第107話 おかしな報告書
宇宙歴4263年1月27日、今日も僕は艦長室で報告書のチェックに追われていた。
父さんからの通信を聞いた後、ロージーたちと話し合い4月の中旬に本国へ出発することになった。
さて、ここで僕の本国について話しておこう。
この本国とは、僕が育った星のことだ。
地球のある『天の川銀河』から、4つの銀河を超えた先にある銀河系の端っこにある太陽系、その中にある地球に似た惑星『ホーリー』が本国ということになる。
このホーリーには、約10億人の人が住んでいるがほぼ一か所に固まっている。
僕の育った町は、この集まった都会からだいぶ離れたところにある田舎だ。
父さんは都会から離したのは、宇宙船の離発着をスムーズにするためとか言っていたが、本当は土地の値段が高すぎたためだろう。
都会の土地は、どこの星でも高騰しているらしい。
ホーリーに住んでいる人は、全員が全員宇宙船を持っているわけではない。
僕の家は、宇宙運輸業をしているため会社専用のスペースコロニーに行くために宇宙船があるってだけだ。
地球人が天の川銀河を出て4000年、地球人の生活圏は広がりに広がっていたが宇宙の大きさからみれば、微々たるものだろうな……。
『若旦那、現実逃避は終わりましたか?そろそろ仕事に戻ってください』
……ロージーが僕を現実に引き戻す。
せっかく、報告書地獄から逃避していたのに……。
「はいはい、報告者チェックを再開しますよ~」
『はいは、一回ですよ~』
「分かったよエリー、これから気をつけるよ……」
こうして僕は、報告書チェックに戻される。
とにかく出発は4月の中旬、それまでに報告書を終わらせなければ。
▽ ▽
「ロージー、この報告書だと、まだ拠点の島には物資を搬入しないとダメなんだね」
『あの島でも農業や商店などが軌道に乗り始めましたが、やはり生産力が圧倒的に足りてません。
そのため、こちらが支援しないとすぐに島民は飢えてしまいます』
僕が『青い星』に遊びに行くために造った拠点の町。
元は無人島だったのを開拓して造ったんだ。
でも、人がいなくて何度も奴隷を購入し、奴隷から解放して島民となってもらった。
その拠点の町は、出来た当初から宇宙から支援物資を運び入れている。
野菜や肉、果物などを宇宙のコロニーで作り、地上へ卸しているのだ。
「う~ん、それにしてはここのところ量が増えているようだけど?」
『島民が増えたということもありますが、料理のレシピを本にして配ったのが影響しているものと思います』
レシピ本って、あれ一般的なものしか載ってないはずだよね……。
それで、量が増えるって今までどんな料理を食べていたんだ?
「あの本って、一般家庭のレシピ集だったよね?」
『はい、それでも珍しい料理の数々らしいので作ってみて美味しかったのでしょうね』
「……まあ、美味しかったならいいか……」
『ところで若旦那、拠点の島の町の名前は考えましたか?』
「そういえば、セーラからそんな要望がきていたな……」
拠点の町の名前、いい加減決めてくださいって怒っていたんだよね。
どうしよう、まだ考えてないんだよね……。
『若旦那、どんな名前にしますか?』
「そうだな~…『ホリック』ってどうかな?」
『分かりました、拠点の島の町の名前は『ホリック』で登録しておきますね』
あれ、感想を聞いただけなのに、決定してしまった。
『ちなみに、私は良いと思いますよ』
「ロージーが気に入ってくれたなら、うれしいよ」
『はいはいはーい、私もいいと思います』
「うん、エリーも気に入ってくれてうれしいよ」
『えへへ~』
▽ ▽
昼食を済ませた後も、報告書のチェックに忙しい。
まったく減らない報告書、この量でもロージーたちが仕分けしての量だから元々はどんなにあったのか想像したくないね。
当分は、こんな報告書チェックが続いていく。
うんざりするけど、報告書を読んでおかないと今青い星がどうなっているのか分からなくなるんだよね。
もしかしたら、神様もこんな報告書に埋もれていたのかな?
「エリー、この報告書おかしいよ?もう一度確認をお願い」
『はーい………この報告書ね……』
今の報告書は、ある国で起きた地震に関する報告書。
その地震はかなり大きな地震だったらしく、国全体で被害が出たらしい。
周りの国は、支援をしようという国や救援をしようとする国が使者を送り、被害にあった国はそれを受け入れた。
ただ、国全体が被害に遭ったにしては、周辺国が被害に遭ったという報告がない。
これは裏があるのではないかと、そう思って確認をエリーにお願いした。
報告書の震源地を見ても、他の国に被害が及ばないわけない場所なんだとけど、報告書では1つの国だけが被害を受けたことになっている。
これはおかしいよね……。
『う~ん、これちょっと時間がかかりそうだよ~。若旦那、それまで待ってる?』
「分かった、待ってるから確認をお願いねエリー」
『りょうか~い、まかせて~』
そう言って、エリーは部屋を出てブリッジへ向かった。
もう一度、衛星軌道上から確認をして、被害にあった国を調査するのだろう。
それにしても、報告書の中にはこんなものも混ざっているんだよね……。
改めて、大変だ……。
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