第11話 情報収集
ゴブリンを追い払い、冒険者の男女5人と一緒に行動しながら近くの町へ案内してもらうことにした僕とアルは、皆で草原を歩いていた。
それと、この世界における情報も彼らからいろいろと聞き出すことができた。
この世界に名前はない、というよりもこの星全体のことが分かる人がいないからだろう。
そのためこの世界を呼ぶことがあまりなく、世界は世界という認識なのだ。
だが、大陸には名前があった。
今いる大陸の名前は『ネストブルド大陸』という。
貿易などで隣の『ガンリュード大陸』の町と交流はあるそうで、あとの大陸の名前は分からなかった。
今いる大陸にある国々についても話は聞けた。
この大陸で一番大きな国は、ここから東にある『エストルバ王国』で1000年以上の歴史を持つ王国で、その王国と肩を並べる大国が西にある『マストハード王国』だ。
僕たちがいる場所は『ネルデール王国』という小国の西の端、近くにディルナートという町があり彼らはその町で冒険者をしているそうだ。
また、町の近くにある広大な森を『帰らずの森』と言って人々に立ち入りを禁じているところがあるそうだ。
「帰らずの森か……」
「そうだよレオン君、その森は魔物がいるだけの何もない森として有名なんだよ」
「過去に何人か挑戦していた記録があるけど、帰って来たのは1割もいないみたいね」
僕の左右について手を繋いでいるのは、右がアマンダ。魔法使いの見習いで今は初級魔法しかできないが何れは大魔法使いを目指す女性だ。
杖にローブと魔法使いの服装だが、色が違う。白だ。
アマンダのローブは白かった、ところどころ赤や緑が使われているが全体的に真っ白だ。
魔法使いのような帽子もかぶってないし、実用第一ってことかな。
僕の左で手を繋いでいるのがルーシーで、この子も魔法使いの女性だ。
アマンダと同じく魔法使いの見習いで初級魔法しかできないが、アマンダと違うのは治癒魔法を覚えていることだ。
この世界では治癒魔法は神に祈っての奇跡的な魔法ではく、人体医学に基づいた治療魔法だった。もちろん高度な治癒魔法では、欠損部位再生や蘇生なんかの奇跡的治癒魔法もあるらしいが伝説の話に過ぎないんだとか。
ルーシーの服装はアマンダと同じく杖にローブ、帽子はなく色は薄い青といったところ。
どちらもローブの下は普通の服を着ているし、冒険者の魔法使いとはこのような装備なのだろう。
「しかし、あのゴブリンとの戦闘は見事でしたね!」
「ゴブリンの攻撃をすべてよけてしまうなんてな!」
「俺にはまねできないぜ!」
今も歩きながら僕とアルが相手をしていたゴブリンとの戦闘の感想を言うのが、右からコナー、ルーク、ローガンの3人だ。
3人ともに戦士で、盾を持っているのはコナーだけだ。ルークは槍をローガンは弓を持っていて、戦況次第で使い分けているのだとか。
3人とも同じような装備で、革鎧にズボンにブーツ。どうやら同じ店でそろえたようで長く愛用しているらしい。
本音は、お金がないから装備を買い替えることができないといったところだろう。
草原をしばらく歩いて行くと、土がむき出しの道が見えてきた。
「あれが町への街道ですよ。街道って言っても町にある石畳のってわけではないですがね」
「街道を石畳では無理だろう」
「そうだな、魔物が破壊して通りにくくなるだけだな」
確かにそうだろうな、土がむき出しの地面でも所々デコボコしている。あれは戦闘の後だろう、焦げている所や何かの血の跡のような黒い所とかもある。
僕が街道の地面を観察していると、ルークが林の中から馬車とそれに繋がれた馬を連れてきた。
「こいつは無事だったよ、林の中に隠したのと魔物除けが効いたようだ」
「町への移動は、こいつに頼らないとな」
「さぁ、みんな乗ってくれ。アルさんもレオン君も乗ってくれ、町へ向けて出発するぞ」
5人の中でリーダーをやっているコナーに促されて、僕とアルも馬車へ乗り込む。
馬車は普通の荷馬車を人が座れるようにしたもので、お尻が痛そうだ。
全員乗り込んだことを確認して、御者席にコナーが乗り込み出発する。
「……そういえばみんなは、どうしてあの草原にいたの?」
僕の質問に答えてくれたのは、僕の右隣に座ったアマンダだ。
「あの草原のどこかに薬草の群生地があるのよ。私たちはそれを探してという依頼を受けてあそこにいたの」
「群生地は見つかった?」
「勿論、見つけて来たわ。3つもね。群生地になっていた場所の近くに湖があったから、他にも群生地はありそうだけどね」
「他の群生地は見つけなくていいの?」
「依頼書には群生地を見つけてとだけ書いてあったから、数は問題じゃないんだよ」
そう答えるのは左に座っているルーシー。
冒険者ギルドで受ける依頼に数の指定がないかぎり、問題にはならないそうだ。
そう考えると、冒険者というのもファンタジー感が薄れて現実的に思えてくるな……。
馬車で街道を1時間ほど進んでいると、急に停止した。
何事かと、御者席に座るコナーを見ると前方を指さしていた。
そして、その指先には今まさに魔物に襲われている馬車とその周りで戦っている戦士たちが見えた。
「あれ『華麗なる妖精』のナタリー隊長じゃねぇかっ!」
ローガンは焦ったように叫んだ。
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