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転生先は宇宙船の中でした  作者: 光晴さん
青い星を発見して

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第10話 ゴブリン




宇宙歴4261年10月9日、待ちに待った朝が来た。

僕は備え付けられているベッドから飛び起きると、すぐに支度を整えシャトルの外へ出る。扉を開けたその先に待っていたものは、まだ夜が明けきらない七色のコントラストを彩る空だった。


暗い紫から、藍色、青と段々と明るくなっていき、太陽がもうすぐ登ってくるところが赤い空をしている。

朝の早いまだ日が昇る前に見る空は、早起きしたものだけに送られる自然からのご褒美だろうか……。


『……マスター、詩人のように語るのは声に出さない方がよろしいかと』

「あれっ!」

『そのようなセリフを上の方たちに知られたら……』


そんなもの、お腹抱えて笑われるに決まっている。

まったく、朝のすがすがしい気分が台無しだ。

とにかく、今日はこの周辺を調べて町か村を見つけて情報収集といこう。


「……とりあえず、朝食にしようか」

『ご用意いたします』

「アル、そのしゃべり方は執事って感じだ。もう少し、砕けた言い方はできないかな?」


『それならば、……朝食、用意するぞ』

「うん、そんな感じでこれからもよろしくね」

『了解じゃ』


再びシャトルの中に戻った僕たちは、アルの用意した朝食を済ませて旅に出る。


シャトルを亜空間ドックにしまうと、僕とアルは歩き出した。

今いる場所は草原なのだが、地面はなだらかではない。

あちこちがデコボコしていて、馬車などの乗り物を出すことができないのだ。


そのため、歩きということになった。

また、この草原を抜けると街道のような土を固めた道を発見している。

衛星軌道上からは、草原の地面までは確認していないのでこのような苦労をしているわけだ。


「でも、こういう苦労も冒険の醍醐味だよね~」

『そうだな』



安全靴のような丈夫なブーツを履き、デコボコの地面に足を取られないように歩いて街道を目指していると僕たちの前方に緑色の小人が3人こちらを見ていた。


「アル、あれって現地の人かな?」

『おそらく違うじゃろ、こちらを見ている目が獲物を見る目じゃし……』

「てことは、いきなりピンチかな?」


緑色の小人は、それぞれの手に持つこん棒や錆びた剣などの武器を掲げると大声を上げて襲ってきた。


―――ギャギャッ!!

―――ギギッ!

―――グギャゲ!


最初は距離があって、緑の小人の表情も分からなかったがだんだんと近づいてくる奴らはそれぞれ醜い顔をして笑ってこちらを襲ってきていることが分かった。


「あいつら、すごい顔だな」

『あれがファンタジーの定番のゴブリンじゃな』


―――ギャギャ!!


最初に僕たちに近づけたゴブリンが、手に持つ錆びた剣を振りまわし襲いかかってきた。

しかし、生体強化してある僕は難なくよけ、ロボットのアルも危なげなくよける。


「遅いな……」

『近くで観察したが、こんなものなのかもしれん』

「やっぱりゴブリンはこんなものなのか……」


そんなことを言っている間も、次々に追い付いたゴブリンがこん棒を掲げ襲いかかってくるが素早くよけて何ごともなかったかのように傷も負うことはなかった。


―――ギャー!

―――グギャー!!

―――ギギ!


ことごとく襲いかかってもよけられる自分たちの攻撃に怒り出し、とうとうめちゃくちゃに襲いかかってくる。

それでも僕たちは、素早くよけ続ける。


「これ倒してもいいのか分からないな……」

『小説やゲームじゃったら、倒しても支障はないのじゃがな』

「ここは調査中の惑星だからな……」



こうして、ゴブリン達が疲れ果てるまで僕たちはよけ続けた。




▽    ▽




「何、あれ……」


私たち5人は、草原の真ん中の奇妙な光景に魅了されていた。

ゴブリン3匹の攻撃を、危なげなくよけ続ける子供と老人。その光景は異常でありそこだけで別空間だった。


確かにゴブリンはそれほど強くなない。

冒険者ギルドでも、一番最底辺の討伐依頼であるぐらいだからだ。

しかも報酬は倒した数で支払われるほど、ゴブリンの数は多い。1匹見たら30匹はいると思えと言われるほどに。


また、ゴブリンからは魔石以外の素材はお金にならない。そのため、倒したゴブリンから魔石を取り出すと後はまとめて焼却することが義務付けられている。


「すげぇ、あの二人よけ続けてる……」

「旅する師匠と弟子って感じかな?」

「お前うまいこというな、でも、そんな感じだな……」


「それじゃあ、ゴブリン相手によけることが修行とか?」

「かもしれないぞ?」


それからしばらく見ていたら、とうとうゴブリン達が逃げていった。

あの逃げていく様は、村で返り討ちにあった子たちに似ている。

……村を出て冒険者になって、そろそろ1年か。



私がふとしたことで感傷に浸っている時に、皆は拍手しながら子供と老人に近づいていった。味方かどうかも分からないのに、大丈夫なの?




▽    ▽




僕たちがよけすぎたのか、泣きながら逃げ出したゴブリン達の後から拍手しながら少年少女たち5人が近づいてきた。

どうやら、ゴブリンとの対決を見られていたようだ。


……さて、この星の人たちの言葉は睡眠学習で学んだけど通じるかな?


「すごい凄いスゴイ!」

「ゴブリンの攻撃をすべてよけるなんて、本当にすごいですよ!」

「冒険者でそんなことしている人見たことないです」


「お怪我はありませんか? もしあれば初級ですが治癒をしますよ」

「初めまして、先ほどから拝見させてもらいました」



これが、この星で初めて出会った知的生命体との接触だった。









第10話を読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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