実在するかしないかは問題じゃない。
ざわざわ、ざわざわと木々が揺れる。爽やかな風が吹く、ついうとうとしてしまいそうな草原に座り込みぶつぶつとなんやら独り言を言っている20代前半の男のお話をしよう。
「あぁ、くそ!!どうなってんだ!!なんで圏外なんだよ!今日は大事な面接だってのに!」男は手に持った携帯から目を離しあたりを見回す。
「だいたい、ここはどこなんだ?俺は確か駅のホームにいたはずなのに」男はため息交じりに呟いた。
そして考える人のようなポーズで男は懸命に思い出そうとしていた。
「だめだ、まったく思い出せねぇ、前の晩の飯までは完璧に思い出せるのに、今日の記憶が駅のホームしかねぇ、これじゃ面接には行けねぇな、どうなんだろこれから俺は」そんな時、シンプルな音とともに携帯が振動した。
男が携帯をのぞき込むとメールが届いていた。「なんだこのメール?当選しました?」
<当選おめでとうございますwwこのたびは、私共の歴史変革化計画に応募いただきありがとうございましたww単刀直入に言わせていただきますとあなたにはこれより歴史を変えていただきますww注意事項などは特にはありませんww死なない程度に頑張って下さいwwまず手始めに村娘を助けてくださいww 追伸 貴方には特別な改造を施してあるので最強ですよwwプレゼントもありますのでww貴方のお好きな武器を一つ口にしてくださいwwではww>
「はぁ!?全然ついて行けねぇ応募した覚えもないし、歴史を変える?村娘を助ける?改造!?だいたい、ここはどこなんだー!」草原に怒り満ちた大声が響いたと同時にまた、メールが届いた<言い忘れてましたwwそこは、弥生時代ですww時期的に卑弥呼と呼ばれる人物がいたくらいでしょうwwあと3キロほど進めば村が見えてきますよww>男は気持ちの整理がつかないまま、ゆっくりと歩を進めた。
「はぁ。なんでこんなことに、しっかり大学出て就職して、普通の暮らしがしたかっただけなのに。本音いうとじいちゃんの道場継ぎたかったのになー」
脳内で再生される男と祖父の記憶「じいちゃん!!俺、中学卒業したらそのまま道場継ぐよ!!」「うぅ、なんていい孫なんだ。わしには勿体ない、だが今時、剣術なんて流行らんよ、お前には幸せになってほしいんだ。それに、門下生はお前1人」「こ、これから増やしていくよ、それに俺の夢はじいちゃんを越えることなんだ!」「何を言っておる、お前は既にわしの遥かに向こうに行っている、免許皆伝じゃ」
「じいちゃん、なんで強盗なんかに」そう言った男の目には涙が浮かんだ。そして、男は走り出した。
「うじうじ、悩んでも仕方ねぇ!歴史なんて変えられる訳ねぇんだ!早いとこ、ここから脱出しないとな!」
「ぜぇぜぇ、だいぶ走ったぞ、ほんとなんもねぇな、ここは」男が顔を上げると微かに建物のようなものが目に移り込んだ。
「何だろう?あれ?本当に村?なのか?人がいるかもしれない行ってみよう!」男はまた走り出した。
その頃村では、「おぉ、神よ、どうか私たちを助けてください。作物は育たない。雨も降らない。このままでは、死んでしまいます。どうか、お慈悲を。」
村長らしき人が何かの宗教にはまったかの如く懇願している。その先には若い村娘が縄に縛られ磔にされている。「おぉ、神よ、今宵は穢れのないこの娘を生贄に捧げますどうか、お助けを。」
「村長大変だ!奇妙な男が村に近づいてる!」
「なに!?ならんぞ!よそ者を村に入れるな!よりによって大切な儀式のときに邪魔でもされたら、わしらは、死ぬだけだぞ!殺して構わん!行け!」
「うぅ、わ、分かったよ」村人は慌てて駆け出した。
「うっはーー!でけぇ門だな!」男が感心していると門の中から人が出てきた。
「とまれーーー!そこから先に一歩でも進んでみろ!後悔することになるぞ!」槍らしき武器を持った人が威嚇してくる。
「そんな、事言われても、別に危害を加えるつもりはないよ」諭すように言った。
「そんなことは問題ではないのだ!今、村は、生贄捧げる儀式の最中なのだ!」よほど大事な儀式なのだろう緊張がこちらにまで伝わってくる。
「生贄?まさか?」男は先ほどのメールを開いた。「村娘を助ける、まさかな、おい!生贄ってのは、村娘じゃねぇだろうな?」
「な、なぜそれをまさか貴様村娘を狙って!くそっ!大事な生贄渡すものかぁ!」村人はいきなり襲い掛かる!
「ふざけんな!聞いただけだろうが!やるしかねぇのかよ」男は短く息を吸い構えをとった。「こいっ!」
勝負は一瞬だった。男の拳が村人みぞおちにめり込んでいた。「がはっ」力なく村人は倒れた気を失った。
「はぁ!?なんだこれ、俺の身体じゃないみたいだ、改造って身体強化かよ。笑えねぇ、冗談だよな今の俺なら熊にも素手のみで勝てそうだぜ。」男が自分の力に感心していると門の中から武装した村人たちが10人ほど襲ってきた。「殺せー!」「絶対村には入れるなー!」
「とりあえず、今は村娘を助ける事しか情報がないからな、やるか、しかしこの人数に素手は無理だろ、せめて木刀があったらな。」その時、手に違和感を感じた。「えっ、木刀!?なんで?」男は訳が分からぬまま村人たちと対峙した。(今はこの状況を乗り越える事がベストか?)
槍と木刀がぶつかり合う!
カンッ!!カンッ!(くそっ、この人数じゃ、受けしかできねぇ)
カンッカッカンッ!!(あれ、やるか!)
男は全力で襲い来る槍をはじき返し、間合いを取る。村人たちは何かに憑りつかれたかの如く襲うことを止めない。
「くらえ、じいちゃん直伝、猛進剣舞!!」パカーン!豪快な音とともに村人たちの手から槍が全て吹き飛ばされた。「見たか!このヤロー!」
「なんなんだよこいつは!?俺たちじゃ勝てねぇ!あいつを呼んで来い!!」「任せろ!」村人は門の中に入っていった。「取り敢えず、村娘を助けねぇとな」そのときだった。ドガーン!!「いつまで待たせんだよ、こっちは闘いたくてうずうずしてんのに」門をぶち壊し現れたのは2メートルはくだらない大男だった。「なんだよ、やべぇ奴が出てきたな」男に緊張が走る。「用は殺せばいいんだろ?」大男は人一人分の大きさのこん棒を振り回して男に突進してきた。
バカーン!ガゴン!ッゴ!(ちっ、なんてパワーだ!押し返せねぇ)
「ほらほら、どうしたぁぁ!俺を楽しませろよ!」
「力でダメなら速さで勝負だオラァ!」男の剣のスピードが増していく。「まだまだぁ!もっと加速する!」ガン!ガン!バシッ!バシッ!ドスッ!次第に男の剣が大男の身体を捉えていく!
「速くなったせいで、威力が落ちてるぞ!痛くもなんともねぇなぁ!」
「なら、これなら、どうだっ!木剣秘術!骨折りの剣」
「骨折りだぁ?」
「砕けろ、骨砕 壱連 」ボキィン!
「ぐはぁ!?」
「弐連」ボキッ!
「!?」
「参連!」ボキッ!「四連!」バキッ!「伍連!」バキィン!「骨砕伍連撃!」
「がはっ、格が違いすぎる、なんて奴だ」ドサッ。
「上腕骨二本、大腿骨二本、そして、顎の骨を砕いたんだ、しゃべれるだけでもたいしたもんだぜ。」
「さて、村長の所へ案内してもらおうか。」「はい。」男の剣技に圧倒された村人たちはそう言うしかなっかった。
「貴様、何の目的があって、わしらに関わろうとするのだ!」村長は生贄を捧げる祭壇の所から叫ぶ。
「いきなり襲い掛かかってきたあんたらに説明しても無駄だろ?強いて言うなら俺が元いた場所に戻るためかな?」
「貴様には分からんのだ!この村の、危機が、食糧が底を尽き、作物さえ、育たない、あまつさえ、雨も降らない、もう神にすがるしか方法がないんじゃ!それを、貴様はぶち壊したのだ!!」
「もし、それで、助からなかったら、その、村娘はどうなる?無駄死にじゃないのか?」
「ぬかせ、その時は、生贄が足りなかっただけじゃ、また、捧げればいい!」
「ふざけたこと、言ってんじゃねぞ!!村を助けるために、村人を殺すだと?本末転倒じゃねーかよ!」
「必要な犠牲じゃ、自らの命を断つ事により村が救えるのだぞ!」
「犠牲の上に成り立つ幸せなんて存在しねぇ!!おい!村娘!お前の気持ち聞かせろよ!このまま、死ぬか、生きるか今なら、お前を助けられる!」
「わ、私は、、、」
「よせ!、何も言うな!そんなことしたら神がお怒りに!」
「お前は黙ってろ!神なんてこの世にいねぇ!もし、あんたが生を望むなら見たこともない世界に連れ出してやる!」
「私は、わだっ、わだじは!!ごんな死に方したぐない!もっど自由に生きだい!助げで!!」
「任せろ!」
「奴が来る!こうなったらわしが村娘を殺してやる!」村娘の首めがけて剣が振り下ろされた刹那
カキーン!ドガン!「ぐふぅ」木刀の柄でみぞおちを一撃村長は倒れた。
「あっ!」
ふらつき、祭壇から落ちそうな村娘を抱きかかえた。
「おっと、君に死なれたら困るんだ。」
「えっ?」
「あっ、こっちの事情ね。それよりも君名前は?俺は剣聖ってんだ」
「私の名前は卑弥呼です。」
「へぇー、卑弥呼かぁーいい名前だ、、、卑弥呼!?」
第一部 完
初めてでとても稚拙な文章ではありますが、これからレベルアップしていきたいと思います!