊長のブルッケン殿ですね」
『私のことを知っているなら話は早い、そちらで収集した情報をこちらに送ってもらえるかな?』
「勿論、拒む理由はありませんからすぐに送りましょう」
『助かる。
……ところで、レオン君から見て奴らはどんな部隊だと予想できるかな?』
僕の名前をフルネームで知っていたし、こちらの手の内は知っているぞってことかな。
流石は星間軍、こんな辺境でも手を抜かない力を派遣するな~。
「彼らは、宇宙に進出してきたばかりの知的生命体と思います。
今は第二コロニーを占拠し、情報収集をおこなっている最中かと。
だから、まずは交渉が最善と思います」
『交渉か、レオン君の意見として参考にしておこう。
……そちらの情報が来たようだ、では協力、感謝する』
そう言って通信は切れた。
ブルッケンさんは、交渉と僕が言ったとき考えるように顎に手を持っていった。
どうやら、交渉も視野に入れるということかな。
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