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視線の先  作者: 芝谷鈴嘩
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渡辺 静子の場合

 私、渡辺静子はお洒落より読書が好きな、某公立高校2年生だ。

 クラスに特別仲のいい子はいないが、かといって馴染んでいないわけでもない。

 話しかけられるとある程度話はできるし、こちらからも話しかけることもある。

 ただ、どこかのグループに属していない。

 休憩時間一人でいることに抵抗はないし、在学中に図書室の本をすべて読むという目標を立てているため、少しの時間も無駄にはしたくないのだ。

 いまのところ、高校生活は順調だ。

 あることを除いては・・・。



 私は今、恋をしている。

 クラスメイトの鈴木太一君だ。

 彼は常にクラスの中心にいる。

 体育祭などの祭り事はもちろんのこと、普段からクラスの盛り上げ役だ。

 そして空気も読める。

 学年や男女関係なく友達が多い。

 学力はあまりないようだが、それを差し引いても魅力的な人だ。

 


 好きになったきっかけは些細なことだ。

 一年の時、欲張って図書室の本を大量に借りた時、他のクラスだったのにも関わらず、廊下ですれ違っただけの私に、手提げ袋を貸してくれたのだ。

 話を聞くと、その日は2月14日でバレンタインのため、袋を3つ用意していたそうだ。

 2つはパンパンにチョコレートが入っていたが、1つは余って使わないからと言い、それを貸してくれた。

 後日、彼のクラスに返しに手提げ袋とお礼のちょっとしたお菓子を持って行くと、笑いながら「返してくれなくてもいいのに。」と言いながらも、ちゃっかりお菓子を受け取った。

 貸してくれた理由はとてもいいとは言えないが、その時の飾らない言葉と爽やかな笑顔、貰える物はしっかり受け取る所に好感を持った。

 それから、移動教室の最中や自動販売機の前など、彼が居そうな場所では無意識に探すようになった。




 しばらくして、これが恋だと気づいたときは自分自身に驚いた。

 私でも色恋沙汰に縁があったとは、思いもよらなかった。

   


 

 2年に進級すると同じクラスになったものの、彼に話しかける用事もそんなに無く、近づくこともないまま観察する日々が続いた。

 すると、すぐに気づいてしまった。

 彼も目で追う人がいることを・・・。



 その人は、クラスメイトの田中雪子さんだ。

 清楚系の美人な人だ。

 少し話をしたことがあるが、いい人だ。

 彼女のグループも美人が多く、鈴木君のグループとも仲がいい。

 はっきり言って、二人はお似合いだ。

 だか彼女の方はその気はなく、私から見れば彼女は鈴木君の好意も気づいているように見える。

 周りの人は気づいてないようだが1対1で話をするのを避けているようだ。

  


 もちろん、鈴木君はそんなことは気づいていないようだ。

 彼が彼女を見つめる視線は、美しい。

 純粋な好意が伝わってくる。

 

 



 最近、想像するようになった。

 もし、万が一その視線が私を見つめるようになったら・・・と。

 


 そうすれば、この恋は醒めるような気がした。

 鈴木君が彼女を見つめる瞳も私が彼を好きになった一部のようだ。

 だが、二人が付き合ってほしいかといえば、それは嫌だ。



 こういう矛盾した気持ちは初めてだ。

 恋というのは複雑でやっかいだ。

 


 だが、これからも私は彼を目で追うのだろう。

 彼が私に視線を向けないように・・・。






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