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7.告げられる形





7.告げられる形




 近未来的な雰囲気、光景が辺り一帯、それに、僻遠の彼方にまで広がっている、が、そこはガンマやデルタ、イプシロンの様な場所ろは僅かに違う雰囲気を漂わせている。SFに出てきそうな世界でありながら、どこか『近代的』な雰囲気を持ち合わせている。そこが、スティグマだ。アルカディア地方の東よりにある、とある都市。

 そこに、アギト達三人はいた。ガンマでのアマゾネス部隊との一件をなんとか終え、アギト達は今、オラクルへと会いに来たのだった。

 アギトはフレミアとの話しを思い出しつつも、それでもオラクルと会うと決めたのだ。オラクルは預言者だ。それも、確かな腕を持った。アカシック・レコードへとアクセスし、森羅万象の事情を知り、確実に予言を的中させる力。そんな人間の話しを聞くのも、悪くないと思ったのだ。

「で、どこに居るのよ? オラクルは」

 スティグマの中心部を観光するように歩きながら、アヤナが適当な言葉を投げる。

「もうすぐ行った所だっての」

「アハ、アヤナは可愛いなぁ」

 そんな三人には回りの視線がやたらと集まる。その原因は当然、三人の格好にある。アギトは漆黒に染まり、アヤナは純白に染まっている。そしてやっと仲間となったエルダはタイトな長袖にホットパンツ。その上に軽装な銀の鎧を纏っている。

 当然、注目も集まる。アヤナは問題外としても、エルダ、アギトは今まで戦士だったのだ。本人達は気付かない。戦士でもなければ、そんな格好はしない。そして、注目しているのは一般人であり、視線が集まるのは仕方がないと言えよう。

 が、最近までカフェの運営をしていたエルダは慣れがないようで、周りから寄せられる視線にオドオドとしている。

 そんな状態のまま三人はひたすらに歩き、街外れの僅かに自然の見えるエリアまで到達した。

 この辺りは数メートルの間隔を空けて民家が並ぶのみで、店や派手な空中投影ウィンドウは見当たらない。アルカディア大陸全てが都会、というわけでもないらしい。

 そこから更に数十分進んだ場所で、アギトは立ち止まる。そこは、岸壁の如く巨大な壁が聳え立つ場所だった。何かのビルの片隅か、ともかく、そこは壁だった。

 なにこれ? とアヤナが首を傾げる。

「隠し扉、みたいなモンだよ。それなりの存在だからな、身を隠す必要があんだよ」

「どうやってその扉を開けるの?」

 アギトの顔を覗き込んでエルダが問う。

 対してアギトは得意げな、外連味も感じられる笑みを浮かべて、

「オラクルが中にいるとしたら、勝手に開くから心配すんな」

「どういう事?」

 アヤナが普段どおりに首を傾げて問う。

「オラクルは預言者だ。俺達が来るって事も分かってんだよ。俺は一応、顔見知りだしな」

 前にアヤナへとアギトがオラクルの話しを振った時、大した事を話しはしなかったが、アヤナはその不足した情報をなんとなくの想像で補った。

 どうして知っているのか、気にはなるが心中で留めておいたのだった。

 そして、暫くすると――壁の一部、アギト達の目の前が切り抜かれるようにして、開いたのだった。

 アヤナとエルダはその眼前で展開された光景に感銘を受けつつ、関心した。

「な、言っただろ?」

 その光景を親指で指して、アギトは得意げに言うのだった。




 闇夜の中にいるかのようだった。オラクルへの道を開いた扉はアギト達が完全にその中へと入りきると、途端に閉まってしまった。そこからは灯りが付くわけでもなく、僅かに足元を照らしている飛行機内の非常用案内灯の様な小さな光を頼りに、三人は歩くしかなかったのだった。

 その光によって微かに示される道を暫く行くと、僅かに淡い光を放つライトに照らされた木製の珍しい扉が、三人の視界に入った。ずっと暗闇を歩かされていたからか、その光は三人に希望を与えたのだった。

「あの先にオラクルがいるのね!?」 

 アヤナは大そう興奮した様子で大音声を吐き出す。空間は狭いのか、アヤナの声は反響までした。姿、容姿が幼げに見えるからか、興奮した様子でそう言うアヤナはアギト達から見れば娘のような姿だっただろう。

「あぁ、そうだ。だが、」

 アギトは首肯し、扉の前まで来たところで足を止める。釣られて、二人も足を止めるのだった。

「だが?」

 エルダが首を傾げる。

「この先には一人ずつしか行けない。そういう、決まりなんだ」

 アギトは真っ直ぐな瞳で扉を見据えたまま、言った。

 オラクルは他人の未来の話しもする。それをまた別の他人に聞かせる事には、抵抗があるようだ。故に、オラクルは一対一の面談以外を望まない。

「そうなんだ。ふーん」アヤナは退屈そうにそう吐き出して、「で、誰から行くの?」

 それに返すのは当然アギトだった。

「まず、俺が行く」

 そう一方的に吐いて、二人の答えを待ちもせず、アギトはドアノブに手を掛けた。アルカディア大陸では最早見なくもなった木製の扉が、僅かに軋むような音を発てて静かに開かれる。アギトが入る瞬間で、アヤナ、エルダともに中を覗こうとしたが、暗闇が見えるのみであった。

 バタリ、と扉はしまり、アギトはオラクルの部屋へと進入したのだった。

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