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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
勇者のその後

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第106話 減らない報告書




宇宙歴4263年1月25日、僕たちが、バステーユ王国で勇者ナオミの仲間を救出してから一週間が経過したが、僕は今日も悩まされていた。


この目の前のモニターに映る、報告の山にである。

時代は進み、ペーパーレスが当たり前の世の中ではあるが、一部では紙の需要は今でもある。


だが、報告書はこうしてデータでまとめられて送られてくるため、閲覧しサインしたり報告しなおさせたりと、簡単にできるようになった。


が、チェックするのは時代がここまで進もうと、人の手でおこなわれる。


わずか10日ほど留守にしていただけで、一週間たっても報告書の山が無くならないほどたまりにたまってしまっていた。


「……報告書が多い、まったく減らない……」

『若旦那は星の管理人ですからね、報告書は毎日上がってきますよ』

『そうね~、意志ある人達が暮らしているんですから、毎日、何かしら起きているわよね~』


……今、僕の側で報告書整理を手伝ってくれているロージーとエリーが答えてくれる。

しかし、エリーのまともな返しは久しぶりに聞いたな。




そうそう、報告が遅れたが、勇者パーティーの仲間たちは無事、勇者ナオミと再会した。

拠点にしている島での再会だったが、初めはみんなここがどこだか分からなかったようだ。


しかし、勇者ナオミが姿を見せると、トリニティとヴィクトリアが泣きながら勇者ナオミに抱き着き、アレクとルークはそれを見てさらに泣き出した。


それと、トリニティさんとイザベラさんの再会は、目で語るといった再会だったね。

お互いを見つけ、しばらく見つめ合うと、どちらもいっしょにフッと笑い合う。


……何か、大人な再会って感じでした。


言いたいことはたくさんあるのに、今さら言ったってしょうがない事ばかり。

ならば、無事みんなに会えたことを喜びましょう、といったところかな。



再会の感動が落ち着いて、拠点の話や奴隷から解放された話など、その日は夜遅くまで話し合っていたようでした。


あと、勇者パーティーの全員にバステーユ王国はどうするかと聞いたところ、全員が何もしない、と答えた。

どうやら、もうあんなゴタゴタに巻き込まれたくないらしい。


当分は、今までできなかったのんびりとした生活をしてみたいそうだ。



また、メイソン伯爵はどうなったのか、その後を一応は監視しているが、自分の計画がとん挫した後はおとなしくなったようだ。

ガルザ宰相に、かなり怒られたようだがそれで終わっている。


宰相も、トリニティがいなくなって少し騒いでいたが、勇者パーティー全員がいなくなっていることが分かると少し安堵しているようだった。


宰相なりに思うことがあったのだろうが、今はいつもの職務に戻っている。

警戒は怠っていないようだが……。




『若旦那、今日中に今日の報告書に追い付かないと、明日には明日の報告書が上がってきますよ~』

「わ、分かってるよ~」


く、考え事もできないとは……。

しかし、こうして報告書を見ていくと、本当にみんな生きているんだな……。


「あれ?ロージー、この報告書、例の異世界人のことだろ?」

『はい、青い星にいる転移してきた異世界人のことです。

そろそろ監視対象にしておかないと、いざという時まにあわなくなりますので』


『青い星』にはもう1人異世界人が生活している。

その人は、ファンタジー生活を謳歌し、ハーレムを形成して天国のように生活しているようだ。


まあ、ハーレムが天国かどうかは人それぞれだろうが、どこかの主人公のような生活を送っている。

魔王もいないし、冒険者としても成功しているようだし、今は放置かな。


下手に関わり合いになると、怒られそうだしね、今は。




「そういえば、緑の星に軌道エレベーターを建設するとか話があったようだけど、その後どうなったの?」


『緑の星』は、まだ星の管理人申請をしていない『青い星』の近くにあるもう一つのファンタジーの星だ。

だが、この星には昔、時空乱流に巻き込まれ僕たちと同じ科学文明の人が不時着した。


その影響が出て、魔法が使える星でありながら『魔導銃』が主力の武器となり国同士の戦争が良く起きている星である。


ついこの間も、浮遊要塞が世界の戦争の抑止力になったはずなのだが、浮遊要塞の技術の一部が流出し浮遊要塞そのものを撃墜させるまでに至っていた。


そして、浮遊要塞がなくなると、世界はおとなしくなった。

まるで、嵐の前の静けさのように……。



『生き残りのいる島との交流は今も続いていますので、そこに簡易の軌道エレベーターを設置することになりました』


生き残りとは、浮遊要塞と一緒に浮かんでいた島の住人たちのことだ。

浮遊要塞墜落後、生き残った人たちを僕たちが救出しまだ未発見らしい島に匿うことに。

で、その島に軌道エレベーターを造って、物資を運び込もうというわけ。


「島の生活は、かなり厳しいの?」

『はい、島に住む人たちの食料事情は芳しくありません。

どうやらこの島は、ハズレの島だったようです。食料も少なく動物や魔物すらいない状況です』


魔物がいないのはいいけど、食料がないのは問題だ。


「地上の塔建設は大丈夫?軌道エレベーター設置には必須だけど」

『それは問題ありません、地上にはあの人たちが頑張ってくれてますから』


「なら、その計画を進めて。衛星軌道上の簡易ステーション建設も同時進行で」

『了解しました』


地上のあの人たちは、時空乱流に巻き込まれた科学文明の人たちのことだ。

不時着からかなり経っているのに、今も生きて元気だ。




さらに、報告書を読み進めていると、通信が入ってきた。

父さんからだ。このところこちらへの家族からの通信はなかったから、なんだか懐かしい。


「お久しぶりです父さん、何かご用ですか?」

『おお、久しぶりだなレオン!実はな、久しぶりに家族そろってお前の誕生日を祝いたいと思ってな?』


「僕の誕生日ですか?まだ三か月以上ありますけど?」

『後三か月しかない、だろ?レオンも星の管理人やってるし都合のつく日なんて無いに等しい。それに、今ぐらいから予定を相談しないと家族で集まるなんてできないだろ?』


「確かに、自分の家に帰るのに何日もかかりますからね」

『だろ?だから、レオンの誕生日の予定を空けておいてくれというわけだ』

「分かりました、ロージーたち一緒に頑張って空けておきます」


『頼んだぞ?母さんもお前の妹のルーシーも、会えるのを楽しみにしているからな』



通信が切れてから、ロージーとエリーの視線が痛い。

分かってる、分かってるよ、調整が大変なのも。


………頑張るしかないか。








第106話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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